表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/1588

見た目装備

『krbrx様がログインしました』


 売り露店ゾーンを半分ほど見終わったところで、りょーちゃんが帰ってきた。


「りょーちゃん」

『どうした?』

「今、露店を回ってるんだけど」

『ああ』

「なんというか……露出の高い服が、やけに多いような気がするんだけど……?」


 いろんな露店を見て、わかったこと。

 服に関しては、男性用と女性用に分かれているということ。

 今ボクが着ているのもそうだし、基本別々になっているらしい。

 いいなぁと思う服は、すべて男性用だった。

 そして、女性用の服というと……。


 今にも見えそうな服。

 布を巻いただけみたいな服。

 服というより、ヒモ。


 ボクが探している『長そで長ズボン』といった、ごく一般的な服が見当たらない。

 露出が少ない服は、フリフリとかリボンがいっぱい付いてるし。


『制作者が『ミニスカ』や『ホットパンツ』大好きだと公言していたからな。そういった服が多いのは仕様』

「でも、かっこいい服を着てる女の人もいるよね?」


 すれ違う人の中には、スタイリッシュで中性的な服を着た人もいる。

 あんな服なら、ボクも男らしくなれるんじゃないかな?


『こんな感じか?』


 画像が送られてくる。


「うん、こんな感じの」

『課金アバター。どこかの有名ブランドが手掛けている』

「普通には買えないってこと?」

『課金専用装備。物にもよるが、これなら上下で10k』

「えっ? リアルのお金で1万円?」

『ああ』

「いちまんえん……」


 お小遣いを使い切ってしまった現状、とても手が届く値段じゃない。

 仮にお金があったとしても、ゲームの見た目に大金を使うのは……。


「だったら、男女兼用の衣装はないかな?」


 どっちが着てもおかしくない服なら、ズボンとかもあるはず。

 学校のジャージみたいな。


『このゲームには基本ない』

「ないの?」

『制作者が『ネカマ(※1)死すべき慈悲はない』を掲げているから、見た目ではっきりと区別できるようにしてある』

「制作者さんに何かあったの?」

『詳しくはわからないが『メールに書きつづった愛のポエムをSS(スクリーンショット)付きで掲示板にさらされた』とか『財産をつぎ込んでオフ会に誘ったゲーム内彼女と男子便所で遭遇した』とか『台風の日にハチ公の前で8時間ほど立たされた』とか、いろいろあったらしい』

「話を聞くだけでも大変そう」


 そういった事情があるなら、厳しくなるのも仕方ないのかも?


『ちなみに、ゲームデータを改造してネカマプレイした男もいる』

「そんなことできるの?」

『βの頃の話。今は修正された』

「そうなんだ」


 どうせなら、性別が変更するバグも直してほしいけど。


『運営からの警告を無視してプレイして、制裁をくらったという話もあるな』

「制裁?」

『二度と男として生きていけない体にされたとか』

「な、何があったの……?」


 急に怖い話が出てきたので、身構える。


『ゲーム中に痛みを感じることはないだろ?』

「うん、そうだね」


 ぶつかった感触とかはあるけど、別に痛くはない。

 剣でバッサリ斬られても『当たっちゃった』と思う程度。


『今はVR規制があるから、肉体に影響が出るようなシステムは禁止されている』

「えーと……何かの新型VR開発中に、事故が起きたんだっけ?」

『ああ。痛みを数十倍に高める機能開発中に起きた事故』


 ニュースか何かで見た気がする。

 同じ時期に同じような事故が多発したこともあり、いわゆるVR規制法ができるきっかけとなった事件。


「たしか、その人って助かったんだよね?」

『生粋のドMじゃなかったら、危なかったらしい』

「どえむ……?」

『我慢強い人のこと』

「なるほど」


 新しいことに挑戦するのは、いろいろと大変みたいだ。


『つまり、システム自体は開発済みなわけだ。運営のさじ加減で、特定の相手を痛めつけることもできる』

「それを運営がやったってこと?」

『あくまでウワサだが』

「……」


 それがもし本当だったら、ボクも対象になってしまうのでは……?

