-4.その後の駿介
伊織と駿介(その2)。の巻
エピローグ的な話です。
苑子ちゃんとデートを楽しんだ俺は遠慮する彼女を説得して家まで送ることにした。
それにしても、苑子ちゃんは自分に寄せられる異性からの好意ってやつに恐ろしいほど鈍い。さっきの高野くん、あれはどうみても苑子ちゃんのことが好きだろう。
思わず、剣道部で後輩を指導するときみたいな目つきで彼を見たら、高野くんはぎょっとして立ち去っていった。とりあえず、一人は削除できた。
「私、もてませんから」と本人は言ってるが、それはたぶん気づいてないだけだと思われる。
意思の強さは持っていても、基本的にほのぼのした性格の苑子ちゃん。聡太先輩や伊織さんが過保護になるのもなんだか分かる気がしてきた。
俺って、こんなに心配性だったっけ。自分でも意外な一面にびっくりだ。
苑子ちゃんの家に着くと、家の前に二つの人影が。
近づいていくと、そこには聡太先輩と伊織さんがいた。
「おりくん、そうくん。どうしたの?・・・・あれ、おりくん今日は帰ってくる日だったっけ」と驚く苑子ちゃん。
「よー、内藤」と気さくな聡太先輩と、「こんばんは。内藤くん」と笑顔でも目が笑ってない伊織さん。
兄弟間で俺に対する感情の差が歴然としてるよなあ・・・。
聡太先輩と苑子ちゃんには中でお茶を進められたけど、俺は断って帰ることにした。二人に聞こえないように「今日、帰ったら電話するから」と苑子ちゃんの耳元で言うと、彼女は真っ赤になって頷いた。やっぱり、彼女はかわいい。
「ちょうど俺も帰るところだから、駅まで一緒に行こうか。内藤くん」伊織さんに言われた俺は逆らうことなんて、もちろん出来なかった。
聡太先輩は、そんな俺の肩を黙ってたたいた・・・・。
「伊織さん。俺、苑子さんと、お付き合いすることになりました」
「そう。・・・じゃあ、俺が前に言ったことを肝に銘じておくんだね。」
「はい、分かってます」
「分かってるなら、それでいい。」
そのあと、伊織さんと俺は駅で別れた。
「あの、内藤さん。伊織兄さんに何も言われなかったですか?」と、苑子ちゃんから電話がかかってきたのは、俺が家に戻ってしばらくしてからだった。
「どうして?」
俺が聞くと、苑子ちゃんは「伊織兄さんから、電話がかかってきて『内藤くんはいいやつみたいだから、よかったな』って・・・・いきなりで驚きました」
どうやら、伊織さんは前回の「渋々」ではなく普通に俺を認めてくれたらしい。
「苑子ちゃん。はやく俺のことを下の名前で呼べるようになってね。」
「えっ・・・・あ、はい。が、がんばる・・・・」電話の向こうで苑子ちゃんがあたふたしている様子が丸分かりだ。
俺は、思わず電話越しに噴出してしまった。
やっぱり、苑子ちゃんはかわいい。ずっと大切にしたい、守っていきたい。俺は改めてそう思ったのである。
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1話危なかったのもありましたが・・・。
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