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03-29.忠告と許可証

「殿下! お待ちしておりましたぞ!!」


「「……誰?」」


「なんと!? 爺の顔をお忘れですかな!?」


「「……ごめんなさい」」


「まあ無理もありませぬな。殿下と最後にお会いしたのはまだこのくらいの頃でしたからな」


 そう言って両手でペットボトル程度のサイズを表す爺様。どう見ても赤ん坊サイズだ。いや、生まれたての赤ん坊だってもっと大きいけど。とにかくそんなん知るわけが無かろうに。


 そもそもこれはどっちの話だ? パティとレティは三つも違うぞ? どのみちレティが三歳の頃なら覚えてはいないだろうけど。



「それでえっと、あなたは?」


「ああ、これは大変申し訳ございませぬ。どうぞ爺とお呼びくださいませ」


 いや、名乗れよ。



「爺。悪いけど今日は忙しいの。用事ならまた今度にしてくださるかしら?」


「どうか姫様のご用件はこの爺にお任せを」


 そのままパティから用件を聞き出した爺様は暫しその場を離れると、あっという間に許可を取り付けて戻ってきた。



「どうぞ。こちらの許可証をお持ちくださいませ。今後どのような魔物であろうとも姫様のお好きに扱って頂いて構いませぬ」


「えっと……ありがとう……え? 本当に? 飛竜も?」


「驚きました。まさかこんなあっさり……」


 パティどころかレティまで驚きで固まっている。許可証にはゴルドスライムでも竜種でも何でも好きに連れ込んで構わないという旨が記載されていたのだ。



「それではご同行頂けますかな?」


「「……はい」」


 なに!? なんなの!? この爺様マジで何者なの!?



「来たか。ご苦労。セバス」


 爺様に案内されたのは国王陛下の御前だった。つまりこの爺様は陛下の側近というわけか。あれか? 陛下は出産直後にこそ立ち会うものの、殆どの子供達を放置しているのか? だからこの爺様とパティ達は殆ど面識が無いのか? 普段公の場で陛下の側に控えているのは近衛騎士団長やら宰相やらだからあくまで執事的な爺様は出てこないのか? いやそれにしたって十五年以上も面識無いって事あるか? 同じ城に住んで居たのだろう?


 いや、どうでもいいな。その辺は。


 そんな事よりもだ。問題は国王陛下の用件だ。まさかもうギルドと揉めている事が耳に入ったのだろうか……。


 先程爺様が許可証を瞬時に用意してみせたのも陛下に直接許可を貰ったからか。陛下以外にそんな許可出せないだろうし。そっちの線で何か問い詰められるか? いや、問い詰めるつもりなら許可なんか出さんか……。



「レティシア。パトリシア。お前達王位を取るつもりはないか?」


 あら? レティまで? 陛下的には大して興味ないんじゃなかったの?



「「申し訳ございません。陛下」」


「そうであろうな。まあよい。今後王位の事は気にするな。好きにやるがよい」


 え? まさかこれを言うために? 親心でも芽生えたの?



「「感謝致します。陛下」」


「うむ」


「……」


「……」


 何この沈黙?



「妖精王。覗いているのだろう?」


「……うむ。悪いな。親子の団欒を邪魔するつもりはなかったのだが」


「ほう。余を誂うと」


「お主がらしくない事をしておるからだろう」


「何を言う。余は寛大な王だと自負しておるぞ」


 いやまあ実際そうなんだろうけどさ。ベルトランなんて側に置いてるくらいだし。



「貴殿に一つ忠告しておこう」


「聞こう」


「……コルティスの宿命に留意せよ」


「コルティス? シルビア・コルティスの事か?」


「わかりきった事を聞くでない」


「具体的に言え。あの子には何があると言うのだ?」


「いずれ知る時がくる。それまで存分に鍛え上げるが良い」


「託すと言うのか?」


「そう言っておろう。これで話は済んだ。疾く下がれ」


 これは聞いても教えてくれそうにはないな。


 けれど何故わざわざ言及したのだろうか。一度ベルトランを通して話せない事は伝えてきていたのに。


 まさか魔物の収集と何か関係があるのか? あの時から陛下の耳に入った情報で変化を齎すとするものがあればそれくらいではないか? だから許可証をあっさりと発行してくれたのか? 流石にスノウの件は関係無いだろうし……。



