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転生したら万能回復薬でした!?  作者: こみやし
03.王都編・(仮)
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03-04.過去と今

「スノウ。悪いな呼び出して。

 少しこの男と話をしてみてくれないか?」


「話? なんの?」


「フラビア……」


「……前の私を知ってる?」


 スノウは察しが良いな。

ベルトランが名を呟いただけで状況を把握してくれた。



「間違いない。この娘はフラビアだ。

 いったい何があったってんだ……」


「……誰?」


「っ……兄だ。俺はお前の兄だ。名はベルトラン。

 何か思い出す事はないか?」


「……ごめんなさい」


「そうか……」


「すまんな。ベルトラン。

 どうか焦らず見守ってやってくれ」


「ああ……。おう。そうだな……」


 何れは生家の方にもお邪魔させてもらおう。

それも何かのヒントになるかも……いや、待てよ?


 あるじゃないか。スノウの記憶を取り戻す方法。


 聖女の杖ならば記憶も戻せるのでは?


 後でパティにも相談してみよう。



「スノウ。悪いがこの男を頼む。

 暫く側に置いてこき使ってやってくれ。

 接する内に何か思い出すかもしれん」


「エリクさんは思い出してほしい?」


「え?」


「前の私の方が好き?」


「何を言っているんだ?

 スノウは不安じゃないのか?

 自分の事を何も思い出せないのだろう?」


「私の為? エリクさんが思い出させようとするのは」


「うむ。そうだ。それ以外にあるまい」


「なら必要ない。私は今の私が好き。エリクさんの側に居られる私がいい。だから思い出したくない。エリクさんに迷惑をかけた私の事なんて」


「待て待て待て。そう結論を急ぐな。別に思い出したからって何も変わらんさ。スノウはこれからも私の眷属だ。私のものだ。今更手放しはせんのだぞ?」


「でも私は変わるかもしれない」


 確かに以前のスノウなら私を独り占めにしようと動くかもしれんが……。



「わかった。私も強引には進めんよ。スノウの望むようにしてみるがいい。ただ一つだけ。どうか私以外の事も考えてみておくれ。ミカゲもベルトランもきっとご両親や姉妹もお前の帰りを待ち望んでいる。それは別に前のスノウである必要はないのかもしれない。何も思い出せないお前でも皆喜んでくれるのかもしれない。そんな皆と触れ合っていればお前も昔の自分を取り戻したいと願うかもしれない。だから焦る必要はない。私も今すぐ何かを強制する事はしないから」


「うん。わかった。エリクさん。

 じゃあ行くよ。お兄さん?」


「お兄ちゃんだ。以前のお前はそう呼んでいた」


「呼んでおらんだろ。嘘をつくな」


 そうなの? 以前のフラビアならお兄ちゃん呼びでも不自然は無いけど。あのキャラは裏ギルドに所属するようになってからなのかな? 実は元々良家のお嬢様らしくお淑やかに過ごしていたのかな?


 と言うかニコライもフラビアの事詳しいな。ベルトランより先に気付いてたし。



「本当はなんと呼んでおったのだ?」


「あれやこれ扱いだ。

 以前のフラビアは兄を毛嫌いしていた」


 ああ。そっちか。

あのフラビアに嫌われるって相当だな。



「ちっくしょう……本当の事言いやがって……」


「小賢しい真似をするでない。

 貴様本当に記憶を取り戻させるつもりがあるのか?」


「いや、そりゃ望まねえって話で」


「それはスノウの希望だ。

 お前が努力する分には止めはせん。

 当然やりすぎなければだがな」


「そうか。そうだよな。

 わりぃ。ありがとな。エリク」


「気にするな。私も罪悪感が無いわけではないのだ」


「それこそ気にすんな。

 フラビアを、いや、スノウを保護してくれて感謝する」


 別にフラビアと呼び続けても構わんと思うが。


 にしても、よく本名で活動していて気付かれなかったな。第三王子からの任務まで請け負ったくせに。あれか? 実は初仕事だったのか? 私が返り討ちにしておけば、近い内にベルトランが気付いて保護していたのか?


 いや、そんなわけがないか。ミカゲともそれなりに長い付き合いのようだし。少なくとも家出してから数年は経っていた筈だ。ベルトランも昔はと言っていたのだ。そこんとこ詳しく聞いておけばよかった。しかしまた後だな。と言うか他に聞きたい事もあったのにそれも全部後だな。ちょっと失敗したな。冷静に考えるとデートプランより重要な事いっぱいあったのにな。



 スノウはベルトランを連れて掃除途中の場所に戻っていった。この場には私とニコライだけが残された。



「そうだ。ニコライに聞けばいいのだな。

 フラビアが姿を消したのは何時頃なのだ?」


「六年程前だ」


 ありゃ? 意外と前だった。当時フラビア幾つよ?



「あの娘は今幾つなのだ?」


「……二十二だ」


 そしてこれまた意外と年上だった。

童顔だからわからなかったぞ。


 というか? あれ? ミカゲより年上じゃん。流石にメアリ程じゃないが、除けば最年長だったのだな。


『エリク様?』


 あかん。脳内メアリが怒りの笑みを向けてきた。

ごめん。メアリ。



「学園卒業と同時に行方を眩ませたのか?」


「うむ。そんなところだ」


 よっぽど嫌な進路でも押し付けられたのか?

何処ぞの貴族に嫁げとか。何かそんな感じの。



「理由は?」


「知らん」


 流石にか。まあ十分詳しいけど。



 いったいその六年間はどこで何をしていたのだろうか。まさかずっと王都にいたという事はあり得まい。恐らく離れてはいた筈だ。レティもベルトランの実家は昔から国に仕える由緒正しい家柄だと言っていた。権力や影響力も相応にある筈だ。早々に連れ戻されていただろう。


 なんなら最後の任務を請け負ったのもこの王都ではなかったのかもしれん。奴らにだって各地の支部を繋ぐ情報網くらいあるのだろうし。


 一支部しか無いような弱小組織がこの国の王都に潜み、かつ第三王子と直接繋がるなんて離れ業を出来る筈もない。それなりに規模は大きいはずだ。これは他の町に行く時も気をつけねばな。


 その辺りミカゲにも詳しく聞いてみよう。メアリも何か知っているかもしれん。ミカゲを捕まえた時に色々調べた筈だし。



 でもなぁ。なんだかなぁ。こういうの調べだすとそのままズブズブ関わる事になりそうだなぁ。


 最悪その時はベルトランに助力を頼むとするか。きっと喜んで潰してくれるだろう。フラビア本人が選んだ事とはいえ、妹を悪の道に誘い込んだ連中を野放しにしておく筈もない。きっと後で陛下に叱られるとわかっていても手を貸してくれる筈だ。あの男は案外生真面目だが、同時に融通も利く出来る男なのだ。



 まあ、それ以前に接点自体を持たない事が重要だとは思うけど。別に自分から首突っ込みたいわけじゃないし。

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