08-02.リハビリ
私たちは十年ぶりに町へと繰り出した。
目標はシュテルとの仲直りだ。そのために、十年前の服装に近いものを探すことにした。
とはいえ、十年とはあくまで私たちの主観時間の話だ。私たちは時間の止まった箱庭に引き籠もっていたのだ。
だから売られている服に変化はない。当然似たようなものは見つけ出せるだろう。
ユーシャ自身が大きく成長したこともあって、大商会の娘であるアカネにコーディネートを任せることにした。
「うちに任しとき♪」
十年の月日で感覚の狂ってしまった私とユーシャには、当時のままのアカネの感覚は重要だ。ついでに私たちもリハビリしておくとしよう。
「ここはうちの呉服屋や♪」
呉服屋かぁ……なんで着物あるの?
「ま、待て、アカネ。違う。そうじゃない」
「え? なんやあかんかった?」
「いや、うん。よく似合っているのだ。これはこれで悪くない。胸元も覆われている……しな」
その代わりやけに強調されているけれど。これは着方の問題でもありそうだな。腹に何か詰めればいいのか?
いや、そういう問題じゃなくて。
「違うのだ、アカネ」
「せやから、何なん?」
「目的はシュテルとの仲直りだ。以前のユーシャと大きく変えないでほしいのだ」
「そしたらメイド服着たらええやん」
……まあ、確かに。そうだね十年前はよく着てたよね。すっかり忘れてたけど。
「一応私服も見繕っておくれ」
「着物も欲しい」
はいはい。
「ほならね~♪」
私たちは着物選びを楽しんだ。
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「次はここや!」
「おお。そうだそうだ。こういう店を求めていたのだ」
「ふふ♪ 任しとき♪」
ここもアカネの実家、カナレス商会の系列店らしい。
「う~ん。少し地味じゃない?」
「せやろか~?」
「バッチリだ。これも買おう」
「まいど♪」
アカネは購入者側だろうに。単に客ってだけでなく、我が家の財産管理を任されている者なんだから。
「こっちも欲しいな♪」
「……まあいいか」
シュテルの前では着れないだろうけど。似合ってるし。
「あとこれも♪」
「……ダメだ」
「え~」
それも似合ってるんだけどさ。やっぱり露出がね。ユーシャが選ぶのそんなんばっかりだな。
「まあまあまあ♪ ユーシャったら、えらい雰囲気変わったなぁ♪」
「今更か?」
「見た目の話ちゃうよ♪ 無かったやろ♪ そんな趣味♪」
ああ。そうだな。今のユーシャは随分と自信が付いたものな。
「これなんてどうや♪」
「うん。良いね。エリク。これも買って」
「……仕方ないな」
くっ……何故断れんのだ……。
『あまやかしすぎ』
『御主人様チョロチョロですねぇ~♪』
『いいな~ほしいな~』
コルピスも? 良いぞ。三人とも出ておいで。好きなものを選ぶといい。
「やったぁ~♪」
「あれ? コルピス出すの? なら私も」
あれ? コルピスだけ? オトヒメとクルスはいいの?
『『いらない』』
さようで。
「いいから出てきて。カグヤ」
カグヤも嫌がって引きこもっているらしい。
「わっ!? 今どっから出てきたん!?」
ああ。そういえばまだちゃんと説明してなかったな。
「この子はコルピスだ。可愛がってやっておくれ」
そう言えばコルピスの件、母さんに確認してなかったな。
「コルピス。もう知っているだろうが、この子はアカネだ。私たちの大切な家族だ。仲良く」
「「よろ~♪」」
早い。言われるまでもなかったらしい。
「えらい可愛いお耳やね♪」
「えへへ~♪」
羽と尻尾はしまってあるけど、耳と手足はそのままだ。コルピス的にそっちの方が落ち着くそうだ。
「アカネに頼んでもいいか?」
「もちろんや♪ 任せとき♪」
「~♪」
よしよし。ふふ♪
「ユーシャ。カグヤは嫌がっているならやめておけ。私も一着選んでやるぞ」
「うん♪」
さて。何がいいかしら。
ユーシャったら何でも似合うもんなぁ。いっそ母さん用にも買っていくか? 今のユーシャに似合うなら、間違いなく母さんにも似合うだろう。二人はそっくりだし。ペアルックなら服嫌いの母さんも喜んで着るやもしれんな。ふふ♪




