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02-70.オーバーキル

「なんだかあっさり終わってしまったな」


「そうね。拍子抜けだったわね」


「見たか? あの陛下の顔。

 折角の見世物が軟弱者共のお陰でパアになったあの瞬間」


「やめなさいよ。洒落になってないわ」


「まあそうだな。マジギレだったものな」


「興ざめしていたのは間違いないわね」


 私達が大勢で城に乗り込むと、楽しげな陛下と、揃いも揃って頬の引きつった偉そうなオジサマ達に迎え入れられた。


 私達の人数を目の当たりにし、騎士団長からの報告に腰を抜かしたオジサマ達は、早々に降参を宣言してしまった。


 その瞬間の陛下の顔ときたら……。



 いやまあ、流石にそうハッキリと言葉にしたわけではないんだけども。ただパティの無実を認めると宣言したのだ。早々に裁判を放棄してしまったのだ。事実上の敗北宣言と受け取って相違あるまい。


 これには陛下も心底ガッカリした様子だった。陛下が折角色々と便宜を図ってやったのに、奴ら恩知らずにも自分達が見世物になる事は拒否しおったのだ。


 陛下の御前で敵前逃亡などこの国では到底許される事ではないだろう。いや、他の国でも許されんだろうけど。わざわざ侵略者共を城に招いておいて、分が悪くなったら一目散に逃げ出すなど言語道断だ。恥知らずにも程がある。


 怒れる陛下からどんな沙汰が下されるにせよ、奴らが再び手を出してくる事は無いだろう。



 ちょっと脅かしすぎたかな? 皆の身元が割れないようにと全員の顔を光る魔力壁で隠したのはやりすぎだったかな?


 冷静に考えると中々ホラーチックな光景だ。宇宙人でも攻めてきた感じの。SFホラーとかこの世界には早すぎたのかもしれない。


 私が先頭で千手観音モードを披露していたのもあかんかったかも。神々しいと言うより、やっぱり妖怪か何かだと思われたんだろうし。




「まだ仕掛けてくると思うか?」


「無いんじゃない? 流石に。三番目の兄様の一派も今回の騒動は一部始終を見ていたはずだもの。流石にもう仕掛けてくる事は無いと思うのだけど」


「だと良いのだが。私も今日は疲れた。そろそろ休みたい」


「本当にお疲れ様。屋敷に帰ったらゆっくりしていて。

 後片付けは私達でやるから」


「ああ。そうだった。

 屋敷もきっと荒らされておるな」


蜘蛛あのこ達は?」


「あの決闘の時から見ていなかったな。

 少し待っていろ」


 眷属達に意識を繋いで屋敷内を見て回る。



「む?」


「何が見えたの?」


「……簀巻きだ。大量の」


「簀巻き? 何を言ってるの?」


「兵士達が吊るされておる。軒先からずらりと。どうやら蜘蛛達が自らの判断で処理してくれたらしい」


 屋敷大丈夫? そんな負荷かけて壊れない?

なんか糸で補強しているのだろうか。頭良すぎじゃね?



「はぁ?」


「そうとしか説明がつかん。

 私の張った罠は最低限のものだ。

 多少身動きは封じられても、流石に簀巻きには出来んよ」


 そもそも屋敷の外には罠なんてしかけてないし。

たぶんこれ、一人の侵入も許してないっぽい。


 うちの子達優秀すぎじゃね?

いつの間にそんな成長を遂げてたの?


 今まであんまり個体ごとに興味を持った事は無かったけれど、帰ったら少しは労ってやるとしよう。きっと喜んでくれるはずだ。間違いなくあの子達も私に好意を抱いているのだし。コミュニケーション方法はわからんけど。



「そんな糸どこから用意したのかしら。

 あの子達のサイズじゃ無理があるでしょ?」


「魔物化したんじゃないか?」


 そんな現象が起こり得るのかは知らんが。


 まあ、大量の魔力を有する蜘蛛とかほぼほぼ魔物みたいなものだろう。



「それにしたってよ」


「魔力さえあれば意外とどうにかなるぞ?

 あの決闘中、私の糸も途絶える事は無かったのだ」


「ブレスの方は?」


「そっちはまだだな。普通に精製待ちだ。

 おそらく私の理解が足らんのだろう」


「魔力って本当になんでもありよね」


「研究のし甲斐があるな」


「本当にね。また試したい事が沢山出来たわね」


「うむ。今度こそ鳥の眷属も欲しいしな」


 先住蜘蛛うちのこ達と仲良くしてくれるかしら?



「はやく帰りましょう。

 後のことはジェシー姉様達が処理してくれるそうだし」


「約束を果たしてくれてなによりだ」


 まだ約束の日にはなっていないけど。まあ一区切りはついたからな。融通を利かせてくれたのだろう。



「学園の皆も無事に帰れたのよね?」


「うむ。今しがたユーシャ達とも別れたところだ」


「そう。それは良かったわ」


 私とパティだけは居残りだ。

最後にレティと合流して帰るとしよう。



「エリクちゃ~ん!!」


 レティが駆け寄ってきた。どうやら無事に釈放されたようだ。陛下の恩赦か、ジェシー王女の手回しか、はたまた敵が私達と関わりたくなくて手を引いた影響か。何にせよ、これでもう心配は要らないはずだ。そうでなければ城の中を自由に歩き回っている筈が無い。無い筈なんだけど……。



「逃げるぞ!」


「ええ!」


「ちょっ!? 置いて行かないでくださ~い!!」


 普通に追いついてきた。足速いな。レティ。



「おい! 何だ奴等は!?」


 レティの後から大勢の王宮魔術師達が追いかけてきた。捕まったら絶対碌な事にならないやつだ。彼らからはそんな気迫を感じる。



「魔導の事を聞きたいそうで~す!」


「勘弁してくれ! 飛んで逃げるぞ!」


「城の敷地内は飛行禁止よ!」


 道理で全員走ってきているわけだ。



「ジャンプなら良いな!」


「ダメに決まってるでしょ!

 このまま走るしか無いわ!」


「くそっ! 面倒な!」


「お口が悪いですよ! エリクちゃん!」


「レティのせいだろうが!」


「仕方がなかったんですぅ~~!!」


「いいから走りなさい! 追いつかれるわよ!」


 まったく。次から次へと。

本当にゆっくりしている暇も無いな。

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