03-13.仲良し姉妹
「まぁま!」
「ダメ。シュテル。ここに居て」
「あいっ!」
「うん。良い子」
「えへ~♪」
本当に良い子だ。それにとっても可愛い。ついつい根負けしてデートに付いてきちゃったくらいには。
この娘もエリクの事が大好きだ。置いていかれたのだと気付いた時には大泣きしてしまったくらいだ。
私は何時から平気になったんだろう。エリクの側を離れるなんて少し前まで考えられなかったのに。
きっとパティについて行くと決めた時だ。あれが私にとっての大きなキッカケだったのだろう。
これは成長なのだろうか。この娘も何れはエリクの側を離れていくのだろうか。
そもそも成長ってするのかな? よくわかんないや。
「やーそーうー! おねーちゃ!」
「そうだね。約束したもんね。見てるだけ。邪魔しない」
「うー!」
どうやらこの娘は私の事も好きみたいだ。なんでだろう?
「おねーちゃ!」
「なに? シュテル」
「まぁま!」
「そうだね。いたね。楽しそうだね」
私達はその隣に居ないのに。
「おねーちゃ?」
「どうかした?」
「……さみし?」
「ううん。大丈夫。シュテルもいるし」
「あいっ!」
私に抱きついて頭を撫でてくれた。優しい。
「あれ? シュテル飛んでる?」
「?」
「ダメだよ。シュテル。目立っちゃうから」
取り敢えず抱っこしておこう。只でさえ視線を感じるのに空飛ぶ赤ん坊なんて連れていたらもっと目立っちゃうし。
「なんだか少し前のエリクみたい」
「まぁま?」
「そう。丁度同じくらいのサイズだったから。もしかしたらエリクの記憶から見つけたのかもね」
それで参考にしたのかも。少し似てる気がする。でもやっぱりちょっと違う。この子の顔は誰を参考にしたんだろう。
エリクが願ってシュテルが生まれたらしい。ならエリクの知り合いなのだろうか。私以上に娘として望む相手がいるのだろうか。どうしてシュテルは私と似ていないのだろうか。
モヤモヤする。
「う~?」
「そっか。わかんないか。いいよ。気にしないで」
「う~……」
落ち込んじゃった? そう言えば考えている事もわかっちゃうんだった。ごめんね。シュテル。あなたを責めたいわけじゃないの。
「にゃっ!」
にゃ? え? 服が変わった?
「それエリクの着てた服? 真似したの?
凄いけどそれも外でやっちゃダメだよ」
エリクは何の力も無いみたいに言っていたけど、この娘はやっぱりあの杖なんだ。きっと望んだ事を何でも叶えられる凄い子なんだ。
「むっふ~♪」
凄いの部分しか聞こえてなかったのかな?
「あ! 隠れて! シュテル!」
「うい!」
エリクがお店から出てきた。
と思ったら引き返しちゃった。誰かに呼び止められたみたい。ここからじゃ見えないけど物陰に誰かいるのかも。レティお姉ちゃんかな? それともロロセン? もしかして私達の事に気付いてる? お姉ちゃんなら気付かないフリをしてくれているのかも。お姉ちゃん優しいし。
「おねーちゃ?」
「うん。大丈夫そう」
「ふぅ~」
「ふふ♪ 安心したの?」
「う~!」
「服変えない? それじゃ目立ち過ぎると思うんだけど」
「やっ!」
「そっか。まあいっか。よく似合ってるし」
「むっふ~♪」
本当によく似合ってる。こうして見ると増々エリクとそっくりだ。私も着てみようかな? 似合わないかな?
「にゃっ!」
「え!? ちょっと!?」
今度は私の服がシュテルと同じものに変わってしまった。すっごく恥ずかしい……。
「元に戻して」
「やっ♪」
「嫌じゃない。戻して。怒るよ」
「や~ぁ~!」
「ダメ! 何処行くの!? 約束破るなら帰るよ!」
「うぅ~……おこーあーない?」
「怒らないから。ここに居て。私の服も戻して」
「い~やぁ~……いっしょ~いい~」
「なら他の服にして。私が着てたやつで良いでしょ」
「か~いくな~い~」
「なっ!? そんな事無いもん! エリクは可愛いって言ってくれたもん!」
「ぶ~」
「ねえ。お願い。意地悪しないで」
「むぅ……」
よかった。戻してくれた。ついでにシュテルの服装も私のと同じになってる。ちょっと勿体ないかも。シュテルには似合ってたのに。
「おねーちゃも!」
「……お屋敷の中でなら着てあげるから」
「やーそーうー!」
「うん。約束」
仕方ない。少しくらいなら付き合ってあげよう。可愛い妹の頼みだし。
「えへ~♪」
「くすぐったいよ」
「えへへ~♪」
たまに都合の良い事しか聞こえなくなるよね。結構調子のいい子なのかもしれない。