シティバトル1
ある下町のボロアパートの地下。
ここ2、3年ほとんどの人間が来ない寂しいところであったのが、いっぺんに活気が溢れてきた。
次から次へと人々が入れ替わり立ち代わり出入りし、無線等の連絡はひっきりなしにかかってきた。囲炉裏のそばに座っている一人の男、サム・ローマンは寄ってきた2、3人の部下の話を聞くと髭に顔の下半分を覆われた男、ディアスに言った。
「どうやらお前さんのお仲間は敵に捕まったようじゃのう。FS通りの55、らしい。警官や情報部、他の胡散臭い連中もそこに集まってきちょる」
いつもなら。いつものディアスなら、「全くバッキャローめが! やすやすと捕まっちまいやがって! 少しは俺のことを考えて捕まれっつーの!」とかなんとか愚痴るところだが、今の彼は口をあんぐり開けたままで、やっと言葉を絞り出すだけだった。
「……あ……いや……どうも……」
自分でもらしくないと思ったのか、ディアスはブルブルと首を振り、2、3回自分の両手で頬を叩いた。
「いやあ……驚いた。あんたがただもんじゃねえってのは、リスターのじいさんが推薦したってこともあるが、俺の直感でピンと来たのは来たんだが……ここまでとはな」
ローマンはちょっと片手を額に当てて、少し照れ笑いをすると答えた。
「いや、ディアスさん。大したことじゃねぇ。まだわしより上の御仁はたくさんいる。……アラハンに行かれたか?」
「いや」
「なら、今度行かれたら政府軍参謀長官、カーツ・アワーノ氏に会われよ。きっと力になられるじゃろう。まっこと見識の広い御仁じゃきに」
政府軍か。ディアスは心の中で苦笑した。
アラハニア・ドリーマーズに肩入れしている俺が、政府につながりを持つやつの助けを借りるとはな。まったく運命ってやつは、よっぽど皮肉にできてやがるらしい。
その運命の皮肉を、次の瞬間ディアスは真っ正面に突きつけられた。ある一人の部下がローマンに一つの情報を告げたのである。
「……まさか……」
ディアスが絶句した。考えようによってはこれほど珍しいこともない。それだけありえないと思っていたからだろう。
「いや、本当らしい」
静かにローマンは言った。それでもまだディアスには納得がいかなかった。
「しかし、ハワードが守ってたはずだ。なぜヘルメス号がそんな簡単に……」
「そこはようわからん。とにかく駐船場にはヘルメス号はないそうだ。中にいた人間も一緒らしい」
「セラもか!」
ここに至ってやっとディアスは現実問題としてそれを認識することができた。たった一人であっても自分のクルーを捕まえるやつを許す男ではないのである。
「ただ、こっちの方には反乱軍の影がちらほらいよる。どっちにしても厄介な奴らじゃ」
「どうする、ディアス」
リスターは囲炉裏のそばに座ったままディアスに尋ねた。
「ヘルメス号を追って宇宙へ出るなら心当たりの船がある。せめてそれぐらいはさせてくれんとな」
「ありがたい。だが」
リスターに答えながらも、ディアスは自分に言い聞かせるように言った。
「まず、うちのやつらを集めなきゃならねえ。俺だけじゃヘルメス号のクルーにゃならねえからな」
「よかろう。乗りかかった船だ。わしも手伝おう」
ローマンの言葉にディアスリアスは頷くと、「ヘルメス号クルー救出プロジェクト」を練り始めた。




