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03-28.サクサク進行

「キュルゥゥウ……」


 巨体を縮こませて私に縋り付く鳥魔物。よほど恐ろしい目にあったのだろう。レティの方に視線を向けないよう羽で顔まで覆っている。



「名前もつけてあげたら?」


「ガルダ」


「没」


 むむ……。



「フェニックス」


「不死鳥のことでしょ。この子は違うわ」


 そう言えば前にパティが言っていたな。不死の鳥が存在するかもって。名前同じなのか。たまにあるんだよなぁ。



「ならば"オルニス"だ。これでいこう」


 蜘蛛あのこ達に付けた名前は誰も呼ばんが、オルニスは人気が出そうだな。なんだか可愛らしいし。それに私一人なら抱えて飛べそうなくらい立派な体格だ。魔力壁で籠でも作って持たせれば負担も減らせるだろう。元気が出たら早速飛んでみてもらおう。



「良いんじゃないかしら」


 よかった。パティの承認も降りた。パティって自分で名付ける時はそのまんまな名前を付けるくせに、私が名付けようとするとやたら拘るのだよな。



「何か言いたいことでも?」


「いいや。それより会議を再開しよう。これで魔物も問題なく眷属化出来ることが判明したな。助かったぞレティ。だがもう一人で勝手に行くでないぞ」


「はい♪ エリクちゃん♪」


 良い返事だ。今度は私もオルニスに連れてってもらおう。そうでないと魔物が可愛そうだからな。また籠に押し込められて連れてこられても困るからな。



「クルゥゥウ~」


 オルニスを撫でながらパティに視線を戻す。



「次は魔力抵抗の高い魔物だったな」


「大型の魔物を先にという手もあります。無力化はお姉ちゃんに任せてください♪」


「「……」」


 いやまあ、私がやってもどうせ魔力壁やら魔力手やらで押さえつけることにはなるんだけどさ。


 一応無傷で捕らえてきたレティが凄いのは間違いない。けどかけるストレスも最低限にしよう。



「ヴァンプ系は難しいわね。近場には生息してないし」


「スライムはどうですか?」


「スライムってまさか、ゴルドスライムのことを言ってる? あれくらいだものね。魔力抵抗の高そうなのって」


「そうなのか? 確か私にも使われているのだったよな?」


「ええ。エリクの皮膚には表面の膜が使われているわ。けどゴルドスライムが魔力を多く持っているのは体液の方なの」


 なるへそ。そっちの魔力抵抗が高いわけか。



「ゴルドスライムなんて王都に連れ込んだら……って、レティ? オルニスの許可は?」


「え? 貰ってませんよ?」


「ちょっと……」


 あかんだろ。事前の根回し無しで王都の上空なんて飛ばしたら撃ち落とされてしまうだろうに。



「私の方で申請しておくわ。ついでにゴルドスライムの方も掛け合ってみる」


「申請が通らんかもしれんのか?」


「ええ。なにせSランクの魔物だもの。下手すると王都ごと滅ぼせるやつよ」


「は?」


「一応条件付きのSランク指定だし明確な弱点もあるから、ただ倒すだけなら難しくはないんだけどね。けどある特定の条件が揃うと手に負えなくなるのよ」


「どんな条件なのだ?」


「大量の魔力よ。例えば飛竜種の亡骸とかね。運悪く、いえ、彼らにとっては運良く新鮮なものを見つけてしまったら最悪よ。彼らは丸ごと取り込んで力を得るの。質量も比例して巨大なものとなるわ。そうやって村ごと飲み込んだ例もいくつか存在するくらいなの」


「どう考えてもそんなん許可降りんだろ」


 ただでさえ莫大な魔力持ちとして私の存在が知れ渡っているのだ。それに私達はいずれ飛竜種の方も従えようとしているのだ。仮にゴルドスライムの飼育を許可されたとしても、今度は飛竜種の方の許可が降りなくなりかねん。元々そんな許可が降りる可能性は限りなく低いと言うのに。



「だからダメ元よ。どうしてもダメなら王都の外に牧場でも作りましょう」


 魔物専用の牧場だな。悪くない。とは言えそれには時間もかかろう。この屋敷で飼えるのが一番だな。


 というか私はどうやってそのゴルドスライムを眷属化させるのだ? 大量の魔力を流す必要があるのだぞ? 魔力抵抗を突破出来たとて、眷属化に至る前に巨大化してしまうかもしれんぞ? いや、パティがそんな事に気付かない筈は無いから何か考えがあるんだろうけど。弱点があるとも言っていたし。



「レティも付き合って」


「はい♪ パティ♪」


 今日のお姉ちゃんは特にご機嫌だな。相変わらず頼られるのが好きなお姉ちゃんだ。



「今から城に行くのか? 私も付き合っても良いか? ボディーガードくらい居た方が良いのではないか?」


「ダメよ。エリクはオルニスのこと慰めてあげなきゃ」


 むぅ……。やむを得ないか。



「レティとは繋いでおいて。頼りにしてるわ。エリク」


 そのまま止める間もなく、パティとレティは窓から飛び出して行ってしまった。そんな様子を見てメアリがため息をつきながら開け放たれた窓を閉じた。



「やっぱりお淑やかさが足りないと思うの」


 そうだな。帰ってきたら言い聞かせておかねばな。

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