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スライムダンジョン1

「露店はいいのか?」

「うん、見たいものは見てきたよ」

「なら回るか。今いくつだ?」

「レベル? 今は……9だよ」


 雪ウサギを狩ってるときにも、少しずつ上がっていた。

 スキルポイントもたまってたので、ブレスに振っておこう。


「10まですぐか」

「レベル10になると何かクエストがあるんだっけ?」

「ああ、スキルポイントもらえる」

「いくらあっても足りないよね」

「まったくだ」


 いろんなスキルがあるから、アレもコレも使いたくなってくる。

 支援に専念するだけでも、たっぷりのスキルポイントが必要だ。


「行くか」

「うん」


 途中で矢を買い足してから、インスタンスダンジョン受付前まで移動する。


「中級でいいか?」

「初級と何か違うの?」

「敵が多少硬くなって、行動パターンが増える」

「そうなんだ。任せるよ」

「わかった」


 りょーちゃんがNPCに話しかけ、マップに飛ばされる。




「……」


 明るい感じの草原。

 見たことのない、カラフルな花。

 羽ばたくたびに、色を変える蝶。

 この前の洞窟と比べると、ずいぶんとファンシーな世界だった。


 ぽいーん、ぽいーん。


 草原の中をはねる物体。

 スライムだ。

 見たところ、15匹くらいいるかな?


「ここはボス以外ノンアクティブだから、適当でいい」


 そう言って、集団の真ん中に斬り込んでいく。


「ブレス!」


 すぐに、ボクもそのあとを追う。

 弓の練習もかねて、遠距離から狙っていく。


 ビュン!


『スライムに10のダメージ!』


「あ、ホントだ」


 HPゲージの減りが緩やか。

 チュートリアルのスライムと比べると、体力が倍くらいに増えてるかも?


 ぽいーん。


 突進してきたので、横に動いてかわす。

 行動パターンはどうだろう?

 違うパターンにも対処できるよう、中距離を維持したまま弓で削っていく。


「っと」


 防御状態に矢を当てたら、すぐに突進してきた。

 遠距離攻撃でも、のけぞり硬直がなくなるらしい。

 接近されてしまったので、ロッドに持ち替える。


 ぺちぺち。


 多少HPが増えたとはいえ、元はスライム。

 特に問題もなく、1匹目を倒す。


「……ふぅ」


 動きも遅いし、これくらいの相手なら弓も使えそう。

 練習しながら、ゆっくり倒していこう。

 ちなみに、りょーちゃんは……。


 ぽいっ!


 スライムを投げていた。

 投げ飛ばされたスライムAが、別のスライムBに当たる。

 その間に別のスライムCを投げ飛ばし、4匹目のスライムDに当てる。

 まとまって襲ってきたところを、範囲攻撃で一掃。

 うん。

 ボクと違うゲームをやっている。


「あれ? 武器持ち替えてる?」


 いつものように短剣を使っていると思ったら、素手で殴っている時もあった。

 そして、いつの間にか短剣に戻っている。


「ああ」

「持ち替えているモーションが、見えなかったけど?」

「ステップ中にやってる」

「そんな一瞬でやってたの?」

「慣れれば余裕」

「できるかな?」


 試しにやってみる。

 ステップしながら、弓からロッドに……。


「あれ?」


 思っていた以上に時間が短い。

 ステップしてからの持ち替えになっちゃってる。

 今度は、ロッドからの弓に……。


 ぽろっ。


「あ」


 落としちゃった。

 急ぎすぎてもダメみたい。

 練習しないと難しそうだ。


「……」


 りょーちゃんの動きを、よーく観察する。

 殴って、殴って、スカ、殴って、殴って、スカ、殴って、殴って、つかんで、投げて、ステップしながら持ち替えて、着地してから別の敵にソニックブーム、即キャンセルで中央にダッシュ、スキルの構え、近寄ってきたところで発動。


「攻撃する回数が多くない?」


 普通に攻撃してると、3発目くらいで攻撃が届かなくなってしまう。

 素手だとノックバック距離が違うのかな?


「殴りだと攻撃の硬直とノックバックが少ないからな。その中でも多い3発目を後ろ向いて空撃ちすれば2~3ループは狙える」

「えーと……攻撃する回数で硬直時間やノックバック距離が違うの?」

「違う」

「そうだったんだ」


 届かなくなるまで、ひたすら攻撃していた。

 チャンスではできるだけ削りたいし。


「だから攻撃外してたんだ」

「ああ」


 やけに変な動きしてるなぁ、とは思ったけど。


「4ループ目くらいからは相手ののけぞり回復が早くなるんで、カウンターもらう可能性が増える。その場合は殴りステキャン(ステップキャンセル)で裏回ってリセットする方法も」

「う、うん……?」


 このゲームに対する知識と経験の差がありすぎて、理解が追いつかない。

 素手だとたくさん攻撃できる、でいいのかな?


