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02-51.薬瓶は嫉妬する

「この篭手はパティの好きにするがいい。

 念の為聖女の神器には近づけないでおくれ」


「ねえ、その聖女の神器って呼び方やめない?

 もうエリクのものなんだし」


 また名付けるの?

パティも好きねぇ~。



「魔導補助機でどうだ?」


「クソダサいわ」


「クソダサです」


 おい。姫がクソクソ言うでない。



「ならば魔力変換器、願望機、魔導兵器、真魔導杖、大飯食らい、聖女の遺産、女神の傍迷惑、」


「ストップ。ねえなんか個人的な不満が込められてない?

 まさか嫉妬でもしてるの?」


「安心してください。エリクちゃん。確かにあの杖の方が出来ることは多いかもしれませんが、お姉ちゃん達はエリクちゃんが大好きです。決して乗り換えたりはしません」


「おい。誰が劣ってるって?

 あの杖は単体では何も出来んではないか」


「もう。レティはそんなこと言ってないでしょ。杖には自前の魔力が無いし成長だってしないわ。そもそも杖自体もエリクの所有物となったのよ。つまりあの杖の力もエリクのものよ。杖の真価を引き出せるのはこの世界でエリクただ一人なんですもの。これ以上に相応しい担い手は存在しないわ」


 途中から主旨がズレてない?

やっぱりパティも杖凄いって思ってるんじゃない?



「そもそも私が使えるのか? 私は人では無いのだぞ?

 魔力を込めたとて、願いを叶えてくれるとは限らんのだ」


 その場合は魔力だけ与えてパティにでも託すしかあるまい。パティならば上手く使いこなしてくれるだろう。



「きっと大丈夫よ。一旦杖の事は忘れましょう」


 まあどのみち今は使えんのだが。



「これはありがたく貰っておくわ。こんなことなら工具くらいは持ち出しておけばよかったわね」


 早速バラすつもりか?

一応預かっているだけって話ではなかったか?



「好きにしろと言っておいてなんだが、まだ大事にしまっておいてはどうだ? 第二王子が私と決闘するならばそれも必要だろう。なんなら魔力も補充しておいてやる」


「それもそうね。まあ、まだ半月あるから兄様なら他の魔力壁を破る手段も引き寄せるかもだけど」


 今のところ唯一私に届き得る存在だからな。篭手を提供した者達も懲りずに託そうとするかもしれん。第二王子が次に動くのはこの騒動の後になってしまったが、こちらから決闘を受けると言った以上、陛下との約束も関係ないしな。むしろ準備期間として有効活用するやもしれん。



「エリクちゃん、もしかして少し乗り気になってます?」


「第二王子との決闘がか?

 まあ随分と気楽なものだろう。

 別に何を賭けるわけでもない。

 この騒動と比べたら可愛いものだ」


「それは油断しすぎよ。

 二兄様をあまり舐めないで」


「そうです。ダメですよエリクちゃん。

 そんなんじゃあっさりやられちゃいますよ。

 二番目のお兄ちゃんは容赦ないんですから」


 評価高いな。ただの脳筋呼ばわりしてたくせに。


 いやまあ、あの男はただ純粋に真っ直ぐで強いのだろう。第一王子には総合力で劣っているが、個としては最も陛下の理想に近いのかもしれん。



「わるかった。気をつけよう。

 正直な話、私も色々と試してみたかったのだ。

 魔力壁だけでなく、私には幾つもの切り札があるのだ。

 それらを試す場として丁度良いのではないかと思ってな」


 折角作ってもらったキメラの肉体には今まで活躍らしい活躍の機会も無かったからな。魔力壁にばかり頼っていてはそれが通用しない相手には無力なのだ。私には経験が必要だ。


 魔力電池なんてものまで出てきたのだ。仮にあれを爺様が複数持ち出してくれば、力ずくで魔力壁を打ち破って乗り込んでくるかもしれない。魔力壁は有象無象の魔術には強いが、物理的に一点突破されれば破れかねんのだ。魔術にだって物理的な破壊力を生み出す術はいくらでもある。爺様ならそこに気がついているはずだ。



 見た所魔力電池一つの魔力がパティの持つ魔力量と同等くらいだ。とは言えこの魔力電池は聖女の杖のように強制的に徴収するわけじゃない。あくまで触れている間魔力を吸い続けるだけだ。百人の魔術師が魔力を込めれば一日で一つ満たせるのだ。王族が関与しているならもっと少人数でも可能なのだ。二つ三つ手に入れている可能性は十分にあるだろう。


 なんだったら爺様も早々に魔力壁の内側へと迎えてやるべきかもしれない。正面からなら手の打ちようはいくらでもあるはずだ。それこそ試す場として相応しいかもしれない。当然爺様の方も油断出来る相手では無いだろうけれど。



「忘れないでください。エリクちゃん。

 お爺ちゃんの相手は私がします」


 レティが?



「やめておけ。

 爺様だってやり辛かろう」


「だからこそ良いんじゃないですか」


 ダメだってば。



「エリク。やらせてあげて」


「パティ? 何故だ?」


「きっと必要な事だと思うの」


 なんだそのフワッとした答えは。



「この国はそういう場所なのよ。

 エリクだってもうわかっているでしょ?」


 独り立ちする為の儀式みたいなものか?



「まあよい。

 しかし最初は話し合いからだぞ。

 いきなり攻撃を仕掛けるのは認めん」


「エリクちゃんは私をなんだと思っているんです?」


「案外と喧嘩っ早いやつだなぁと」


 この国の王族らしいっちゃらしいのかも。

意外とレティも例外ではないようだ。



「エリクちゃんはお姉ちゃんに喧嘩を売っているんですね」


「そんなわけがなかろう。

 今更レティでは私の相手にはならんよ」


 眷属となったレティでは私には歯向かえんのだ。



「むぅ……。なんだか調子に乗ってますねぇ」


「力尽くは感心しないわ」


「勿論そんな事はしないとも。

 精々仲良くしようではないか」


「まあ良いです。

 エリクちゃんに支配されるのはとっても心地良いですし」


「なるほど。確かに眷属化って考えものなのね……」


 ようやくパティにも伝わったか。それは何よりだ。



「今晩はもう何も起こらんだろう。

 そろそろパティは眠りなさい」


「ええ。そうさせてもらうわ。

 おやすみ。また明日。エリク。レティ」


「うむ。おやすみ。パティ」

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