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我麗しのお嬢様

 




 自室のベッドに腰をかけ、気付くとため息が知らぬ間に出ていた。

 お嬢様と主人公がエンカウントしたり、涼からのうざったらしい接触など、嵐のような1日がようやく終わろうとしている。


 結局あの後お嬢様方と合流して涼とは別れたが、奴のあの態度。今後も気を配る必要がありそうだ。


 それにしても今日のお嬢様の翡翠を前にして尚毅然としたお姿、成長を感じずには居られない。

 …多分大丈夫だよな。お嬢様は、追放されたりなんかしない。俺が、私がさせない。




 明日のお嬢様のご予定は、各部活動のレクリエーションと健康診断か。

 ゲーム内でお嬢様はどこの部活にも所属しておらず、翡翠は声楽部、雅は華道部だったはず。この世界のお嬢様はどのような選択をされるかは分からないが、どのようになっても良いよう準備をしておかないとな。


 寝支度をしながら明日の算段をしていると、コンコン、と控えめにノックされる音が響いた。

 時計を見れば夜の10時。


 このような時間に誰だろうか?



「結城、居る?」



 なんとドアの向こうからは遠慮がちなお嬢様の声。

 急いでドアに向かい開けると、そこにはやはりお嬢様の姿が。



「ごめんなさい、こんな時間に。」



 上下シルクのパジャマを身に纏い佇んでいる御姿は、最高傑作どこから見ても完璧美少女のお嬢様以外の何者ではないのだが…

 薄暗い廊下とお嬢様が噛み合わず、どこか現実味がおびない。

 これは夢だろうか?



「お嬢様?!前田は一緒ではないのですか?」



「あぁ、早苗も一緒に来るって言っていたけれど、私ももう中等部の学生ですもの。断ったの。」



「そんな、一人でこのような場所にいらっしゃるなんて危険ですお嬢様!何かあってからでは遅いのですよ!」



「はいはい。お小言は後で聞くわ。それより中に入れてはくれないの?」


「私の部屋などお嬢様が入るような場所では…」



「じゃあ結城は私に立ってろと言うのかしら。」



「まさか!とんでもございません。でも」



「そう。なら良いわね。お邪魔するわ。」



 私の言葉を遮ってお嬢様はスタスタと部屋に入り、流れるように椅子に座った。

 こうなったお嬢様は頑固だ。諦めよう。きっと用事が済めばお帰りになるだろうし、そうしたら部屋まで送り届けよう。



「暖かいお茶などは如何でしょうか?それともホットミルクを?」



「そんなに長居しないつもりだから良いわ。突っ立ってないで貴方も座ったら?」



 自室にお嬢様が居るという状況になんだか落ち着かずソワソワとしてしまう。お嬢様に促され、急ぎ床に膝を付きながら座り込む。

 そもそもなぜお嬢様は私の部屋に来たのだろうか。



「失礼いたします。お嬢様はどうしてこちらに?」



「そうね、今日の結城の様子がおかしくて、つい気になって。」



 思ってもなかったお嬢様の言葉に自分の耳を疑う。お嬢様がこんな私のためにわざわざご足労くださったというのだろうか?



「貴方がおかしいのはいつものことだけれど、今日は方向の違ったおかしさだったわ。」



 まさか。普段とは変わらないつもりであったが自分でも気づかないうちにゲームの始まりに気を張っていたのだろうか?

 お嬢様がそんな風に感じていたなど露ほどにも思っておらず面食らってしまう。



「あら。さっきから変な顔をしているけれど、そんなにおかしいこと?貴方が私をよく見ているように、私だって貴方のことをよく見ているのよ。」



 相手はまだ12歳になるかならないかというお方だ。

 それなのに…悪戯をした子供のような、はたまた大人の女性のような、そんな風に笑うお嬢様に思わず見惚れてしまい、わずかに反応が遅れる。



「…大変申し訳ございません。まさかお嬢様に見られているとは思わなかった為、不甲斐ないお姿をお見せした事、この結城不覚にございます。しかしあくまでも私個人の事情でして。今後このような事のないよう、より一層気を引き締めさせて頂きます。」



 私の言葉を聞くと、お嬢様はこめかみに手をやり、深くため息を付きながらこちらをジロリと睨んだ。



「はぁ、呆れた。貴方全然わかってないわ。

 あくまでも事情を話さないなら、まぁそれならそれで良いけど。


 でもね、結城。


 私は貴方の主人なのよ?迷惑をかけないようにとか思ってるのはお見通し。そしてそんな馬鹿みたいな気持ちは捨てちゃいなさい。」



「し、しかしお嬢様。一使用人ごときがご迷惑をおかけするわけにはいかないのは当然の理。お嬢様は私のことなど気にせず学生生活を謳歌していただきたいのです。」



「さては貴方馬鹿ね?」



 より一層増した眉間のシワ。さらにお嬢様の眼光が鋭く私に突き刺さる。


「あなたに迷惑をかけられたとしても、私の負担になるわけないじゃない。それくらい受け止めきれないなんて西園寺家の名が泣くわ。

 だからね、変に強張った顔で周りをうろつくくらいなら私に頼りなさい。

 貴方は、私の執事なんだから。」


 そう言って不適に笑うお嬢様が頼もしくて、綺麗で、とても、とても眩しかった。私は、2度目の人生ここで終わっても悔いはないなと一瞬天に昇りかけ…と、危ない!お嬢様を残して先に逝くわけにはいかない。


 私は、お嬢様なら絶対大丈夫だろうと思っていても、やはりどこか不安に思っていたのだろう。その結果大切なお嬢様に心配をかけるなど本末転倒もいいところだ。

 大事なのは今を生きるお嬢様が幸せであること。その事を忘れずに前を向こう。もちろん対策はするけどな。



「私、お嬢様という唯一無二の最高のお方にお仕えでき幸せの限りでございます!改めて一生を捧げることを誓わせて下さい!」



「本当に貴方ったら大袈裟ね。ま、でもその方が貴方らしいわ。

 とは言ってももうちょっと自重なさいね?」


 ふふ、と目を細めてこちらに笑いかけて下さるお嬢様はやはりお美しく、自重などできるはずがあろうか?いやない。



「善処致します。我が麗しのお嬢様!

 さぁ、お手をどうぞ!お部屋までお送り致します。私、馬にでも牛にでもなりましょう!」







「………全然分かってないじゃない。」


お久しぶりです!約1年半くらいぶりでしょうか?ようやく私生活が落ち着いてきたので、亀更新は変わらずですが、一歩一歩少しずつ進んで行きたいと思います。


全然関係はないのですが、結城は基本的に床に跪いてお嬢様に接するので、二人にとってはそれが当たり前みたいになってます。異常ですね!


それでは次回、部活紹介です!

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