表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W線上のアリア  作者: 雪見桜
ここから始まる異世界生活の第一歩
18/19

その1

 朝日が客間を明るく染め上げ、彼女リアにとって長い長い夜が明けた。

 結局一睡もできなかった。


「それが、その……。客間は一部屋しかないのです」

「はあ」

「あら、あたしは別にいいわよ」


 思い返せば、あの時反対しておけばよかった。クールぶっていた自分をぶん殴りたくなる。彼女とて一八歳の年頃のお嬢さんなのだ。

 彼女は事情により人前で全身鎧を脱ぐことができない。だから何の問題もないと思っていたのだが、甘かった。リア自身のメンタルがギリギリだった。


 シャワーを浴びていたときは本当にいっぱいいっぱいだった。自分でも何故先にシャワーにいったのか意味がわからない。誘っていると思われなくて本当によかった。

 シャワールームにに踏み込まれたらどうしようもなかった。魔導書を持ち込むわけにもいかず、かといって鎧を着ているわけでもないので反抗のしようがなかった。


 幸いにして、何も起こらなかった。もっとも、間違いが起こることは物理的にあり得ないことだが。

 シャワーを浴びた後、しっかりとギアを着込んで戻るまでアサヒはベッドの上に座っておとなしくしていた。その後も当たり障りのない話をしていたらいつの間にかアサヒは眠っていた。ぐっすり熟睡である。


「まあ、それはそれでなんかムカつくのよね」

 独りごちながら全身鎧を着込んだリアは森の中に分け入っていき、W線の手前で魔法陣を描いていく。


 今この〈ジルシー教会〉は敵の攻撃を受けている。

 “敵”と言われてもあまりピンとこないが、〈ジルシー教会〉とW線を接する〈スラーヴァ〉という世界が〈ジルシー教会〉に侵略しているのだ。

 最初の襲撃の時、たまたま立ち寄っていたリアがスラーヴァ軍を撃退した。その後、リアがこの場に留まり、これまでに五回の襲撃を撃退した。


 その後六回目の襲撃としてやって来た勇者フレスベルグをも撃退し、今に至る。

 七回目の襲撃は早晩来ないと予想はしていたが、それでも絶対はない。リアがこの地を去った後でもどうにかなるように対策を講じているのだ。

 これをやってからこの地を去る。老神父にもアサヒにもそう伝えていた。


「あー、もう! ムカつく!」

 ちょうど魔法陣を置こうと思っていた場所に大きな岩が埋まっていた。

「ムカつく! ムカつくのよ、あいつ! ちょっとはあたしのこと見ろっての!」

 ムカついたので魔導書を取りだして何度も攻撃を加えてやり、ばらばらにしてやった。ちょっとスッキリした。


「あいつが悪いのよ……」

 自分でもわかっている。こんな真っ黒の鎧を着込んでいる女を見てくれる人なんかいない。

「俺と結婚してください!」

 あれは間違いだったってわかってる。自分に向けられた言葉ではないのだ。しかしあの一言で自分でも知らなかった自分の乙女な部分が呼び覚まされていたのもまた事実なのであった。

 そんなことを考えている余裕も資格も自分にはないというのに。


「…………仕事しよ」

 大きくため息をついて漆黒の全身鎧の少女は次の魔法陣を描くために森へと入っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