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02-52.翁と孫娘

「歓迎するぞ。サロモン殿。良かった。昨晩の騒ぎは既に聞き及んでいるようだな。決断が早くて何よりだ」


 爺様は朝一で屋敷を訪れてくれた。当然私達は両手を上げて歓迎する事にした。魔力壁に穴を空け、屋敷内の応接室まで招き入れた。


 これでまた一つ問題が片付きそうだ。本当に良かった。後半月も悶々とし続けるのは御免だからな。



「痛烈じゃのう。もう少し労ってくれてもよいのじゃぞ?」


「別に嫌味のつもりで言ったのではない。本気で安堵しておるのだよ。これでもまだ様子見を決め込まれてはこちらとしても気が気ではいられんのだ」


 爺様が直接出向いて来てくれねば話しも進まんからな。昨晩の騒ぎで敵対派閥の本気度も伺えたというものだろう。私達が撃退したことで安心だと高を括られて、爺様が再び様子見に徹する可能性もあったのだ。



「それは悪いことをしたのう」


 思ってもいなさそう。これでもだいぶ無茶して出てきたんだろうし。責任を追求されているついでに妨害とかもあるだろうし。そもそも敵対派閥が一つとも限らない。権力を持つという事はそういう事でもあるのだろうし。



「早速だが交渉に移ろうか。私達も概ね方針は決めている。素直に従ってくれるなら良し。それ以外の案を望むならばそれもそれで良し。こちらとしても最善手と思えるのであれば素直に意見を取り入れよう」


「聞かせてもらえるかのう?」


「先ずは私達と決闘をしてもらう。その結果の如何に関わらず、爺様にはレティを連れ帰ってもらう」


「……ふむ」


 要するに手土産はレティとなったわけだ。決闘はあれだ。ポーズとして必要なのだ。どちらが勝つにせよ、レティが帰る事に説得力を持たせられるだけの派手なパフォーマンスを魅せるのだ。理由は各々勝手に推測してくれるだろう。わざわざ爺様が言いふらす必要も無い筈だ。当然これは決闘の内容次第だがな。



 同行後のレティの守りは私が受け持とう。既にレティは眷属化している。どれだけ距離があろうと守り抜く自信はある。


 まあそうは言っても、これは中々危険な賭けではあるのだが。とは言え、レティ本人の希望でもあるからな。昨晩二人で話し合った結果の策なのだ。私も最初は反対していたが、理に適っているのは間違いない。ここは信じて任せてみることにしたのだ。



曾孫レティを守り抜く自信はあるか? 私も手を尽くすが、政治的な部分では貴殿に頼らざるを得ない。本人の身柄さえ手元にあれば貴殿ならばレティの身の潔白を証明する事も出来るのではないかね?」


「……うむ。やり遂げよう」


 そう言ってもらえて何よりだ。


 まあ、かく言う私も本気でレティが潔白だなどと思っているわけじゃない。ただそれが本当に極刑に処される程のものなのか、はたまた上司が庇って済む職務上の瑕疵程度のものなのか。問題はそこだけだ。本人不在で裁かれるのはいただけない。先ずはその状況を打開しよう。その為に爺様には弁護人になってもらおう。



「ならば結構。

 この案に異議はあるか?」


「いいや。わしも似たような提案をするつもりじゃったよ。

 これはレティシアの策じゃな?」


「うむ。その通りだ。仲の良い事で。結構結構」


「ちょっとぉ~? エリクちゃぁ~ん?」


 ガラ悪!?

そんな怒らなくても……。



「それでは早速始めようか。

 幸い見物人はいくらでもいるからな。

 証人には困るまい」


 第三王子の手勢って便利だなぁ~。

MVPは間違いなく奴らだろう。

何か報いてやるべきかもしれん。



「爺に花を持たせてやってはくれんかのう?」


「気弱なことだな。その調子で大丈夫なのか?

 貴殿はこの国最強の魔術師なのだろう?」


「だからこそじゃ。

 これ以上わしの名が落ちれば曾孫も守りきれんじゃろう」


「ならば死ぬ気でもぎ取ってみせよ。後は貴殿の問題だ。

 レティが勝てばレティ本人の価値も上がるというものだ。

 私達にとってはどちらでも構わんのだよ」


「老体にそういうことを言うでない。冗談では済まんぞい」


「元はと言えば貴殿の悪ふざけが原因であろうに。あの場に陛下を連れてこなければ話はまた違っていたのだ」


「同じじゃよ。結果は変わらんじゃろ。

 あれはお主の浅慮が原因なのじゃから」


「知恵者が入れ知恵もせず引っ掻き回しておいてよく言えたものだ」


「ふぉっふぉっふぉ。

 確かにのう。これは一本取られたわい」


 まったく。困った爺様だ。



「む? お主今、"レティが勝てば"と言ったのかのう?」


 ん? え? 反応おっそ!?



「そうですよ! お爺ちゃん!

 お爺ちゃんの相手はこの私です!」


「……まあ良いじゃろう」


 めっちゃ不服そう。


 やはり私が相手をすると思っていたのか?

どうせならと魔導の実験でもするつもりだった?


 それとも単に可愛い曾孫と戦うのが嫌だった?

いやでも普通に試合くらいはしたことあるんだろうしなぁ。



「何も死合えと言っているわけじゃない。

 程々の所で止めるから安心しろ。

 万が一にもレティには傷一つ付けさせはせん」


「お主も手を出すと?」


「うむ。勿論だ。

 先にも言っただろう。

 これは"私達"と貴殿の決闘だ」


「なんじゃ。寄って集って。

 それが若者のすることかのう」


「安心しろ。別に攻撃するわけじゃない。

 レティを守るだけだ。それ以外に干渉はせんよ」


「つまりそれは、このおっかない孫娘がいたいけな爺を一方的にボコるのと同義じゃろうに」


 なんだ幼気な爺って。矛盾しているだろうが。



「安心してください! お爺ちゃん!

 苦しまないように送ってあげますから!」


「おい」


「やですね~♪ そんなおっかない顔しないでください♪

 勿論冗談ですよ~♪」


 ほんと、なんでそんな反抗的なの?

このお爺ちゃん、間違いなくレティの事愛してるよ?



「はぁ……。やはり甘やかしすぎたようじゃのう……」


 お爺ちゃんも流石に呆れちゃってるじゃん。



「よかろう。ハンデは必要じゃしのう」


「っ!!」


 あかん。レティがまたカッとなってる。



「エリクちゃん!」


「ダメだ」


 万が一にも怪我なんぞさせられない。それではこの後の展開にも支障が出る。爺様は無傷でレティを奪還しなければならんのだ。



「大丈夫です。お爺ちゃんなら加減を間違えたりしません」


 調子の良いことで。

やっぱりお爺ちゃん好きなの?

お爺ちゃんっ子なの?


 いや、それは間違いないだろうけど。

ある意味パティ相手の時以上に素直だし。


 そうか。レティの本質は元々こっちなのか。

私やパティ相手だとお姉ちゃんぶろうとするから鳴りを潜めるだけなのか。潜めてたか?



「ならば最初は自分でやってみろ。

 介入するかどうかは状況次第だ」


「はい♪」


 楽しそう。

お爺ちゃんに遊んでもらえるのが嬉しいのかな?

勿論そんな事言わないけど。絶対怒るし。

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