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03-53.経過観察

「エリク! エリク! エリクどこに居るの!?」


「どうしたパティ。騒がしいな。頼むから少し静かにしておくれ。ユーシャとシュテルが眠っているのだ」


「あ、そうなの。ごめんなさい。とにかく来て。説明して」


「説明? ポチとピーちゃんのことか?」


「もっと他に名前無かったの?」


「それが聞きたいことか?」


「違うわよ。いいから行くわよ!」


 何やら混乱した様子のパティは私の手を握って速歩きで進んでいく。



「いったい何があったのだ?」


「何があったですって? それはこっちのセリフよ。あれは何? 本当にフォレストウルフなの? あの気配は魔物なんかじゃないわよ? いったい貴方達は何を生み出したの?」


 ベテラン冒険者の目から見ると不自然に映るのか……。



「正直私にもわからん。元が魔物なのは確かなのだが……」


「そんなの生み出しちゃダメじゃない。せめて私達の見てるところで試しなさいよ。何かあったらどうするのよ」


「そうだな……すまん……」


 ただでさえファムもマッド寄りなのだ。私まで一緒になって好き勝手試していたらあっという間に道を踏み外してしまうだろう。



「本当に気をつけて。何かあれば一番に割りを食うのはディアナよ。あの娘の入学だって冗談抜きで取り消されるわよ」


「うむ。肝に銘じておく」


「それで? ドラゴンを従える目処は立ったの?」


「うむ。恐らく問題無いだろう。このまま計画を立てよう」


「良いわ。けど先ずはポチの様子を確認しましょう」


「うむ」


 数日は様子を見ておかねばな。それこそ本当のソンビのようになってしまう可能性もあるわけだし。




----------------------




「あらあら~? あらあらあら~?」


「どうするのです!? マズイですよ! ほっといたら!」


「う~ん。ふふ♪ どうしよっかぁ~♪」


「どうしよっかぁ~♪ じゃ! ありません!! 回収するしかないでしょ!? 私が行ってきます!! 許可をください!!」


「ダぁ~メ♪」


「何故ですか!! あんなのほっといたらバランス崩れちゃいますよ! 飽和しちゃいますよ! 引き離すしかないでしょ!!」


「う~ん? 大丈夫だと思うなぁ~♪」


「そんな曖昧な!?」


「ネルちゃん大袈裟~♪」


「主様が大雑把過ぎるのです!! だいたいあの薬瓶だっておかしいでしょ! なんですか無限の魔力って! どこからリソースちょろまかしてるんですか!?」


「えへへ~♪ 凄いでしょ~♪ あれはね~♪ ギンカちゃんの世界からね~♪」


「はぁ!? まさか嘘でしょ!? あっちに手を出したんですか!? 怖い神々来ちゃいますよ!?」


「だいじょ~ぶ~♪」


「ダメなんですってばぁ!! 以前にも叱られたじゃないですかぁ! あれだけ叱られたのにまぁだ懲りてなかったんですかぁ!?」


「だからね~♪ 今回はね~♪ 絶対バレないようにしたからね~♪」


「バレるんですってば! もう! あの薬瓶回収して来ますからね! 良いですね!!」


「それはダぁ~メ♪」


「主様ぁ!!」


「うふふ~♪」




----------------------




 ポチとピーちゃんが眷属に加わってから数日が経過した。ポチはあれから何も食べていない。どうやら私の魔力だけで事足りるようだ。私の予想は外れてしまったが、これはこれで納得も出来る。やはり何か通常の生物とは異なる存在に生まれ変わったのだろう。取り敢えず本当のゾンビのように肉体が腐り落ちなくて何よりだ。



「うんうん♪ 流石ポチだね♪ 賢いねぇ♪」


 ファムはワシワシとポチの首周りを撫でている。一見するとポチは鬱陶しそうに渋い表情を浮かべているのだが、その尻尾はブンブンと振られ続けている。どうやら満更でもないらしい。まるでクールキャラを気取る少年のようだ。



「どうだ? 様子は」


「ふふ♪ 色々面白いことがわかったよ♪」


 ファムも絶好調だな。毎日楽しそうに研究を続けているようだ。



「アー君お願い♪」


「◯!」


 何時ものように丸印を作ったアウルムは、ポチの前足をあらぬ方向へと折り曲げた。



「はぁ!? 何して!?」


「あ! 待って! クーちゃん!」


 慌てて魔力を流そうとするも、何故かファムに引き止められてしまった。



「ほら。もう治ってる。凄いでしょ♪」


 ポチの前足は殆ど一瞬で元の形を取り戻していた。本人も痛がる様子は無い。やれやれと慣れた様子で前足を振って見せてきた。



「たぶんこれ普通の眷属よりクーちゃんの魔力が行き届いてるんだよ。魂って魔力の心臓みたいなものだもんね。それが丸々クーちゃんの魔力で出来てるんだから当然だよね」


「……あまり人道的でないことはしてくれるなよ」


「大丈夫。ポチは痛みを感じてないみたいだから」


「なんだと? いや、そう言う問題じゃなくてだな」


「あ、でもちょっと語弊があるのかも。もしかしたら痛みに鈍いだけかもしれないね。そこはまだハッキリしてないんだけど。むしろなんだか気持ちよさそうだよ。瞬時に回復する感覚がやみつきになってるみたい。たぶん骨折で感じる痛みより回復による快感の方が強いんだろうね」


 えぇ……いや確かにポチはずっと尻尾を振り続けているのだけども……このワンちゃん涼しい顔してドMなの? あくまで回復の副次効果が原因だからMとは違う?



「まあ何にせよ程々に頼むぞ……」


 それでポチが変な趣味に目覚めても困るし……。



「うん♪ 任せておいて♪」


 でもまあ、本当にゾンビみたいになってしまったな。痛みに強く、莫大な魔力を持ち、更に再生能力まで持つ飛竜とか最早誰にも倒せんだろう。ベルトランなら再生も間に合わない程細切れにしてみせるかもしれんけど。


 とにかく蘇生タイプの眷属化も上手くいったようだ。計画の方も纏まったし早々に動くとしよう。

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