07-63.ダンジョンボス
「来たか」
ユーシャ、ゆーちゃん、ディアナの三人がパティに連れられてダンジョンに乗り込んできた。
パティの提案で全員がバラバラの入口から侵入してきた。手筈通りだ。
一旦は皆と同様に別の入口から入ってきたパティをダンジョン転移でディアナの下へと送り込んだ。
「クルス。コルピス。遠慮は要らん。全力でやれ。もし負けても私が回収する。その時は皆で共にやり返そう」
「「がってん!」」
気合十分だな。
よし! 始めるぞ!!
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「あら? どうしてパティがここに?」
別の入口から入った筈のパティが目の前に現れ、ディアナは首を傾げた。
「私がこの部屋を担当するボスだからよ。ディアナ」
「ボス? 戦うの?」
「そうよ。喧嘩をしましょう」
「理由がないわ」
「マーレの力を試したいのでしょう?」
「なるほど♪ そういう話なら受けて立つわ♪」
「本気でいくわよ」
「ええ♪ 私たちもね♪」
パティ&アウルム対ディアナ&マーレの戦いが始まった。
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「コルピス! 出迎えに来てくれたのね!」
「ちがうの~♪」
「えっ!?」
コルピスが腕を振りかぶると、腕の途中から巨大な獅子の腕に変化した。そのまま、駆け寄ろうとしていたゆーちゃんに向かって、躊躇無く振り下ろした。
「なっ!?」
間一髪転がって避けたゆーちゃんは、信じられないものを見たと驚愕の表情を浮かべた。
「銀花! あなたね! 見ているんでしょ!!」
今のゆーちゃんに私の心は覗けない。オトヒメが完璧な防壁を組んでくれた。それでもゆーちゃんは、私がダンジョンコアを通じて覗いていると考えた。
「よそみは~! だめだよ~!」
「っ!?」
今度は翼を広げて無数の羽を射出するコルピス。ゆーちゃんは避けるので精一杯だ。
ダンジョン内では転移も封じてある。状況を飲み込みきれていないゆーちゃんは攻撃に転じる様子もない。
そもそもゆーちゃんの実戦経験は殆どない。いつも私の中で見ていたとはいえ、本当に命を賭けて戦場に立っていたわけではない。そういう意味ではこれが初めての実戦だ。訓練ではない、相手を傷つける為の争いはこれが初めてだ。
だからどうしても判断が遅くなる。先にコルピスを制圧してから話を聞こうだなんて考える余裕はない。生まれたばかりのサクヤも同様なのだろう。
今のうちだ。コルピス。怪我なんて私がいくらでも治してやる。徹底的にやり返せ。自分の受けた悲しみをわからせてやれ。思う存分、叩きのめしてやるといい。
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ユーシャとカグヤの前にはクルスが立ち塞がった。
「そう。いいよ。相手になってあげる」
ユーシャはゆーちゃんと対照的に瞬時に状況を理解した。まっすぐにクルスを見つめ、不敵な笑みを浮かべている。
ユーシャの実戦経験は私より長いくらいだ。ノンビリした子ではあるけど、命の危機には敏感だ。今では高い実力も備わっている。クルスだけでは分が悪いかもしれない。
「……」
「どうしたの? かかってこないの? ならこっちから行くよ。家出娘を叱ってあげないとだからね♪」
ユーシャはまっすぐ飛び出した……ように見せかけて、直前で角度をずらし、クルスの死角に回り込んだ。
「っ!」
クルスに手を伸ばしかけたところで咄嗟に考え直し、急制動をかけて強く地面を蹴り、飛び退って距離を取った。
「危ない危ない♪ クルスったら本気なんだぁ♪」
「……」
クルスは何も答えない。ただ罠を張って待ち構えているだけだ。
「う~ん。どうしよっか。カグヤ。何か良い手はある?」
ユーシャはクルスを挑発するように、わざわざ口に出して相談を持ちかけた。
「ふふ♪ 流石カグヤ♪ うんうん♪ それはいいね♪」
「……」
抑えろクルス。
「カグヤは頼りになるなぁ~♪ ふふ♪ カグヤがいれば十分かもしれないね♪」
「……」
クルス。ダメだ。乗るな。
「でもなぁ。こんな事したらクルスが怪我しちゃうなぁ。やっぱり帰ろっかな。カグヤがいれば寂しくないし♪」
「……」
クルス!




