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02-60.繋がり

「ダメだな。レティは動けんぞ」


 爺様共々完全にマークされている。これでは調査どころではないな。爺様の側なら敵ももう少し遠慮してくれるかと思っていたが、どうやらレティどころか爺様も我々の共犯者と目されているようだ。城に着くなり兵達に囲まれて、そのまま一室に押し込められてしまった。



 我々がいったい何の罪を犯したと言うのだろうか。


 いや、罪はいっぱい犯しているだろうけども。それは一旦置いておこう。この状況は陛下との約束でもあるのだから。




 そもそも近衛を捕縛に派遣するってどういう事なの?

近衛って読んで字の如く、王の近くで護衛する人達じゃないの?


 いや、これも置いておこう。今言っても意味はない。この国では最も力を持つ武力集団として認識されているだけなのだろう。陛下だけが動かせる最強戦力なのだろう。



 それより重要なのは、我々が近衛騎士団を警戒している事を敵が把握していた事だ。普通に返事しちゃったけど、あれで魔力壁を突破される可能性があるのだと示してしまったようなものなのだ。


 あれは失敗だった。見せかけだけでも鼻で笑ってやればよかった。そんなものでは魔力壁は破れんと自信満々に言い切ってやればよかった。


 ダメだ。この考えも脇に置こう。後悔しても意味はない。




 何から考えるべきだ。

今の私達に必要なものはなんだ。



 情報だ。何よりも先ず情報だ。

奴らはパティの何を咎めようとしている?



 恐らく私には関係の無い事だ。

私が原因なら問答無用で近衛を派遣しているはずだ。


 けどそうはなっていない。

つまり、私と陛下の約束は未だ有効なのだ。



 ならば他に何がある?


 姫という立場こそあれ、一介の学生に過ぎないパティにどんな罪があるというのだ?


 罪名は国家反逆罪という話だが、その具体的な内容は明らかにされていない。当然今聞いた所で教えてくれるはずもない。


 間違いなく法廷で突きつけられる事になるのだろう。パティをそんな場所に立たせるなんぞ、私には認め難い事だ。


 そもそも引きずり出された時点で詰む可能性だってある。あること無いことふっかけて罪を捏造してくるやもしれん。こちらにまともな弁護人が就くとは限らんのだ。それ以前に弁護してくれそうな者との接触は断たれるのがオチだろう。


 実際レティ達は軟禁状態なのだ。何時でも破れる程度とは言え、今は事を荒立てたくないという判断で、結果的に軟禁を甘んじて受け入れている。これでは敵の思う壺だ。




 敵は何を手札としてくるのだ?


 篭手を分捕った事が問題なのか? 神器に関する魔力電池を所持している事が問題なのか? 陛下からより強力な聖女の杖だって譲渡されたというのに?


 それともシャーロット嬢か? あの娘が我々の手元にある事が問題なのか? やはり我々は嵌められたのか?


 或いはレティに関する問題か? レティ達が共犯者なのではなく、我々がレティの共犯者とされているのか? 爺様もそれに巻き込まれただけなのか?


 もしそうならジェシー王女や第一王子が手を打ってくれるのか? 約束を果たしてくれるのか?



 わからない。


 助けを当てにしてただ待つという選択は難しい。

かと言って、こちらから打てる手立ても見つからない。



 困ったものだ。本当に。



「エリク。じっとしていて良いの?」


「いや……そうだな。パティ達と話をしよう」


 先ずはパティ本人の意見を聞いてみるべきだったな。

心苦しいがやはり起きてもらうしか無いか……。




「ディアナ。少し良いか?」


 スノウの体を借りて問いかけてみた。



「エリクね。どうしたの?」


 やはりこの部屋までは届いていなかったか。



「緊急事態だ。パティが呼び出された」


「誰に?」


「恐らく正式な司法にだ。

 しかもこの件には陛下も関わっているはずだ」


「起こすしか無いわね」


「起きてるわ~」


「あら。寝てなかったの?」


「いいえ。一度は意識を手放したわ。

 けれど何か嫌な予感がしたのよ」


 それでもよく自力で起きれたものだ。よっぽど落ち着かなかったのだろうか。


 とにかく少し魔力を流しておこう。これで楽になるはずだ。



「悪いなパティ。任せろと言っておきながら」


「ううん。エリクのせいじゃないわ。

 それで? どういう状況?」


「それはだな」


 呼び出しの内容と、レティの状況、私が考えた事、それら全てを伝えた。



「……全部繋がっているのよ」


「全部?」


「私の盗まれた研究、篭手に使われた技術、ロロ先輩の諸々、レティとサロモン様の魔導研究、もしかしたら妖精王エリクとこの一連の騒動すらも」



 パティの研究、魔導杖と篭手は確かに関係がある。


 そしてそれは魔導に関する研究でもあるのだから、レティと爺様にも繋げられるだろう。


 しかしシャーロット嬢と私の関係性がわからん。パティには何が見えているのだ?



「今すぐ寮の私の部屋に行きましょう。

 時間が無いわ。ユーシャを貸して」


「待て。落ち着け。既にそこは敵に抑えられている可能性が高いだろう。いくら学園が独立性の高い場所だとはいえ、国の司法まで出てきては逆らえんだろうからな。既に見張りの兵達も居座っているはずだ。パティが行くのは認めんぞ」


「それは……」


「なら私が行く!」


「シルヴィーが? 確かにシルヴィーならば怪しまれんかもしれんが、部屋の中までどうやって辿り着くつもりだ? 見張りがいるかもしれんのだぞ?」


 それに必要なものもわからんだろう。何があればこの状況を打開できるのか、私にも皆目見当がつかんぞ。



「主様。私がサポート致します」


「ミカゲはダメだ。捕まったら全部吐くだろ」


「そんなぁ!?」


 ダメったらダメだ。そんな顔しても。ミカゲは前科があるからな。私やメアリの尋問にボロボロ答えたではないか。



「かと言ってユーシャは行かせられないわ。

 この状況で捕まれば身体検査くらい受けさせられるもの」


 ディアナは反対か。正直私もだ。

とは言え、ユーシャ以外に適任もいないのだよな。

我が眷属で学園に潜入できそうな者など……。



「そもそもパティは何が必要なのだ?

 それとも証拠を隠滅するのか?」


「どちらかと言うなら後者よ。

 けど、逆転の手立てにもなるはずよ」


「それは何だ?」


「魔導の研究資料よ。

 敵に渡れば好き勝手解釈されてしまうわ」


「既に押さえられているのではないのか?」


「きっと大丈夫。今ならまだ。

 本当に大切なものはちゃんと隠してあるもの」


「場所がハッキリしているなら好都合だ。

 パティが直接乗り込む必要は無いな。

 私が行こう。クシャナの体ならば背格好も問題あるまい」


「私が案内するよ! 先生!」


「そうだな。シルヴィーにも手伝ってもらおう」


「……そうね。お願い。エリク。シルヴィー」


「他に取ってきてほしいものはあるか?」


「箱ごと持ってきて。全部入ってるから」


「うむ。任せておけ」

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