08-01.取り敢えずの目標
「これは結果オーライと言えるのかしら?」
どうだろうなぁ……。
結局、箱庭世界はテミス叔母様が回収してくれた。当然、同様の異界は製造禁止と念を押される結果となった。
これでは十年ずつの引き籠もり生活は成立しない。パティが中止を申し出るまでもなく、計画は潰えたのだった。
「いいんだよ、これで。私もう二度と嫌だもん」
私に抱きついて甘えるユーシャが代わりに答えた。
「そうね。私たちにとっては都合が良かったわね」
ディアナまでそんなことを言い出した。
「こればかりは仕方がないわ。切り替えましょう」
ゆーちゃんはそういうの得意だよね。やりたいことを見つけるのが上手いもんね。
「ねえ、皆忘れていないかしら」
「何がだ?」
「結婚式よ。結局やってないじゃない。個別回」
「お前たちが原因だろうが」
主犯はユーシャとゆーちゃんだけど、パティとディアナとアウルムも協力したのだ。自業自得だ。
「……ねえ、エリク」
「なんだ。ユーシャ」
「二人で旅に出ようよ」
「今すぐか? それは無理だろ。焦らずとも必ず行くさ」
そう約束したではないか。
「早く行こう」
「二人だけの結婚式を挙げるために?」
「うん♪」
「少しは悪びれなさい」
抜け駆けしようとしたのか。
「散々な新婚生活だったから。やり直そうよ」
「どこがだ。十分楽しんだではないか」
そりゃあ、終盤三年くらいはグダグダだったけれども。けれど前半はやりたい放題しておったろうに。
「順番よ。家族は他にも三十人くらいいるんだから。先に皆に譲ってあげないとだわ。箱庭が使えなくなった分も補填が必要よ」
「お婆ちゃんになっちゃうよ~!」
ならんぞ。肉体は元より、どうせユーシャは精神もそのままさ。心配するな。
「パティもまだ数年は共にいるのだろう?」
「う~ん。実は悩んでいるのよね。出来る限り早く旅に出たいのよ。リタに協力してもらって外で仕事しようかなって」
「ノマドワーカーってやつかしら?」
まあ転移も使えるものな。同時進行も不可能ではないさ。
「生き急ぐ必要はないのだぞ?」
「あっという間にお婆ちゃんになってしまうわ」
パティまでユーシャと同じことを言う。
たしかにパティは精神的な成長が早いかもしれない。もちろん肉体的には歳なんて取らないけれど。
「なんなら仕事の件は忘れてしまえ。私たちにだって出来ることだ」
「それは嫌よ。これは私の夢でもあるんだから」
だろうな。
「取り敢えず半年専念してみなさいな。パティならそれで心置きなく旅に出られる筈よ。仕事を続けながらでもね」
「そうね。それくらいを目標に動いてみましょうか」
ゆーちゃんとパティはあれこれ仕事の計画を語り合いながら転移した。
「私も行くわ。ファムに相談したいことがあるの」
続いてディアナが転移した。
「我らも戻るか」
「嫌」
「シュテルが待っているぞ」
「言う程じゃないよ」
「なんでさ」
「……避けられた」
「シュテルが? そんなわけないだろう?」
「……なんか違うんだって」
見た目が変わりすぎたからか? あのシュテルが? ユーシャだからか? 自分の大好きな姉が変わりすぎたから? それともカグヤの気配を感じてか?
「安心しろ。すぐに気にしなくなるさ」
シュテルも驚いてしまったのだろう。シュテルの主観だと一瞬で様変わりしてしまったわけだし。
「一度大人モードのシュテルと話してみてはどうだ?」
あっちなら幼子モードより理解も早いだろう。
「そっちが言ってたの。小さい方は引っ込んじゃったの」
なんでさ。別にあれは別人格でもないだろうに。
「なら先ずはキャロちゃんと話してみるのはどうだ?」
シュテルも釣られて出てくるだろう。
「恥ずかしがって隠れちゃった」
そりゃそうか。
「そうだ。もう少し大人しい服を着てみるといい」
胸元開きすぎだもん。そりゃビビるよ。シュテルのよく知るユーシャは、こんな開放的じゃなかったんだから。
「もう着れない。一緒に買いに行こう」
「いいぞ。似た雰囲気の服を探しに行こう」
ふふ♪ そういうのも久しぶりだな♪
「アカネにも付き合ってもらおうか」
「……いいけど」
不満そう。けど偉いぞ。今回はちゃんと思い留まったな。成長したな。ユーシャ。




