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02-48.油断大敵

「やはり占有化を会得した私の敵ではないな」


「油断はダメですよ。エリクちゃん」


 そうなんだけどさ。


 でもほら。第三王子もどこからか魔術師達を調達してきたけど、てんで役に立ってないし。私の成長という変化を理解出来ていない上司から理不尽に怒鳴り散らされていて可愛そうになってきた。



「だから油断はダメですってば。よく見てください。三番目のお兄ちゃんが連れてきた魔術師達を」


「なんだ? 何があると言うのだ?」


「あれはお爺ちゃんの手の者です」


「なんだと?」


「お爺ちゃんの攻撃は始まっていますよ。

 しっかり観察して備えてください」


「おい。そういう事はもっと早く言え」


「今言ったじゃないですか」


 まったく……。



「爺様は直接出てこんのか」


 困ったなぁ。

さっさと口裏合わせて終わらせてしまいたかったのだが。



「きっとお爺ちゃんは諦めていませんよ」


「魔導の事か?」


「私の事もです」


 全て取り戻すと?

孫娘だけでなく失われた信頼も?



「潔く引退してもらってはどうだ?」


「お爺ちゃんだけならばそれも或いは。

 国への貢献度が尋常じゃありませんから。

 多少のお目溢しは頂けるでしょう」


 パティだけでなくジェシー王女までもが様付けで呼ぶだけの事はあるようだな。やはりただのスケベ爺ではないようだ。



「要するにレティの事が心配なわけだな」


「……そんな部分も無くはないでしょう」


 子供かっ!


 レティは我々の中では年長者枠なのだがな。

ミカゲの方が若干年上だが……。どいつもこいつも……。


 まあ言っても仕方あるまい。

生暖かく見守ってやるとしよう。



「一度帰るか? 奴らが魔力壁への対抗手段を持たない今ならチャンスだぞ?」


「エリクちゃんが守ってくれるのですか?」


「そう言っておろう。

 爺様に元気な姿を見せてやれ」


「……少し考えさせてください」


「そうだな。そうしてみるがいい」


 さして時間は無いだろうが、私が守ると言ったって危険はあるからな。魔力壁があろうと何らかの手段で拘束されてしまえば、こちらも手出しが出来なくなるのだ。それに他にもやりようはある。例えば一帯の酸素を奪うとかな。レティを傷つけたくない爺様がそこまでするとも思えんが、可能性くらいは考慮するべきだ。



「第二王子が顔を出さんのも気になるな」


「ええ。そうで……いえ。噂をすればですね」


「現れたか。何か策でも練ってきたのだろうか」


 あれ? なんかシルエットおかしくない?

まだ随分と距離があるけど……。



「どうでしょう。二番目のお兄ちゃんにそんな頭があるとは思えませんが」


 失礼過ぎない?

もしかしてレティ、脳筋はお嫌い?



「まて! なんだあれは!?」


「篭手ですね。とんでもない魔力量ですが」


 篭手!? なんか違くないあれ!?

右腕だけだけど肘まで覆われてるよ!?

ぶっとい杭みたいなの付いてるよ!?

パイルバンカー的なやつじゃない!?



「また神器か!?」


「それしかあり得ませんが……いったい誰が?」


「爺様じゃないのか?」


「お爺ちゃんは別に管理者ではありませんから」


「ならば陛下が?」


「お爺ちゃんを蹴落としたい誰かかもしれません」


 厄介な……。

ここにきて新たな勢力が加わったか……。


 つまり爺様より先に第二王子に突破させるつもりか。それもわざわざ神器を貸し出してまで。今となっては陛下に睨まれる可能性だってあるだろうに。


 第二王子がレティを連れ戻せたなら、爺様は部下の尻拭いも出来ないと叩かれるのだろう。曾孫可愛さに好き勝手させていた問題もある。爺様本人が功績に免じて罪に問われる事はなくとも、レティの身柄さえ確保すれば爺様に圧力をかけられるかもしれない。


 逆に爺様が先にレティを確保したなら、レティの罪を問う隙も無くなってしまうかもしれない。少なくとも爺様はレティを守ろうとするだろう。



 要するに一部の者達にとっては、この騒動の目的が妖精王からレティシア姫の争奪戦に切り替わったのだ。爺様に対する人質にするなり、爺様の庇護下に組み込まれるのを回避したり、目的は様々なのだろう。



「こんな事を陛下は許すのか?」


「どうでしょう。そこは断言できませんね。

 事態は随分とややこしくなっていますから」


 なんだかんだと面白がっているのかもな。第一王子達の目論見を阻止した私なら乗り越えられるだろうとほくそ笑んでいるのやも。



「第三王子と爺様、第二王子と神器管理者。そして私達。

 奪い合うのは妖精王わたし第十三王女レティシアの身柄。

 要約するとこんなところだろうか」


 その他有象無象もいるけど、今のところ大した脅威にはなり得ないようだし。



「冒険者の助っ人もお忘れなく」


「既に何人か来ているぞ。

 どいつもこいつも言うほどでは無いが」


「エリクちゃんの魔力壁がインチキ過ぎるのです。

 彼らだってそれなりに名の知れた者達です」


「レティはそんな事まで知っているのか?」


「パティの在るところお姉ちゃん在りです」


 は? え? ギルドカード? しかもSランク!?



「そこまでするかぁ?」


「大した手間ではありませんでしたよ。この程度」


「そうは言っても何年かかかるだろうに」


 よく続いたな。そこまで。



「いえ。本当に大した手間はかけていませんよ。

 やりようはいくらでもあるのです」


 そういう事?

インチキしたの? 王族特権?



「そんな目で見ないでください。

 私は冒険者になるのが目的ではないんですから」


 それはそう。あくまでパティの為の事前調査と必要なら露払いがしたかっただけだろうし。なんならパティにも伝えてないんだろうし。



「それより、二番目のお兄ちゃんが」


「「!?」」


 突如、レティの言葉を遮るようにして、ズシンと腹の底に響くような衝撃が走り抜けた。



「今のは!?」


 揺れた!? 魔力壁が!?



「あの篭手です!

 まるで魔力が爆発しているみたいです!」


 やっぱりパイルバンカーじゃん!

と言うか呑気に話してる場合じゃなかった!

魔力壁の補強を急がねば!

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