 不正をしたつもりはないけど、こうやって偽りの性別でプレイしているわけだし。


「意図的じゃないバグなら、セーフだよね……?」

「運営次第だろう」

「そんな……って、りょーちゃん?」


 いつの間にか、すぐ後ろにりょーちゃんが立っていた。

 考えながら歩いていたので、全然気づかなかった。


「運営に問い合わせたヤツがいるそうだが『うちにそんな技術力はない!』と答えが返ってきたそうだ」

「じゃあ、大丈夫……なのかな?」

「技術力が追いつけばわからんが」

「大丈夫じゃなかった!」

「規制があるから運営が捕まる。どちらかというと、プレイヤーにバレたほうが面倒だろう」

「?」

「チート扱いで通報されまくったら、カルマ値たまって監獄行き(※2)」

「そういう場所があるんだ」

「ゲーム内で会えなくなる」

「それは困る」


 りょーちゃんと一緒にできないなら、このゲームをやる意味が薄れてしまう。

 そもそも、1人だと戦える気がしないし。


「でも、このままだとバレちゃうような……」

「……そうか?」

「だって、どう見たって男だし!」


 見た目は何もいじってないので、女装した男でしかない。

 たまにこっちを見ている人がいると、ついビクビクしてしまう。


「そこまで気になるなら、装備を変えればいい」

「その装備が、露出高いのばっかりなんだけど……」

「フルプレートなら全身隠れるぞ」

「それは最初に思い浮かんだけど、値段が……」


 金属製のかっこいい鎧もあるけど、安くても10万G以上。

 とてもじゃないけど手が出ない。


「鉄製品は大量のインゴット必要になるから、高くなるのは仕方ない」

「まずはお金稼ぎだね」


 いつか買って装備したい。

 全身鎧の耐久型支援も、かっこよさそうだ。


「あとは、髪や化粧もいじれるようになった」

「前はできなかったの?」

「ああ。全員すっぴんを強制されていたんだが、おもに女性プレイヤーから『モンスター狩るどころじゃねぇ! うちらがモンスターだわ!』と苦情が殺到して、ログインして即ファッションタウンへ飛べるようになった」

「見た目は大事だよね」


 せっかくゲームなんだし、かっこいい見た目にしたい。

 キャラクタークリエイトができたら、もっと筋肉モリモリにしたのに。


「あ、もしかして、身長伸ばすこともできたり……?」

「体型をいじるのは無理」

「そっか」


 ゲームの世界なら……と思ったけど、課金の力でも無理らしい。

 残念。

 まあ、成長期なんだし、すぐに大きくなると思うけど。


「前は頭装備すら制限あった」

「そうなの?」

「ああ。補正装備に差がありすぎるってことで制限緩和された。今は男でもリボン付けられる」

「それは……どうなんだろ?」


 良補正のためなら、見た目を気にしない人もいそう。

 りょーちゃんとか。

 でも、ちょっと似合うかもしれない。


「まずは金だな」

「うん」


 好きな装備を買うためには、お金が必要。

 課金専用アバターは厳しいので、ゲーム内で稼ぐしかない。


「結局は、このままでいくしかないのかな……」


 自分の姿を見下ろす。

 露店で見てきた他の衣装と比べて、肌の露出は少ない。

 値段に手が届きそうな範囲では、これが一番マシなのかもしれない。


「……」


 くるりと回ってみる。

 スカートじゃなくて、ふんわりとしたローブだと思えば恥ずかしくないかも?

 男性用装備でも、かっこいいローブはある。

 でも、ネカマだとバレる可能性を考えると、逆にもっと女の子っぽいカッコをしたほうがよかったり……。


『親に追い出されたわー』

『そりゃ、あんたがずっと家でゴロゴロしてるからだろ』


 ちょうど目の前を、肩やおへそを出したミニスカートの女の子たちが歩いていく。


『休みの日くらい、どこで何しててもよくね? ゆっくりさせてくれよ』

『日々の生活に疲れたサラリーマンか』

『受験勉強で忙しくてさ』

『毎日何時間もログインしておいてよく言えたもんだ』

『しょーがないから図書館行くって言って外出てきたわ』

『図書館からつないでんのか?』

『近所のネカフェから』

『あんたの図書館やたら快適だな』

『ソフトクリームうめぇwww』

『この前のダイエット宣言どこいった』

『そのために朝からリザードマン狩りまくって体鍛えてるぜ!』

『現実で運動しろやこのデブ』

『さーせんwww』


 無理無理無理!

 あんなの着てたら、見えちゃう!

 恥ずかしくなって、目をそらす。


「どうした?」

「ううん……」


 しばらくの間、装備のことは気にしないでおこう。

 次のアップデートがきたら、性別のバグも修正されるかもしれないし。

 このゲームの制作者と作者は一切関係がありません。

 違います。

 制作者の話が実話だったとかそんなことはありません。


※1、ネカマ:主人公の現状。

 ネット上で女のふりをする男のこと。

 わざわざ偽らなくても、男同士で何か問題があるのだろうか?

 そのまま仲良くなって濃厚な関係になってもよいのでは?

 私はそういうの嫌いじゃないです。


※2、監獄:悪いことをした人が隔離される場所。

 1日1回『ダメよ』ポイントを他のプレイヤーに送りつけることができるので、それがたくさんたまると送られてしまう。

 しっかり反省して炭鉱で強制労働していると、そのうちダメよポイントが減って解放される。

 『そんなのやってらんねぇ!』というプレイヤーは、看守の目を盗んで脱獄したり、囚人同士で反乱を起こしたり、監獄の王になったりといった、悪役プレイも楽しめるらしい。

 現実世界では真似しないでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 作者さん……強く生きろよp(´∇`)q ファイト
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