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炎の令嬢と氷の御曹司  作者: 青井亜仁
炎の王国
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落として、落として、落とす

 皇帝宮騎士団インペラフォルティスエクストゥルマが駐屯する国境付近へ進軍してみれば、1大隊を背後に神編術師たちが悲壮な表情で結界の解除を試みていた。

 前回は相当な時間をかけて解除していたけれど、今回の術師は手際が良さそうで思ったより早く解除されそうな勢いだ。

 あの皇帝宮騎士団、神編術師を護衛していると思ったのに、だらしなく嫌らしい表情を見ると、監視しているの間違いかもしれない。


 彼らの予想するより早く到着できたようで、驚いているようにも見える。皇帝宮騎士団たちはこちらに到着したばかりで、兵の編成と結界排除を同時に行っているってとこか。



「効率的なのかもしれないが、先に結界が無くなれば神編術師が危険だというのに同時進行するなど… 本当に帝国は術師を軽んじているのですね」



 私の隣に居るプーリウス騎士団エクストゥルマのルウィア団長が、呆れたようにこぼしている。



「解除直前を維持して、皇帝宮騎士団を待てばいいと思っているのでしょう。それがどれだけ術師たちに負担を与えるかなんて、全く考慮されていなさそうですね。彼らが居なければ我が国に攻め込むことさえ出来ないのに、何を考えているのかしら」


「何も考えていないのかもしれませんね。巫女リーシェンたる貴方を見て焦っているのは神編術師だけですよ」



 二人して苦笑していると、王国軍全部が配置についたと連絡が入った。

 やはりどの場所でも兵士を背後に神編術師が結界の解除をしているそうだ。



「ガウディム、全軍に伝えてちょうだい」


「了解です。いつでもどうぞ」



 全軍への通信を任せると指示されているガウディムから、間をおかずに返答がきた。よしよし、良い反応。



「我がフランマテルム王国の頼もしき騎士たち。分かっているとは思うけれど神編術師は怪我させてはいけないわ。彼らの背後に醜い顔で控える奴らとその援軍は、殴って切って焼いて刺して落として…… 我らの持てる力で蹂躙する!」



 耳からの『応!』という声と、ガウディムの通信で頭に響く全国からの『応!』という声が重なる。



「こちらから結界を解除する。全力でもって戦え!!」



 決めてあった結界解除の言葉を吐き出すと同時に、国境の結界を解除する。

 準備する時間はたくさんあったから、前回の戦闘から数日後には神殿や王宮の術師が張った結界に干渉して、結界の主導権は取っておいたんだ。

 もちろん、王太子殿下の許可を貰ってあるから、反逆だとか言わせないもんね。




───────────




 野太い男どもの気合いを入れる声や雄叫びの中に、剣の交わる高い金属音や発火する音が混じる。

 天馬(カエルクス)は結構な高度を駆けており空気も澄んでいたのに、戦闘が始まったらすぐに空気が淀んでしまった。

 いやぁ、飛び散る血しぶきで今回も空が赤いわ。至る所で使われる術で、灰だの煤だのが漂っているし、空気が悪いったらない。

 

 こちらから攻めて出ると予想していなかった様で、皇帝直属の精鋭のはずなのに緊張感のない態度の兵ばかり。なぜ攻撃に出ないのかと巫覡(ディンガー)に迫り『愛し子は自発的に殺意を抱くと寵愛が無くなる』という巫覡側の情報を得て、油断していたのだろうけれど。

 彼らが得た情報って『巫覡は』と前置きが付くのであって、護る側の私たちには当てはまらない上に、こちらだって条件が複雑すぎて私も全ては理解できていない。


 だから戦い方によってどうなるかを母なる女神に問い、お答えを頂いてから行動するって状態でヒヤヒヤしてるのに。なんで、あちらはああも余裕があるんだろう。


 こちら有利な力場として国境一帯を整えたし、私は帝国の愛し子だって何人も殺しているというのに。皇帝ゲマドロースが自分を過信して楽観視しているのか、そもそもの巫女(わたし)の情報が彼の所に上がっていないのか。

 だとしたら、小競り合いの詳細やイーたち内通者からの有益な情報は、誰が握り潰してるの?




 本当に精鋭なのかと思う位に脆い大隊を屠り尽くそうとする頃、やっと増援が到着。

 慌てて隊を編成して各戦場へと送り込んだらしく、あちこちから増援と接敵との報告が届く。どこもこちらが有利なようで、被害は少なくてほっとする。



「団長、副団長が巫覡と皇帝宮騎士団大隊の混成隊と接触しました!」


「こちらの皇帝宮騎士団が脆いと思ったら、巫覡の監視のために大部分をあちらに宛てていたのですね。先ほど到着した増援は皇帝宮騎士団ではなく、ただの守護衛士兵団デフォブセッシミーレスですもの。副団長と副隊長、大丈夫かしら」



 通信に集中するガウディムを守るクリュセラが小兄さま一行を心配する。

 どうせ巫覡とは派手な激闘を演じてみせなくちゃいけないのだから予定を早めて、ここはルウィア団長に任せて小兄さまの所へ行こう。



「ペンギテース、クリュセラ、オクルス、スペイフィキィスは私と共に来なさい。グラテアンの騎士はクアンドに任せる、ルウィア団長の指示に従う事。ルウィア団長、ここはお任せします」



 炎をまとった拳で敵を殴り皇帝宮騎士を天馬から落下させたクアンドが黙って手を挙げ、名指しされたルウィア団長は敵を天馬から切り落とした後、ものすごくいい笑顔で応えてくれる。



「お任せください、巫女姫。一人残らず殲滅してみせましょう!」



 ルウィア団長の頼もしい返事の直後に、クアンドの激が飛ぶ。



「落として、落として、落とすぞぉ!!」


「うへぇ。クアンド中隊長、気合入ってるっスねぇ~。俺、団長のお供で巫覡と対面するの怖かったスけど、残留組じゃなくて良かったかも」



 嫌そうな顔をしてスペイフィキィスが言うけれど、それはどうかな。



「私と行ってもあまり変わらないと思うよ」


「どちらも限界まで動けって状況になるのが目に見えてますもんね。俺はフリーギ中隊長の方に行きたいかも」



 私に続いてオクルスが呟くと「いや、あっちも黙って殴れって視線で指示されるっスよ? あんま変わらなくね?」とげんなりしていた。



「まあ、どこに行っても限界まで戦うことに違いはないわ。頑張ろう」



 と慰めれば、ペンギテースに頭をなでられていた二人は、嫌そうに小さく「頑張りまーす」と答えた。

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