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02-46.報連相

「というわけだ」


「ぷんぷんです! ジェシーちゃん酷いです!

 まさか聖女の神器を隠してたなんて!」


「仕方がないわ。

 ジェシー姉様と神器の話なんてしたことないもの。

 姉様だって私には話せなかったのよ」


 だろうな。むしろこの件に関してはレティの口が軽いことの方が問題であろう。パティ自身を守る為にもな。この国では神器になんぞ関わっても碌な事にはならんのだ。私が言うのだから間違いない。


 まあ、ジェシー王女は私が神器について知っている前提で話をしてきたし、パティが聖女の神器を求めていた事自体は把握していたのだろうけど。


 とは言えその神器を起動する手段も無かったのだからやはり仕方があるまい。仮に渡しても、パティなら無茶して自分の魔力を全部注ぎ込んでしまいかねんし。やはりパティの為にも言えなかったのだろう。こうして渡してきたのはその辺りの事情もあるのやもしれん。



「そんな事よりもだ。

 レティ。お前はいったい何をしたんだ?」


「何の話ですか?

 エリクちゃん、まさかお姉ちゃんを疑ってるんですか?」


「普通は仕事を無断欠勤したくらいで指名手配なんぞされんのだ」


「だから言ったじゃないですか。

 私をお爺ちゃんのスパイにしておくべきだったと」


「おい。真面目に答えろ」


「流石に指名手配はされていないのでは?

 単に当局が私の罪を知ったというだけですよね?」


「だからその罪状を聞いておるのだ。

 何が一番の原因だ? 心当たりはあるのだろう?」


「全て話した通りです。

 それ以上の事はしていません」


「……そう言うなら信じるがな」


「ありがとうございます♪ エリクちゃん♪」


「レティお姉様が……。

 パティどうにかしてあげられる?」


「無理よ。私には。

 ジェシー姉様がなんでもしてくれると言ったのでしょ?

 きっと大丈夫よ。レティの事も助けてくれるわ」


 なるほど。それも込みなのか。



「そもそも今のパト達の方がよっぽどじゃない?」


「人ごとみたいに言ってるけどシルヴィーもだからね?」


「国家反逆罪……外患誘致……」


「元気出して。シルヴィー。

 大丈夫だよ。私が守るから」


「ありがとぉ~。ユーシャぁ~」


 あかん。忘れてた。

なんかシルビアまで普通に混ざってた。

神器の事は内緒だったのに。



「ディアナ。悪いが治療はもう少し待ってくれ。この騒動が終わるまで魔力壁を途絶えさせるわけにはいかんのだ。万が一が無いとも限らないからな」


「問題ないわ。今も元気いっぱいだもの」


 まあ私の魔力でも病の進行は止まるからな。

本人の自覚としても絶好調ではあるのだろう。


 とは言えやはり完治にはこの杖の力も必要だろう。


 この杖は案外便利かもしれん。私の魔力には中毒性があるのだ。この杖を介する事で治療時に直接私の魔力を流す必要は無くなるのだ。ただコスパが悪いだけのお荷物でもなさそうだ。



「だがやはり嵩張るな。

 もう少し小さくならんもんだろうか」


「願ってみたら?」


 え? 良いの? そういう事も出来ちゃう?



「その程度なら魔力も大して要らないんじゃない?」


「試さんぞ。気になるのはわかるがな。先にも言った通りだ。まだ魔力壁を切らすわけにはいかん」


「パティは良いじゃない。自分だけもう見てるんだし」


 ディアナが不貞腐れ気味に呟いた。



「そうだよ。私達止めたのに。

 パティ一人で行っちゃったじゃん」


 ユーシャまで続く。

どうやら先程の不満を思い出したようだ。


 パティのやつ、心配する皆の制止を振り切って飛び出してきたようだ。よく皆は続かないでいてくれた。流石に全員構っている余裕は無かったからな。本当に助かったぞ。



「二度と無茶をするでないぞ」


「エリクには言われたくない!!」


「今のはエリクが悪いわね」


「ダメだよ。エリク。

 もっとパティの気持ちも考えてよ」


 なんでさぁ~。



「クシャナは何も言わないの?」


「? ああ。私か」


「え?」


「いや。気にするな。

 クシャナは無口なのだ。

 スノウと似たようなものだ」


「そっかぁ……」


 面倒だな。

いっそシルビアにも私の体の事を話してしまうべきか?

どうせ神器の事だって知られてしまったのだし。


 いやでも、シルビアはまだ家族に加わったわけでもないのだよなぁ。一つバレたからって全部話して良いわけでもないよなぁ。



 でもどうせパティはシルビアを仲間に加えたいのだろう。ならいっそ私からそう動いてやるのもやぶさかでもない。


 ユーシャ達が怒らないようゆっくりと進めればいいのだ。いきなり加えたとか言うから怒られるだけなのだ。ちゃんと外堀を埋めてからなら案外反対する事も無いのではなかろうか。なにせユーシャは元々シルビア大好きだし、ディアナも既に仲良しだ。たった一週間やそこらの共同生活で随分と馴染んでいるのだ。こうして重要な作戦会議に紛れ込むくらいには。



「すまん。シルビア。

 私は嘘を付いていた」


「え?」


「クシャナは私の偽名だ。

 この世に存在しない人物だ。

 この体は人間のものではない」


「え? え?」


「まあそういう事だ。

 突然すまんな。シルヴィー」


「えぇ~……」


 こちらももう少し回り道して伝えるべきだったな。

いきなり過ぎてシルビアが戸惑ってしまった。



「エリク、シルヴィーに歩み寄る事にしたの?」


 おや? ユーシャが嬉しそう?



「うむ。神器の事も聞かせてしまったしな。

 毒を喰らわば皿までだ」


「そっか」


 私を問い詰める事もなく笑みを浮かべるユーシャ。これはどういう感情なのだろうか。まさか私の目論見を正確に察しているわけでもないだろうし……。



「いっそ奴隷にしてはどうですか?」


「いきなり何の話だ? レティ?

 まさかシルヴィーの事を言っているのか?」


「えっ!?」


「違いますよ。そんなわけないじゃないですか。

 私の話ですよ。私の」


「それよ! 名案よ! レティ!

 奴隷落ちすれば罪を問われる事はなくなるわ!」


「おい。ダメだろそれは。罪状も聞かずにそのような横紙破りなんぞ出来るものか。理不尽な理由ならともかく真に必要ならば罪を償わせるべきだ」


「やっぱり信じてないじゃないですかぁ!」


「それはそれだ」


「私もエリクに同感よ。

 お父様にだって迷惑をかけかねないわ」


「約束の事も忘れないで。逃げたらダメだよ」


「はい……ごめんなさい……」


「むぅ~……皆良い子達すぎです……」


 まったく。この姫姉妹は。


 パティの望む事は何でもと言っても、流石に限度もあるのだ。かと言ってレティを手放すつもりもない。だから他の方法を考えねばな。私達にも何か協力出来るかもしれんし。



 諸々考えるならば、やはり一度爺様とも話しておきたいところだな。近い内に乗り込んできてくれると都合が良いのだが。

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