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炎の令嬢と氷の御曹司  作者: 青井亜仁
炎の巫女
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まだ光ってる

「クリュセラ、全然変わってないね。大変だったでしょ…、一緒に闘えなくてごめんね」


「一緒じゃなくて良かったわよ。みんな国境付近で闘って、結界を起動する頃には全員ズタボロだったんだから」


「でも、団長だけは無事だったんじゃないの?」



 ラクリーマは自分の首に回された腕を確かめるように掴みながら、クリュセラを見上げる。そして微妙な表情をする彼女を見て、ふたりで巫女リーシェンへと顔を向けた。

 ふたりに見つめられた巫女は肩をすくめて気まずそうに苦笑いで答える。



「グラテアンの皆、例外なくズタボロになったわ。私とイヴとクリュセラはあちこち穴が空いたわねぇ。スキエンテとペンギテースは?」



「俺は左腕肘から先が飛んで、首に矢が刺さりましたよ。もう少し矢が上の方を貫いてたら、結界起動まで間に合わなかったかもです。フリーギ中隊長は俺の手を飛ばした守護衛士兵団デフォブセッシミーレスの小隊長を起動と同時に結界際に押しやって、相手を真っ二つにしてました。ご自分も腹に穴が空いて右腕が動かなかったっていうのに…」



 黙して語らないスキエンテの分まで説明するペンギテース。

 けどさ、内容が壮絶すぎんか。何でそんな平然とした顔で言うの?



「上手くやったわよね。母なる女神は起動のために命を捧げた私たちを幼子まで復活させてくださったのだけど、スキエンテと同じ事したサクスムは起動前に事切れてしまって、間に合わなかったそうなの」


「そんな…」


「それに、復活を拒んだ愛し子も居たの。ラグドゥスとサレマレフィ、アルガリータ、プルクラナは満足する人生だったから、次の人生を望みたいって」


「そうなんですね。アルガリータ先輩、恋人を亡くされて落ち込んでらしたから。恋人を追っていきたかったのかもしれませんね」


「なるほど、そういうことか! 走って行きそうな勢いだったそうだから、きっとラクリーマが正解だわ」



「そう言えば、なぜテネブラ中隊長がいらっしゃるんです?」



「テネブラ中隊長、スペイフィキィスに変装してたんですって」


「えっ?」



 腑に落ちた、と笑う巫女の後ろの人物に気がついたのかラクリーマが目を大きく開いて言い、今度はクリュセラが苦笑して答えた。

 クリュセラの返答に驚いて固まるラクリーマに、イヴが穏やかに笑って答える。



「貴方がたに簡単にバレる変装じゃ意味がないでしょう? おかげで裏切り者を炙り出せたのだし、新人になりきった私を褒めるところですよ」


「すっっごく上手な変装と演技でした! 全っ然わからなかったですよぉ…」



 涙を流して笑うラクリーマに事情を聞くため、クリュセラとスキエンテ達を残して、俺たちは王宮へ向かうことになった。

 天馬カエルクスに騎乗し王宮へと駆ける最中、我が巫覡ディンガーが巫女へ問いかけた。



「姉上、先に王弟アルドールとプロキシルム公子の軟禁先へ行かなくて良いのですか?」


「アルドール第二王子殿下、じゃないな。カリドゥース王太子殿下が国王になられたから、もうレクステルム家から籍を抜かれて、アルドール・ロキシ・コンセルヴァティオ公爵かな? ソノルース殿下と共に王宮へ来ていただく様にお願いしておいたの」


「ふむ、話が早くなりますね」


「でしょ。それに王国を救ったメトゥスの方が上の立場なんだし、メトゥスをアルドール殿下のところに出向かせるのは違う気がして」



 そうだよね、我が巫覡が巫女の側を離れるなんてあり得ない。巫女が離宮に出向くなら当然、我が巫覡もご一緒するだろう。巫女はそんな状態が良くないと言っているのだが、『それが何か?』みたいに首を傾げる我が巫覡はご理解してない様子だ。

 俺を見た巫女に、満面の笑みで首を横に振っておいた。

 睨まないでください。巫女が言って聞かないなら、俺にだってアラネオにだって、じー様にでも無理ですって。


 フラエティア神殿には入らなかったじー様は、王宮には同行するつもりのようだ。じっ様を横に従えて、にっこにこ笑って我が巫覡と巫女のやりとりを見ている。疲れを見せない姿勢の良さで天馬と駆ける姿は、とても老人のものじゃない。見栄とか意地とかじゃなくて、本当に疲労している様に見えない。

 戦闘後はヘロヘロになってた気がすんだが、我が巫覡や巫女並みの回復力を持ってるんだろうか。俺、興奮して元気ではあるが疲労感もあるんだけど。元気だな、この爺たち。



 爺どもの状態が解せぬ、と悩んでいるうちに王宮に到着していた。気がつけば王が客を見下ろす謁見の間ではなく、神殿でおっさん達が跪いていた広間よりちょっとだけ豪華な広間に居た。


 先頭をフィダが歩き、我が巫覡が続く。半歩ほど距離を置いて右後ろに巫女が、更に半歩距離を空け我が巫覡の側に俺、巫女の側にイヴが付く。



 広間最奥の先頭に、薄い金髪に明るい茶色の瞳の男性が立っていた。落ち着いた色彩で質の良さそうな装いをしている彼は、フランマテルム国王カリドゥース・フィリゥレギス・レクステルムだろう。 

 彼の後方両脇に立っているのは、よく見ると整った容姿で痩身の男性と、キラキラと目を輝かせてにこにこと笑う細身だががっちりとした男性。どちらも初老に入ったあたりだろうか。

 にこにこと笑う男性は、巫女を見ると更に笑みを深めた。なんか、仕草が可愛らしい? じーさんに片足を突っ込んだ年齢の男性に、可愛らしいってどうよ?



「うわ、まだ光ってる。ほんと、アルドール殿下の光量ってどうなってんの」



 言われてみれば、巫女の見ている方向が明るい気がする。あのキラキラお目々のにこにこしたおっさんの方。と、おっさんより更に右を見ると、なんか眩しい?

 目がキラキラしてたのは興奮とか期待とかいった感情からくるもんばっかじゃなく、あの光のせいとか?

 というか巫女サマ、『アルドール殿下の光量』とか言ってなかったっけ。ぼんやり考えながら光をよく見ると、光の真ん中に誰か居る。


 金髪に黄色い瞳…どっかで見たことあるぞ、あの人物。って、フォッサイスの上に降ってきた光る金色の塊! 眩しかったあの人物だ。確かに、記憶を辿ってみればあの時も眩しかったな、と思う。巫女の言う通り光ってるみたいで、今も眩しいわ。



 いや、人間が光るってどゆこと?



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