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78 情報収集は根気

 サンダーランドの南の港から、船に乗り沿岸沿いに東岸へ進むと、エルドリッチポートと呼ばれる小国に行き着く。

 1000年以上前に、魔王とすら呼ばれた大魔導師による大規模な戦いが行われ、海岸線が破壊しつくされ複雑に入り組んだ形になってしまったという伝説が残っており、魔導師の港エルドリッチポートと呼ばれるのはそのためだ。

 最も、俺にはこの地形が河川の浸食によって作られたリアス式海岸だと分かっている。


「さすがに地形を変えるような喧嘩はせんよ」

「そうよそうよ」


 爺ちゃんとエカヌスがなにやら言っているが聞かなかったことにしよう。


 船で揺られること5日、エルドリッチポートの港町に停泊する。

 俺はパレアと一緒に保存食などの買い出しのために町を歩いていた。

 こうして実際に港町と呼ばれる町を見て。つくづく思うが、海路による交易というのがこの世界は盛んではない。

 どの港も漁港であり、俺たちが乗った船はそうした漁港に内陸の特産品を行商する船だ。


「奴隷売買は盛んなくせに、こうした経済は全然なんだな。貴族たちは面子のために調度品を好むし、遠方との交易をすれば奴隷交易なんてしなくてもいいくらいの市場を作れると思うんだけど」

「領地経営に興味でも湧いた?」

「いやそういうわけじゃ」


 そう簡単な話じゃないのは分かっている。

 ただ疑問を感じただけ、まともに勉強もしていない俺がそんな改革できるほど経済は甘くないだろう。


 その後、情報収集をしながら近くの村々を巡った。

 空を飛べば否応なしに目立つ。

 オイノが使っている空飛ぶ船についての目撃情報も案の定見つかった。

 だがそれらの目撃情報はオイノのモノと一致している。目的の戦竜教団の移動手段は見つかっていない。


「もちろん船が行き来してるって情報もなしか」

「ふむ、別の手段を使っているのだろうか」


 俺とオイノは二人で腕を組んで悩んでいた。


「すみません、私がもっと注意して見ていれば」

「戦竜教団だって教団員から情報が漏れることには気を使っていたはずだ。だから師父は前線に出ず、聖地で会合をするのは師父だけという仕組みになってたんだろう。ナヴィが知らないのも無理は無いよ」


 こうしてナヴィの知っている情報と照らしあわせてみれば、戦竜教団がいかにナヴィ達一般教団員を中枢から遠ざけていたか分かる。

 ナヴィは教団がどういう動きをしているのか知ることもなく、自分の与えられた役割のみをこなしていた。ミリアもそうだろう。

 これを教団員から情報が漏れることを恐れていたからと見るか……教団の本質を教団員から隠していたと見るか。


「明日はもっと北まで行ってみよう」


 頼りにならない不正確な地図に手書きの修正を加えながら、俺は旅程を組み直した。

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