 わからんな。相変わらず。何も。


 案外、娘達と話す口実でもほしかったのかもしれんな。


 無いか。流石に。それなら許可証を直接渡す流れにしても良かったのだし。


 何にせよ、やはりシルビアは特別な存在なのだな。それを陛下の口から直接聞けたのは収穫だ。ならば遠慮する事も無いだろう。あの子には私の全てを伝授しよう。なんなら眷属化についても検討してみるべきかもしれんな。




----------------------




「おかえりなさい。パティ。レティお姉様」


「「ただいま~」」


 帰ってきたな。これで会議の続きを進められる。とは言えそろそろ夕刻も近い。これから外を出歩くのは難しいかもしれん。



「今から出るわよ。エリク」


「今からか?」


 出たり入ったりと忙しいな。



「ゴルドスライムは夜行性なのです。それに月明かりも重要です。明るい夜は見つけやすいんです♪」


 なるほど。確かに今宵は丁度良いのかもしれんな。



「オルニス。頼めるか?」


「キュゥ~♪」


 ふふ。体格に似合わず可愛らしい鳴き方をするやつだな。



「すっかり懐いたわね。流石はエリクだわ」


「オルニスちゃ~ん♪」


「キュゥ~……」


「おい。脅かすなレティ」


「脅かしてなんていませんよ!?」


「諦めなさい。レティ」


「うぅ……私が連れてきてあげたのに……恩知らずです……」


 まあ仲直りはいずれな。



「レティは留守番だ。代わりに来てくれ。ロロ」


「勿論良~デスヨ~♪」


「シクシク……エリクちゃんまで……」


「仕方がなかろう。今度仲直りに協力してやるから我慢しておくれ」


「わかりました……」


「う~ん。私としてはレティにも来てほしいのよねぇ~。万が一って事もあり得るし~」


「失敗した場合の対処には人手もいるか……」


「そうなのよ。本当ならスノウだって連れて行きたいくらいなの」


「夜中にこっそりと空を飛んで行くのであれば問題も無いのではないか?」


 誰か裏ギルドの連中に目撃されるという事も無いだろう。



「なら皆で行きましょうよ」


「しゅてー!!」


「シュテルも役立つよ」


 いやそりゃ、シュテルは役立つだろうが、ディアナもユーシャも足手まといだろうが……。木を隠すなら森の中理論か? 全員で行けばスノウも隠せると?



「オルニスがエリク、ユーシャ、シュテルを運ぶとして、私がディアナ、レティがメアリ、ロロ先輩がシルヴィー、スノウがミカゲを運べば全員で行けるかしら?」


「本当にフル動員だな。そこまで必要なのか?」


「最悪ね。それに非戦闘員の護衛も必要じゃない」


 その非戦闘員達を置いていけば半分以下で済むと思うのだが……。



「わ♪ わ♪ なんだか楽しそうだね♪ 皆でお月見だね♪ お団子いっぱい作って行こう♪」


「お月見ならエリクさんの椅子も必要」


「私も微力ながらお手伝い致します! 主!」


 あかん。もう皆行く気満々だ……。



「仕方ない。蜘蛛達も少し連れて行くか」


 二人一組プラス蜘蛛一匹で動くのを徹底するとしよう。やはり早めにドラゴンが欲しいところだな。移動の意味でも護衛の意味でもきっと役立ってくれることだろう。それに蜘蛛達は屋敷の守りに専念させたいしな。



「出発は少々お待ちを。夕食の準備をして参ります」


 悪いな昼食に続いて。この人数の弁当を用意するのも大変だろうに。



「私はギルドに行ってゴルドスラムの目撃情報を集めてくるわ」


「待て。一人で行くな。オルニス。付き合ってくれ」


「キュゥ~~!!」


「まさか見せに行くの?」


「うむ。ギルドへの根回しも必要だろう。明日にはゴルドスライムも見せびらかしてやろう」


「ふふ♪ きっと話題になるわね♪」


 やるなら盛大に燃え上がらせてやろう。早速驚く顔が見れそうで少し楽しくなってきたぞ。

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