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02-35.脅威度と偽装身分

「第二王子の方はどうだ?

 いっそこちらも早めに負かしておくか?

 潔く諦めたりせんだろうか」


「しないわね」


「しませんね」


 さようで。



「ならば都度返り討ちにし続けるしかないわけだな」


「けど安心して。

 二兄様は他の人が挑戦中なら待っててくれるから」


 そうなの?

第三王子の事はどかしてたよ?

まあ、あれは屯ってただけで挑戦中とは言えんだろうが。


 一応、第一王子との面談中は大人しくしていたな。

あれは魔力切れではなくて、律儀に順番待ちしていたという事なのだろうか。結局その後も何もしないで帰っていったけど。まあ、魔力壁の突破方法も思いつかなかったのだろう。



「とにかく陛下の手勢と共に挑んでくる事は無いわけだな。それは何よりだ。ならば一旦脇に置こう。どの道対策は私が強くなる事以外にはあるまいし」


「それで良いと思います」


 レティのお墨付きも出たな。

ならば次に行こう。



「第一王子の派閥はどうだ?

 次は何を仕掛けてくると思う?」


「正直わからないわ。

 そういう意味でも一番厄介なのは間違いなく一兄様達よ」


「そうですね。私も同意見です。陛下を除けば最も強い影響力を持つ勢力です。当人達自身の戦闘力は決して高いものではありませんが、政治力がずば抜けています」


 人脈が太いわけか。結界を破れる戦力や知恵者を他所から連れてこれる可能性もあるわけだな。おそらく勢力自体の物量も相当なものなのだろう。確かに脅威度は高いな。知恵ある者達が人海戦術で挑んでくれば容易く私の魔力壁は破れるのだ。


 爺様が第一王子の派閥と手を組んだら最悪だ。現状爺様本人が手を出す理由は無いが、知識を提供すれば勝手に突破してくれるのだ。当然、爺様もそれは理解しているだろう。



「爺様がレティの考えを読んでいる可能性は? 自身が追い詰められる前に先手を打って、第一王子の派閥に入れ知恵する事はあり得るのか?」


「間違いなく読んでいますよ。ですが一番目のお兄ちゃんを利用する可能性は低いです。やるなら自分の手勢で試したいはずです。昨日も言った通り、お爺ちゃんにとっても絶好の機会ですから」


 なるほどな。当然レティ以外にも部下くらいいるものな。それに第一王子に任せてしまえば、爺様が好きに手を出せる機会も失われてしまう可能性があるのだろう。ジェシー王女が確実にパティを保護する為に爺様を止めようと動く事も考えられる。


 更に言うなら、こちらの誘い出す為の策が爺様にとっても都合の良い口実になるわけだ。まあだからこそ確実に釣り出せるとも言えるのだが。



「ちなみにそれは第一王子に限った話か?

 第三王子ならば利用する可能性もあるのか?」


「ええ。その可能性は高いです。一番目のお兄ちゃん達を利用しようとすれば借りを作る事になりますから。その点、三番目のお兄ちゃん達なら心配も要りませんからね。先んじて幾つかの実験はさせるでしょう」


 自分の手勢に傷はつけたくないものな。魔力壁に仕込まれた罠を見極めるくらいはするだろう。当然向こうも、私の力が魔力壁だけだとは思っていないのだろうし。



「他に奴らが組む可能性はあるか?」


「第三派閥が他の兄様姉様と手を組む可能性はあるわ。というより、実態としては一方的に利用されるだけなんだけど。奴ら数だけはいるから。雑にぶつけるには丁度良いのよ」


「昨晩の梯子のような策だな。他にも滑車の付いたデカい丸太みたいなやつまで持ち出して来ていたぞ」


「破城槌ね。まあ順当なところね」


「エリクちゃんはインチキです。

 魔力壁の硬度も射程も想定とは大きく乖離しています。

 これではあまり参考にはならないかもしれません」


「そうなのよ。あんなの人間業じゃないわ」


 確かに認知範囲は異常なのだろう。

流石にそこは私も自覚している。



「何せ妖精王だからな。

 人間に真似できる程度なわけがあるまい」


「その話はどこまで本当なのですか?」


「あら?

 エリク、レティに話してないの?」


「ユーシャちゃんが本体を守っていると言う話しだけは聞いています」


「それで一先ずは十分か。

 レティ、悪いけどその辺の話は騒動が終わってからね」


「それで構いません。

 用心してください。例えお姉ちゃん相手でも。

 とは言え、公にして良い情報は先に教えてください。

 そこでボロが出てもいけませんから」


「後で私から説明するわ」


 何時もの妖精族設定だな。

細かい話はパティに任せてしまおう。



「私は妖精王だ。

 一先ず今はその前提で話を進めよう」


「承知しました。

 ついでに一つ提案です。エリクちゃんの体についてです。

 その娘にも仮の身分を用意しておきましょう」


「そうね。必要よね。

 私も失念していたわ」


 まあそうだな。魔物のキメラなんて公に出来ないものな。それにパティが第一王子達の前で口走ったから、エリクは妖精王の名として伝わってしまった筈だ。


 あれ? と言うかあれか? もしかして第一王子とジェシー王女は妖精王としての私を男性だと思っているのか? そう言えばパティとの結婚話にも特段反対はされなかったぞ?


 エリクという名も、一般的には男性のものだ。

下手をすると、少女の肉体ばかり好んで乗り移る危ない奴とか思われてない?


 まあ、まだ会ったのは一回だけだものな。あの時は単にパティの側付きのメイドを利用しただけと考えるのが妥当か。私の趣味で選んだのではなく。きっと彼らはそう考えたはずだ。だって特に文句は言ってこなかったし。可愛い妹分が誑かされている事自体には不満も無いようだったし。それなりに私の事も認めてくれていたのだろう。きっとたぶん。



 まあ、何にせよだ。

この体の名前を用意しておくのは名案だ。私の仮の身分にも使えるしな。妖精王エリクの名が広まってしまった以上、何れは偽名も必要になるだろう。



「取り敢えず"ギンカ"で良いのか?」


「う~ん……」


 パティが悩んでいる。

私の前世の名は響きがこの国にそぐわないだろうか。


 あまり目立つべきではないからな。

よくある名前にしておくのが無難かもしれん。



「まあいっか。

 ミカゲとかもあまり聞かない名前だものね」


「ダメ。他のにして」


「ユーシャ?」


 なんでさ?



「クリュスって名乗って良いよ」


 いかんじゃろ……。


 まあ、ユーシャの言いたい事はわかったぞ。

自分と似た名前を付けてほしいのだろう。



「ならば"クシル"だ。

 この体にはそう名付けよう」


 エリクサーはエリクシルとも言うからね。



「……ダメ。"クシャル"にして」


 竜巻操れそう。


 というか、なんかユーシャの娘みたいになるな。

クリュスとユーシャが混ざってるし。ルは無いけど。



「わかったわかった。

 クシャルだな。パティもそれで良いか?」


「それもあんまり聞かない名前だけど。まあいいわ」


「クシャナにしない?」


 おい、ディアナ。折角纏まりかけたのに。



「おっけ」


 何故ユーシャが承認するのだ……。



「ずるいわ! それなら私も混ぜてよ!

 私には名付ける権利があるはずよ!」


「お姉ちゃんも混ざりたいです!」


「主! ギンカが宜しいかと!」


「だぁ~!!! もう! クシャナで決定だ!

 パティは名字を考えろ! レティとミカゲは却下だ!

 以上! おしまい!」

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