02-67.仲良しライバル
「ハハ! 凄えな! 本当に追いついてきやがった!」
「なんだ疑っていたのか!
水臭いな! これだけやりあっておいて!」
「あんた本当に人間じゃねえんだな!
実は神器だったりするのか?」
「よくぞ見破った! んなわけあるか!
私は妖精王だ! そう言っているだろうが!」
「生物の成長速度じゃねえよ! これは!」
「だからと言って無機物扱いは酷いだろうが!
好敵手に向かって!」
「良いねぇ! 良いねぇ!
増々あんたが欲しくなっちまったぜ!」
「横恋慕は男らしくないぞ!
大人しく引き下がれ!」
「せめて略奪愛って言えよ!
あとそういうのダメなんだぞ!
最近厳しいんだからな! 俺も何度も叱られてんだ!」
こっちでもなの?
こんな弱肉強食社会でも?
「と言うかお前も言っていただろうが!
男ならステゴロで来いと!」
「失言だ! 気にすんな!」
そんなんだから叱られるんでしょうに。
「っとっと! やべっ!?」
「もらったぁ!!」
「!? なぁんてなっ!」
「くっ!」
「まだ甘え! もっとだ!
もっと登ってこい!」
「舐めおって!!」
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「やっぱりなんか仲良い」
「そうね。それに思いっきり楽しんでるわね」
「でも凄いわ。本当に迫ってる。この短時間で」
「流石エリクさん」
「先生に追いつけたら私も楽しませられるよね……。
うん! やっぱり頑張ろう!」
「シルヴィーはガッツがアリマ~スネ。ハニーに追イツコ~ナンテ考エルノ、シルヴィーダケデェ~ス」
本当にね。シルヴィーは意外と情熱的だ。
それにすっかりエリクにも懐いてる。
魔力も殆ど流されていないのに
「パァ~ティ~」
「いちいち絡まないで。ロロ先輩」
「ならそんな顔やめなよ。ハッキリ言えばいいじゃん。
エリクもシルヴィーも自分のものだって。
取られたくないなら独占しちゃえばいいんだよ」
「ユーシャには言われたくない」
「確かにユーシャが言えた事じゃないわね。
つい先日だって随分と後悔していたじゃない」
「うるさいよ。二人とも」
ユーシャは素直だ。
隠しきれていないだけでもあるけど。
それも元々の心根が真っ直ぐだからこそだ。
きっと私とは違うのだろう。
「ねえねえ、ユーシャ。
どうしたら私も仲間に加えてくれるの?」
「仲間? 何の?」
「その……こっ恋人の……」
「照れた」
「照れてる」
「照れてるわね」
「うぶ」
「可愛イデェ~ス♪」
「もう! それよりだよ!」
なんで今チラッと私の方見たの?
「難しいよ。シルヴィーの事は好きだけど」
「そっかぁ……」
「一人許したらもう二人加わるものね。
流石に恋人が六人は多すぎるわよね」
自分自身も加えたら七人家族だ。
子供も親も含まない一世代だけなのに。
これも私が陛下の娘だからかしら?
それともエリクの人望?
「エリク、ユーシャ、ディアナ、シルヴィー、レティ、ロロ先輩、スノウ、ミカゲ……八人いない?」
「スノウとミカゲは違うじゃない。
本人達は望むでしょうけど」
「必要ない。私は所有物」
スノウはやたらと拘るわよね。
もしかして人形の意識も残ってる? 今のスノウを構成する要素は単に記憶を失ったフラビアだけでもないのかも?
「本当にソレで良イノデス?」
「いい。けどミカゲは違うかも」
ミカゲは流されやすいから。
少しの魔力でも十分だったのだろう。
エリクを好きになるには。
「でも先生言ってたよ。
パトは浮気者だから時間の問題だって」
「後でシメる」
なんでユーシャが怒ってるの?
「あ! いえ! 今の無し!」
「もう遅い」
「そうね。これはエリクが悪いわ。
私達の事を無視して勝手な事を口にしたんですもの」
「あぅ……ごめんなさい。先生……」
私も気をつけよう。
なんだかんだ似たような事は考えてたし。
私がじゃなくてエリクがだけど。浮気者は。
「でもまあ、エリクの言い分も尤もよね」
「だからって本人の前で言うのは違う」
「ねえ? 私が浮気者っていうのは満場一致なの?」
「「「「……」」」」
「……ごめん」
わかってる。もういい加減。
「パティは欲シガリサンデェ~スネ♪」
「ロロセン。余計な事言わないで」
「私もユーシャと仲良シシタイデェ~ス」
「なら喋らないで」
「ソンナァ!?」
流石にちょっと可愛そうになってきた。沢山お世話になった先輩だもの。せめて私だけは優しくしよう。
「ロロはレティお姉様を見習うべきね」
「レティ先輩とはマダ再会シテマセンネ~」
「レティ大丈夫かしら。
そろそろ暴れているかもしれないわね」
「いっそ全部ひっくり返してくださらないかしら。サロモン様を連れて来てくださればこちらの硬直状態もひっくり返せるんじゃない?」
「無茶はさせられないわ。サロモン様だって余裕は無いはずよ。レティの事はジェシー姉様が察して介入してくれるのに賭けるしかないわね」
「前向きに期待しておきましょう。
エリクがそんな約束をしていたもの」
「心配要らないよ。もうすぐ決着がつくから」
「あら、ユーシャ。どうしてそう思うの?」
「エリクが仕掛ける気なの。なんとなくわかるよ」
ユーシャはまだまだ闘いについては素人なのに。
これはメアリの教育の賜物かしら。
それともエリクの娘だから?
或いは眷属な事と何か関係が? スノウも魔力を引き出せるとか言ってたし。魂を直接繋いでるんだから魔力以外にも流れ込んできていてもおかしくはないだろう。
やっぱり羨ましい。今抱いているこの気持ちをもっと正直に伝えたら眷属にしてくれるのかな? それともやっぱり認めてくれない?
わからないけれど、今は兎に角話がしたい。
エリクと二人きりで思いの丈をぶつけたい。
何故だか無性にそんな気分になってきた。
エリクと騎士団長の楽しげな雰囲気に当てられたのかしら?
それとも単にユーシャに嫉妬しただけかな。
そのどっちもか。私は欲張りだから。