「やってるうちに体で覚える」

「時間かかりそうだけど」

「3日もあればいけるだろ」

「りょーちゃん、1日6時間とかやってるよね?」


 それだけやってれば、3日もあればって意味もわかるけど。


「休みの日は20時間だな」

「寝ようよ!」

「毎日3時間は寝てるぞ」

「もっと寝ようよ!」


 睡眠不足は今日だけかと思っていたら、毎日だった!


「たくさん寝ないと、身長伸びなくなっちゃうよ!」

「……そうだな?」


 不思議そうな表情で、ボクのほうを見る。


「……」


 毎日、9時間は寝てるのに……。

 ご飯も、ちゃんと朝昼夜と食べてるのに……。


「今日はちゃんと寝るよね?」

「……善処する」

「もう……ほどほどにしないと、いくらりょーちゃんでも体壊しちゃうよ?」

「わかった。千里が言うならそうしよう」


 納得してくれたようだ。

 お母さんほど寝ろとは言わないけど、そこそこの睡眠時間はとってほしい。


「ペアでやったほうがおもしろいからな」

「あんまり役立ってる気はしないんだけどね」


 ボクが1匹倒してる間に、残り全部倒しちゃってる。


「ブレスあるだけでも違う」

「そんなに重要なの?」


 まだスキルレベルが4しかないので、ステータスも4しか増えてない。

 STR1=近接ATK1なのか、ロッド持った時の攻撃力も4しか増えてない。

 DEXも同じようで、弓の攻撃力も4上昇。


「ステ(ステータス)10ごとにボーナス乗るから、繰り上がる場合は強い」

「なるほど、ボーナスがあるんだ」

「ステボーナスは数値高いほど増えるから、高ステになるほど重要になってくる」

「ステータスが10→20より、100→110のほうがボーナスいっぱいもらえるってこと?」

「ああ、極振り人気の理由だな」


 ロマンじゃなくて、ちゃんとした理由もあったんだ。

 りょーちゃんなら、ロマンだけでも選びそうだけど。


「そういえば、ステータスってどこで振るの?」


 スキルポイントはあるけど、ステータスポイントらしきものが見当たらない。

 レベルアップしても、自動でステータスが増えてるし。


「Lv20になるとステ振り解放クエがくる。それまでは自動振り」

「まだないんだ」


 今レベル9だし、もうちょっと先の話かな。


「ステ振りといっても、割合の変更だが」

「?」

「わかりやすく説明すると……」


 短剣で地面に書いていく。



    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

STR         ○

VIT         ○

INT         ○

MID         ○

DEX         ○

LUK         ○



「初期だとこうなってる」

「フラット型だね」


 全部が真ん中にそろっていて、一番バランスがいい形。

 逆に考えると、一番中途半端とも言えるけど。



    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

STR           ○

VIT       ○

INT       ○

MID         ○

DEX         ○

LUK         ○



「STR1増やすとこうだ」

「1つ上げるのに、2つも減らさなきゃいけないの?」

「数値が高くなるほど、消費するポイントも増える」

「ステータスの合計値だと、フラットが一番多いんだ」

「そうなるな」



    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

STR                    ○

VIT ○

INT ○

MND ○

DEX ○

LUK ○



「完成系がコレ」

「……うん、振り切ってるね」


 きれいに左右に分かれている。

 振り切りすぎてて、他のステータスに支障が出てる。

 確実に出てる。


「実際のところ、こういう人は多いの?」

「多い。固定PT組めるなら、火力特化が強い」

「りょーちゃんは、普段パーティー組んでるの?」

「千里と以外は基本ソロ」

「基本ソロでも極振りなんだ」


 ボクが始める前からそうだったみたいだし、もう慣れているんだろう。


「1確狩り(※1)なら最高効率だぞ?」

「モンスターからも1確狩りされそうなんだけど……」

「何か問題が?」

「問題だらけな気もするけど……」


 やっぱり、ボクが耐久型にするべきかな?

 攻撃全振りのアタッカーと、単純な後衛支援だと、バランスが悪い気がする。

 こっちでターゲットを持てるようになれば、りょーちゃんがもっと自由に動けるようになる。

 現状だと、攻撃もターゲット取りも、全部任せちゃっているけど。

 私がステータス振り自由なゲームをやると、可憐なヒロインがムキムキマッスルになっていたりします。

 力全振りです。


※1、1確狩り:相手を一撃で確実に倒す狩り方。

 倒しそこないや、相手の反撃を考える必要はないので、狩り効率が大きく上昇する。

 現実世界で説明すると、部屋の中を飛び回る蚊を、ハエ叩きで……スカ。一撃で……スカ。今がチャンス! ゴチーン!(机の角で腕を強打する音)

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