表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/83

シティバトル2

「……ドク」

「はい?」

「1アワーズたったよ。コーヒーまだかい」

「……めちゃくちゃ言わないでくださいよ、マイク……」


 窓なし、明かりなし、入らなくて良かったとホッとしていたあの場所に入るとは。

 後ろ手に手錠をかけたその上にロープで縛られている。一体僕が何をしたというんだ。僕は善良な人民じゃないか(どこがだとこが)。


「……言いたくもなるさ」


 うんざりした顔でマイクは言った。


「本当にこのような、底意地の悪い老婆の顔した運命ってヤツがいるのかもしれないな。今更ながらにズシリとその実感がのしかかってきてさ」


 すると、それまで黙っていた人物が突然口火を切った(なんかこのパターンばっかりだ)。


「すっ、すみませんっ!」

「へ?」

「僕が、僕がうっかり言ってしまったから! 俺、どうやってお詫びすりゃ……」

「あのねぇ、少年」


 マイクは半ば茶化すように言ってのけた。


「これから何か物言う時には一人称統一してからにしなよ。僕、とか俺、とか、ごちゃごちゃしててようわからん」


 が、少年にはそれがわからなかった。


「……すみません」

「それはもういいってのに」


 とにかく傍目から見ててもアンドリューの落ち込み具合は酷いものだ。ドクはたまらず口を挟んだ。


「気にすることありませんよ。アンディ……で良かったんでしたっけ?」

「アンディ……。まあ、いいですけどね」


 実はロビンソンは「アンディ」と言う呼び方が好きではないのだ。なんか、いかにも「ガキ」って感じがする。

 だから仲間にもロビンソンで呼ばせていたのだが……まぁ、この人たちならいいか。


「そうさアンディ、気にするこたぁない。いざとなれば幸運なんてすぐに手に入る」

「そーですかぁ?」


 「自分の人生は不幸の塊」と信じ込んでいるアンディには疑わしく思えた。


「あんまり気は進まんが……。まず声かけて次投げキッス、側によってまとわりついて、それでもダメならかっさらう」

「……女の子のかどわかし方聞いてるんじゃないんですけど」

「知らんよ。知り合いの台詞の受け売りなんだ」


 ……そういうことを言うとしたら、多分アレックスかキャップなんだろうなーとドクは思った。

 言葉の内容にすべて賛成というわけではないが、とにかく今はアンディの気分を落ち着かせるのが一番だろう。


「そうだよ、アンディ。君のせいじゃない。今回私たちがちょっと運が悪いのはね、ヘルメス号の幸運の女神が連れ去られたからなんだよ」

「……女神?」


  なんか急に話がずれたような気がしたアンディであったが、そう思ったのは彼だけであったらしい。


「女神……そうだね」


 そう言うと、あまりにも優しくマイクは微笑んだ。ドクの笑顔についつられてしまったのだ、とマイクは思う。


「でしょう?」


 白い衣に長い髪。女性、というのもちょっとおかしな気がするが、神格化されるには十分すぎる人物。セラ。今回は彼がいない。


「だから、ここから抜け出してセラを取り戻せばまた幸運は戻ってくるさ。まあ……そう勝手に思ってるだけなんだけどね」


 ドクはそう言うと、少し照れたように微笑んだ。我ながらちょっとかっこつけたかな、と思う。


「……信じるよ」


 アンディにもドクの気持ちが分かる気がした。


「信じないよりましだもんな」


 ちょっとほっとしたような雰囲気が、全員の格好、扱いにもかかわらず流れた時だった。


「……しっ」


 突然マイクが言った。


「誰か来た」


 誰かが階段を降りてきた。牢の外の警官と何か2、3言いかわすと、軋んだ音を立てながら扉が開いた。


 警官と、それからどちらかと言うと軍人というようなタイプの人間が、一人の男を部屋に放り込んだ。うつむきのまま男が床に寝転がると、警官(太った、国家権力を自分の力と間違えているかのような男)が嘲った。


「新入りが来たぞ。嬉しかろう?」

「嬉しいよ。これでやっと麻雀ができる」


 マイクのセリフに一瞬きょとんとしたが、自分がおちょくられているのだと分かると警官はムッとし、そしてすぐに彼らが手出しできないのだと思いだして、せせら笑った。


「せいぜい強がりを言ってろ。明日のことは誰にも分からんぜ」

「そう、確かに誰にもわからんな」


 事も無げに言い返されると、ヤケ気味に力一杯扉を閉めて二人は出て行った。

 暗い地下、明かりも窓も無いが扉の隙間から少し明かりが差し込んでいる。その明かりの中にぐったりと横たわったままの男の姿が見えた。


「しっかりなさい。大丈夫ですか」


 ドクは男に近寄っていき声をかけた。気を失っているらしい。

 とにかくこのままでは、ということになり、3人で仰向けにすることにした。手が縛られているので足で、ということになるが、ずいぶん疲れる。なんとか仰向けになった男の顔を、光が照らし出した。


「お……おい。これは夢か幻か」

「夢だとしたら悪夢ですね」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