07-65.敗北
「アウルム!」
「うん!」
アウルムをボディースーツのように纏ったパティは自ら海に潜り、ディアナたちの手数をものともせずに制圧した。
「負けたわ~」
「無意味に手の内を晒しすぎたわね」
パティは水上からディアナたちの動きを十分に観察してから動き出した。堅実な戦い方だ。経験の差がもろにでたな。
それ以前に、ディアナとマーレにはアウルムを突破する攻撃力も無かったわけだが。
「またやりましょう♪」
「いいわよ。けれど今はこちらに手を貸しなさい」
『必要ない』
パティとアウルムをラスボス部屋に転移させ、ディアナをゆーちゃんの下へ転移させた。
「まだ話の途中だったのに」
「大人しくしていろ。もう満足したろう」
「……そうね。後は任せるわ」
「だが向こうにつくなら相手をしてやろう」
「遠慮しておくわ。今のエリクはおっかないもの」
「そうか。残念だな」
今のユーシャとゆーちゃんが相手では満足出来るか疑わしい。ディアナもこれ以上戦うつもりはなさそうだ。
「後はクルスたちだけなのね」
「それも終わりだがな」
ユーシャは罠にかかった。既に身動き一つ取れない。にも関わらず執拗な挑発を繰り返している。もはや引っ込みがつかないのかもしれない。すまないクルス。本当にすまない。
「クルスは何を我慢しているのかしら」
「信じたいのだろう。ユーシャが一言でも謝れば許してやりたいのだろう。諦めきれんのだろう」
「……見ていられないわ」
「ダメだ。邪魔は許さん」
「……わかっているわ」
……。
…………。
………………。
クルスは長いこと待ち続けていた。
しかしユーシャが謝罪を口にすることはついぞなかった。
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「クルス」
「……」
俯くクルスを抱きしめると、すぐに私の身体の中へ入ってきた。
「オトヒメ。二人を頼む」
『はい。御主人様』
ユーシャたちは追い返そう。今のあやつらにボスへ挑む資格はない。
ディアナと、意識を失ったままのゆーちゃんとユーシャをダンジョン外へと放り出した。ここは空の上の島だが、それぞれのフィリアスたちが宿主を守るだろう。万が一そのまま落ちたところであの二人が傷を負う筈もないしな。
「パティはどうする? 帰るか?」
「いいえ。ここに居させてもらうわ」
「奴らは一人残らず素人だ。お前の力が必要ではないか?」
ユーシャの事も見誤っていた。もっと出来るものと思い込んでいた。やはりダメだな。私の教育は。
「大丈夫よ。本気になれば。あの子たちだって」
「だと良いがな」
精々期待して待つとしよう。でなければ……。
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あれから一週間。
「もう! いつまで腑抜けてるつもりよ!!」
「「……」」
「カグヤ! サクヤ! 二人を立たせなさい!!」
『『がってん』』
ユーシャとユウコの身体が本人の意思に反して立ち上がった。
「「やめて」」
「来なさい!!」
もう。仕方のない子たちね。
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「特訓よ!」
「「……」」
やる気のない二人の身体をカグヤとサクヤの二人が動かしている。そうやって湖畔まで歩かせて付いて来てくれた。
二人はわかっているのだ。このままではいけないのだと。ユーシャとユウコよりよっぽど賢い子たちだ。二人もいい歳していつまでイジケているんだか。
エリクたちは待っているんだ。だからもう一度立ち向かえばいいだけだ。あの子たちだってその為にボス戦になぞらえたんだ。わざわざ喧嘩して仲直りする為の舞台を用意してくれたんだ。
これは優しさだ。見放さずに待っていてくれるんだから。本当にもうクルスとコルピスに戻るつもりがないなら、喧嘩の必要だってないんだから。あの子たちはエリクとだって幸せにやっていけるんだから。それでもあの子たちは……。
「いくわよ! マーレ!!」
『がってん!!』
私たちが目を覚まさせてあげるわ!




