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02-56.魔導と魔術

 くっ!! また!!



「ほれほれ。早う次を撃ち込まんか」


 こっの!!!



「まだまだじゃのう」


「お爺ちゃん! 嫌い!!」


「ふぉっふぉっふぉ」


 あの憎ったらしい余裕が崩せない。

もうとっくに手札は使い切っているのに。



 魔力はいくらでもある。だと言うのに一度に取り出せる量には限りがある。これが私の限界だとでも言うかのように。


 実際限界なのだろう。エリクちゃんのように馬鹿げた出力を維持する事なんて出来る筈がない。上には上がいる。魔術も魔導も私なんかでは遠く及ばない。


 そんな事はわかっている。けれどここで折れるわけにはいかない。だって私はパティのお姉ちゃんなんだもの。パティが同じ気持ちなのはわかっている。


 だから示さなきゃ。私達の可能性を。力を。エリクちゃんに手伝ってもらっておいて無様に負けるわけにはいかないのだ。



「なんじゃ? もう終いか?」


 私が攻撃を止めるとお爺ちゃんが問いかけてきた。どうやら向こうから攻撃するつもりは無いらしい。腹は立つけど好都合だ。



「次で決めますよ! お爺ちゃん!」


 自身の正面に魔力壁を構築する。エリクちゃんのものとは比べ物にならないちっぽけな魔力壁だ。屋敷全体を囲うなんてやはり人間に出来る事とは思えない。


 私の御主人様エリクちゃんは特別な存在だ。妖精王という立場は仮のものだと言っていたが、そう名乗れるだけの力は示している。


 少しばかり実戦経験は控えめなようだが、それだって大した問題では無いはずだ。エリクちゃんならすぐに追いつくだろう。きっとこれから先エリクちゃんの前には実力者ばかりが現れるのだから。


 私はまだエリクちゃんの本来の姿は知らない。気にはなるけど暴こうとは思えない。エリクちゃんの側にさえ居られれば今はそれでいい。本当はどんな姿をしていようとも関係ない。……うそ。やっぱ気になる。


 けど今はこっちに集中だ。魔力壁に少しでも多くの魔力を流し込んでいこう。エリクちゃんの魔力は私の魂を介していくらでも湧き上がってくる。その全てを込めるつもりで注ぎ込んでいく。魔力を完全に私の制御下に置くにはこの工程が必要不可欠だ。


 魔術に込められる魔力量は術に応じてある程度決まっている。呪文はイメージの金型となる。すなわち術自体もその金型に沿ったものしか出力できないという事だ。


 差があるのは型いっぱいに魔力を流し込めるかどうか、逆に少ない魔力で術として成立させられるかどうか。そんなところだ。


 だから先ずはその金型を壊さなければならない。無理やり莫大な魔力を流し込んで内側から崩壊させる必要がある。


 エリクちゃんの優しい魔力ではダメだ。私を気遣い、私を癒そうとする魔力では。


 だからエリクちゃんの力とは切り離さなければならない。私の体はもうエリクちゃんのものだ。私の内にあっては支配下から抜け出せないのも道理だろう。


 だからこうして、先ずは魔力壁として体外に放出する必要がある。この魔力壁の魔力ならば、エリクちゃんの支配から脱せるはずだ。私だけの魔力として使える筈だ。私を害する魔力として使える筈なのだ。


 大丈夫。例え私が壊れてもエリクちゃんが直してくれる。だから恐れる必要はない。もっとだ。もっともっと魔力を集めよう。一撃で終わらせる。次で終わらせる。だから沢山沢山集めよう。お爺ちゃんに今度こそ届かせる為に。


