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02-63.最後のピース

 私には何も出来なかった。ディアナを治療する事も、シルヴィーの才能を開花させる事も、自らが切望する魔導の秘密を解き明かす事さえも。


 私は恵まれている。

人にも機会にも才能にも。


 けれど上には上がいる。

エリクもレティもとっくに私の先を進んでいる。

私の方がずっと前から…………いたのに。


 私なんか誰の役にも立てはしない。

間に合わなかった。お母様の時でさえ。


 何度も何度も何度も失敗してきた。


 私は何時だって必死だったのに。

どんな時だって諦めなかったのに。


 現実は残酷に結果だけを突きつけてきた。

ただ私の力不足が証明されただけだった。


 それでも私は求め続けてきた。

貪欲に。切実に。がむしゃらに。


 何時か私自身の手で誰かを幸せにしたい。

私はただそれだけを望み続けている。


 きっとその誰かに………ほしいから。




----------------------




「オ~。ワタ~シ何か変デスネ~」


 無意識の行動なのだろう。シャーロット嬢は衝動的に私を抱きしめながら、冷静に呟いた。



「悪いが緊急事態でな。勝手で済まないがシャーロット嬢には私の眷属になってもらった」


「ケンゾクゥ?」


「お前はもう私のものだ。裏切る事は許さん」


「オ~! 熱烈デスネ~!

 初対面ナノにソンナ気シナイデ~ス!

 良イデショ~ウ! プロポーズお受ケシマ~ス!」


 そう言えばクシャナの姿で会うのは初めてだったか。

治療したのはスノウを介してだったものな。



「残念だがプロポーズではない。

 シャーロット嬢、いや、ロロは私の所有物となったのだ」


「ソンナのアンマリデ~ス! 責任取ッテクダサ~イ!」


「とにかく話は後だ。言っただろう。今は緊急事態なのだ。問題が片付いたら話し合いの場を設けよう。だが先ずはロロの力を借りたい。全てを曝け出して欲しい。私はお前の事が知りたいのだ。その為に支配下に置いた。責任は取る。お前の生涯を引き受けよう。望む形になるかはわからぬが、放り出したりはしないと約束しよう」


「ヨクワカ~リマセ~ン。

 ソレはプロポーズと違ウノデ~スカ?」


「違うのだ。頼む。今は拘らないでくれ。

 その話は後で必ずすると誓うから」


「ワカリマ~シタ。ダーリン? イエ、ハニーの言ウ事デスカラネ~。飲ミ込ンデアゲマ~ス」


「感謝する。ロロ」


「ソレ~で? 何を知リタイノデ~スカ?」


「ロロを雇っていた者達の事だ。

 そ奴らはかつてのヴァイス王国の関係者か?」


「違イマ~ス。

 アノ国の者達ではアリマセ~ン」


「目的は何だ? 組織としての目標や活動方針くらいは聞いているだろう?」


「ソレは……言エマセン……例~エ、ハニーの頼ミデモ~」


「頼む。必要な事なのだ」


「ムムム。ナルホドデスネ~。

 ソノ為の眷属化。中々卑劣な真似をシマ~スネ」


 よく気付いたな。眷属化の事も私の魔力の中毒性も知らんのに。眷族になる程魔力を注がれた者は私に対して抗いようのない愛しさを感じてしまうらしいからな。自分の変化を客観的に観察したのだろう。



「抗うな。もうお前は逃げられん。その義理堅さは尊敬に値するがな。しかしこのままではパティが危ないのだ。どうか力を貸しておくれ」


「ツクズク卑劣デスネ~。マイハニーは。

 パティの事マデ出サレタラ抗エマセ~ン」


 普通は眷属化だけで抗えないものなのだがな。どうやらロロはスノウやレティ以上に強い心を持っているようだ。



「デスがソレデモ言エマセ~ン。

 ソモソモ~ワタ~シも知リマセ~ンシ~」


 なんだと?



「ワカッテイルのは~神器の回収を目的とシテル事デ~ス。

 イエ、正確に言ウナラ、ソレは手段に過ギマセ~ン。

 真の目的は別にあるハズデ~ス」


 それはカルモナド王国の回収部隊とは違うという意味か?




「ならば何の為にロロが送り込まれてきたのだ?」


「聖女の神器。持ッテマ~スヨネ~?」


「それはタイミングがおかしいだろ。私達がその神器を手にしてからたった数日しか経っていないのだ。あのように大掛かりな潜入作戦を仕込む時間は無かったはずだ」


「ソコマデはナントモ~。

 妖精王の事も神器と見ナシテイタノカモシレマセ~ン」


 急遽ターゲットを変更した?

それともロロには嘘の指令を与えた?


 ダメだ。これ以上の情報は引き出せそうにないな。


 時間もない。一先ず動き出すとしよう。そろそろメアリ達の準備も整っている筈だ。



「ありがとう。ロロ。

 そして済まない。君の気高さを踏みにじった。

 この責任は必ず果たす。どうか私に付いてきておくれ」


「勿論デ~ス♪ ハ~ニ~♪」


 よし。出発だ。



「エリク。また口説いてる」


「私の危機にかこつけてしれっと落としたわね」


「眷属にする事は許したけど恋人はダメよ」


「おい。今更梯子を外すな。

 こうなる事はわかっていただろう」


「加減して」


「中々の手腕だったわ」


「上手くやりなさいと言っているのよ」


 一人裏切り者がいるぞ?



「エリク様。全員が参加を表明しました」


 メアリが呼びに来てくれた。



「そうか。それは何よりだ。

 ならばこの屋敷の守りは放棄しよう。

 全力で乗り込むぞ」


「準備は整っております」


 流石だな。



「私が先陣を務める。

 パティ、シルヴィー、ロロも先頭に加われ。

 ユーシャ、スノウ、ミカゲは殿だ。

 メアリにはディアナとメイド達を任せる」


「ダメよ。私も先頭よ。

 私が言い出しっぺなんだから。

 私には見届ける義務があるわ」


「ならばディアナはパティの補助だ。

 土壇場で怖気づいたら尻を蹴っ飛ばしてやれ」


「まかせて♪」


「なんで私が怖気づくのよ!

 私はビビってなんかいないわよ!」


「「……はぁ」」


「何よそれ!?」


「時間がありません。出発を」


「そうだな。行くぞ皆」


「「「「お~!!」」」」


 返事はちょっと足りないが、皆やる気は十分だな。

よしよし。心強い限りだ。

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