第二羽 世界を知るヒヨコ
本日二羽目の投稿ですね、書いてると楽しくなってきました!まだまだもっと書きます!よろしくお願いしマッスル!
俺様はヒヨコである、名前はまだ無い
元々は多分、日本人?だと思う。
この身体になってから分かったことが一つ、人間と違ってヒヨコは頭が悪いのだ。
だからだろう、前世の記憶も朧げで、名前、家族、職業、その他諸々、覚えてはいるのに言葉に出せない。
まぁ……元から喋れないんだけど……
「……う?」
この小汚い少女はリィズと言うらしい、俺様が生まれた鶏小屋の番をしているみたいだ。
何故か俺様を育ててくれているのだが理由は謎だ。
麻袋みたいな服をきていて、髪は水色っぽいけど汚れすぎていて黒くなってしまっている。
全身はアザだらけで、奴隷なのはまず間違いない。
この子、俺様が生まれて4日ぐらいたったけど、鶏小屋のついた屋根裏にずっと閉じ込められてるんだよな。
部屋から出れるのは名前の知らないオッサンが呼んだ時だけだ。
「おいっ!リィズっ!!」
ほらきた。
慌ててリィズが手に乗せている俺様を服の中に隠す。
少し蒸れるので気分が悪いのだが……嫌な予感がするから、いつもされるがままにしている。
「ふん……今日の収穫は?」
リィズは籠から卵を取り出し、男に手渡した。
「ひぃ、ふぅ、みぃ、よ……チッちゃんと5つあるな、ほらよ今日の飯だっ」
男は片手に持っていた、少ししか肉のついていない骨を床に放る。
「あ、あぃう…」
リィズがそれを拾い食いするの見て、男はニヤつき太った腹を揺らしながら悦に浸っていた。
「まったく、卑しいよなお前ら奴隷はよぉ……おい、リィズ今日の俺は気分がいい、この後シルバ商会が俺の店に来るんだ、お前を久しぶりに外に出させてやるよ」
「……あ、あうあ!?」
土気の多いリィズの顔に少しだけ生気が宿る。
「ほう?そんなに嬉しいのか?ただの厄介払いなんだがな……おいっ!!勘違いするなよ?ただ外に出すわけじゃねぇ!!」
男が急に声色を変えるとリィズは怯えてしまった。
「リィズ、おまえの緑魔法はコッコスが卵を産む速度を早くするだけだって思ってたが……なんだぁ?果物も探せるんだってな?」
服の中から魔法という言葉を聞いて、俺様は少し興奮していた。
ここってただの中世だって思ってたけど、魔法があるんだな……あ、ちなみにコッコスってのはこの世界の鶏のことらしい。
「コケーーコケーー(訳)メシタベタイ、メシタベタイ」
この身体になってわかったこと二つめ、どんな言語も何故か日本語に聞こえるみたいだ、動物の泣き声も例外じゃないっぽい。
「……あぅ」
「何つっ立ってんだっ!!俺は外に行って果物とってこいって言たんだよ!?早く行け!」
リィズは襟元を掴まれ、家の外に引きづりだされた。
「……うあ、えぃあい」
何かを訴えるように必死に首を振るリィズ
「なんだ?何を言いたいのかわからねぇが、果物取ってくるまで家には入れねぇぞ」
理不尽な奴だなぁ、4日しか一緒にいない俺様ですら言いたいことわかるぞ。
多分、リィズは果物を探す魔法が使えないんだ
「おいっ早くしないと日が暮れちまうぞ、夜は冷えるだろうよ……凍え死にたくねぇだろ?あん?」
コクコクと頷くリィズ
「街の裏手にある山にでも行くんだな、あそこは私有地じゃねぇから採取しても問題にはならねぇ、まぁそもそも実りが少ないから誰も管理したがらねぇんだけどよ……とっとと探してこいノロマがっ!」
リィズはゆっくりと街道を歩き出す、暗い顔のリィズと反対に俺様は服の隙間から始めてみる中世を堪能していた。
ほうほう、今までいた場所は肉屋っぽいな、ここら辺は商店街なのか?
中世と言っても発展はしているようで主にレンガを主軸にした建築物がならんでいる。
煙突があるみたいだし寒い地域なのだろう、暫くするとなんだかいい匂いがしてきた、露店で何かを焼いている。
匂いが近くなってくるとリィズの手がぎゅっと俺の体を包んだ。
急にどうしたんだろうか……
『ゲッ!?なるほど』
指の隙間から見えたのはヒヨコの丸焼きだった
露店の看板にデカデカとあのオッサンの掘り絵が飾ってある。
リィズがいなかったら俺様も露店に並んでいたのかもしれない。
ーーーーーー
しばらくすると木々の生い茂った場所が見えてきた。
「あら!大変っ!奴隷が逃げ出してる」
「ひぅ!?」
突然の大声にリィズが驚く。
「あー、大丈夫よメイラ、あの子ジバエさんとこの子だから」
場所をずらして他の隙間から覗くと、林の手前にある井戸で二人の婦人が話していた。
「いったい、何が大丈夫なのさ!噛みつかれたり襲ってきたりするんじゃないのかい?」
「そうならないために、ジバエさんの所は紫魔法を使ってるのよ」
紫魔法?さっきの緑魔法といい色々と種類があるっぽいな。
「勝手に逃げ出したりしたら、毒が回ってほっといても死ぬって言ってたわよ」
「ふ〜ん、そうなの?でも見てると気味が悪いわね、シッシッ!近づくんじゃないよ!」
胸糞悪い話を聞いてしまった、服の中にいて気付いたが所々に見える刺青が紫魔法って奴なんだろうな。
だから逃げなかったのか……
「……うう、あう!」
その場から逃げるようにリィズは森に入った。
ーーーーそして
暫くの時間が経ったが案の定、果物は見つかっていなかった。
「うっうっ……あう」
今にも泣き出しそうなリィズを他所に俺様は退屈していた。ん〜このまま服の中でじっとしてても楽しくないな、魔物とかも出てこなそうだし、……よし!!
俺様は体を揺らしてリィズの服から這い出る。
「え?……あ!あうあ!!」
リィズが心配する声をあげるが、気にせずそのまま俺は始めて大地に足をつけた。
この身体になってから分かったこと三つめ、
どうやらこの身体はだいぶ勝気なようだ前世のぼ……俺様とは大違いだ。
一人称が俺様になるのもこの体の性格に引っ張られているからだと思う。
任せろ、リィズ。俺様が果物なんかすぐ取ってきてやる!危険もなさそうだしな!
リィズは体力の限界だったみたいで走る俺様を追ってはこなかった。
魔法のある中世の世界、この世界に生まれた者としての初めての冒険に俺様は心をときめかせていた。
しかし、ここでリィズと離れたことは愚策だったと言わざるをえない。
なぜなら……そう、俺様は勇者でも冒険者でもない。
そしてチキンにもなっていない
ただの『ヒヨコ』なのだから……
「ピ、ピヨ!?」
「シャーー(訳)食い殺す!!」
蛇さんチッす!……全力で逃げよう、うん……そうしよう。逃げるしかないぃぃぃ!
「ピ、ピヨーーーー!!」
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