 見ていて。お爺ちゃん。パティ。エリクちゃん。

大っきな花火、打ち上げてみせるから。




----------------------




「何ヤラ苛ツイテマ~スネ~。パァ~ティ~?」


「あら。ごめんなさい。

 違うのよ。先輩に対してじゃなくてね」


「分カッテマ~ス。自分のコト不甲斐ナイデスネ~?」


「そう。ふふ♪ やっぱり先輩は凄いわね♪」


「フッフ~ン♪ ナニセパティの先輩デ~スカラネ~♪」


「先輩は変わらないわね」


「ソレが取リ柄デ~ス♪

 何時デモ頼リにシテクダサ~イ♪」


「なら私の相談役に転職してくれる?」


「オ~ノ~……ママナラナイデ~ス……」


「そうね。ごめんなさい。困らせて。

 ちゃんと勝って捕まえることにするわ」


「頑張ッテクダサ~イ♪ 応援シテマ~ス♪」


「ふふ♪ 可笑しい♪ 今は敵対してるのに♪」


「ソレはソレデ~ス♪

 パティの笑顔見レタらハッピィ~デェ~ス♪

 ワタ~シは正直に生キテマ~ス♪ 何時デ~モネ♪」


「そうよね。それはとっても大切な事よね」


「ブツケテ良イデスヨ~」


「折角だけど止めておくわ。

 ぶつけたい相手は決まってるもの」


「オ~♪ モシヤパティ、夢中デスカ?

 ワタ~シヨリ、好キナ人デ~スカ?」


「あはは♪ うん♪

 実はそうなの♪」


「オ~ゥ~。コレは取リ戻サナイとイケマセンネェ~」


「先輩が勝ったらね♪

 その時は全部先輩のものよ♪」


「イエ~ス♪ 燃エてキマァ~シタ~!

 ソウイウ話シナラ遠慮無クイキマァ~ス!」


「あら? 応援してくれるんじゃなかったのかしら?」


「ソレはソレデェ~ス!

 ダブルスタンダードは社会人の常識デェ~ス!」


「それは何か間違ってないかしら?」


「お喋リはオシマイデェ~ス!

 続ケマ~スヨ~♪」


「ええ! そうね!

 スノウ! 待たせたわね!

 やっちゃって!」


「うん!」


 スノウが筒状の魔力壁を生み出した。私が筒の先端に土の魔術で作った岩の弾丸を込め、スノウが筒の手前に炎弾を撃ち込んだ。


 炎弾が魔力壁と反応して爆発を引き起こし、先端に詰められた岩の弾丸が凄まじい勢いで解き放たれる。


 先輩の足元に着弾した弾丸は、敷地内に張り巡らされたエリクの魔力壁と衝突して粉々に砕け散り、無数の細かな岩の欠片となって周囲一帯に襲いかかった。



「ッ!?」


 とっさに岩の壁を生み出したロロ先輩だったが、耐久力がギリギリ足りなかったようだ。岩の壁は崩れ去り、ロロ先輩の剥き出しの素肌に幾つもの傷を作っていく。



「何デス今の!?」


 体中に血を滲ませたロロ先輩が見たこともない魔術に驚いて動きを止めた。すかさずスノウが魔力壁で捕らえようとするも、ロロ先輩はとっさにその場を飛び退いた。


 やっぱりそう簡単にはいかないわよね。


 スノウの魔力壁は構築速度もエリクには遠く及ばない。まあ、これはエリクがおかしいだけだけど。何せあのサロモン様の魔術に後出し出来るんだから。本人は何故か自覚していないようだけど。経験が少なすぎるからかしら?



 魔力壁を用いた散弾はわかっていても避けるのが難しい。特にこんな場所では。ロロ先輩の背後も足元もエリクの魔力壁に囲われている。空に逃げようにも魔力壁の天井まであるのだ。けど致命的な隙やダメージには繋がらなかった。やはりどうにかして完全に動きを止めるしかないようだ。きっと二人がかりなら捕まえられるはずだ。



「二対一はズルイデェ~ス!」


「一対一じゃ先輩には勝てないもの。

 まさかあれも凌がれるとは思わなかったわ」


「オッカナイデェスネ~!

 ビックリシマ~シタ!」


 普通はビックリじゃ済まないんだけどなぁ。流石に命を奪うつもりは無いけど、大怪我くらいは厭わない。エリクが必ず治してくれるから問題ない。ついでにエリクの魔力で染めてもらおう。色々と都合が良いだろうし。



「今度はコッチカライキマ~ス!」


 いけないけいない。今は集中。

私も少しは役に立たないと。

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