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王弟の結婚  作者: アーク
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王弟の結婚と後日談

王弟ジョンの婚約者として王国に渡り、正式な婚約が帝国の第8皇女イザベルとの間に結ばれて数年後、ふたりの婚姻は成された。


王国に足を踏み入れた当初は齢3つの幼子の姿であったイザベルはジョンとの間に順当に愛を育み、誰もがその姿に見惚れて呼吸の仕方も忘れてしまう程の絶世の美女へと成長を遂げた。


ふたりの結婚式に参列した貴族の中には、


「あれは女神に違いない」


とイザベルを拝み倒す人々もいた。


無事第3王子セドリックと婚姻を結んだクラウディア王子妃と、聖女としての活動に精を入れ始めたアスタリア子爵令嬢が中心となった【イザベル王弟妃殿下を愛でる会】なるものも存在していると聞く。


その中には、シルベスター伯爵家に養子入りした後北部高原で発生した魔物暴走(スタンピード)を半日で鎮め王国の女性初の守護騎士として武勲を挙げたハンナ王太子妃の姿もあると言う。


リシャール王とジョンの母、メリュジーヌが王家に嫁いだ後、生家であるニュミエ公爵家は爵位を継いだヘンリーが後継を成さないままに病で夭折した為に領主不在となったニュミエ公爵領に、ジョンとイザベルは居を構えている。


「なんだ、この帳簿は。本来領地に割り振られるべき金の流れが不透明な用途で使用されているではないか」


「古いものですわね。...こちらは、領民からの不作に関する嘆願書...。失礼ですが、伯父君は連作障害をご存知無かったのでしょうか」


領主不在となったニュミエ公爵領は王家預かりとなり、地方代官が建てられたと聞くが、荒れ果てた領地を見る限りまともな働きをしていたとは到底考えられなかった。


「すまない、新婚らしい生活は暫く送らせてやれそうにない」


「構いませんわ。領地経営を建て直す事もわたくし達の役割でございます」


先ずは、冬を越す為に必要な準備。


温かな衣服や毛布、食材の流通経路の把握、冬も間近な今からでも直ぐに育ち、食卓に並べる事の出来る食物。


もう何十年も手入れされていない用水路の整備、荒れた田畑の改善。


「食材や食物については、ハンナ妃とクラウディア妃の協力を得る事が出来そうだ」


「毛布や衣服に関しては、聖女マルガレーテ様から是非に、と打診がありましたわ」


では、用水路の整備や田畑の改善から取り組みましょう、とイザベルは公爵邸から出ると農園に足を運ぶ。


其処にはすっかりと荒れ果て、痩せ細った収穫物を手に嘆く領民の姿があった。


「こんにちは。わたくし、ニュミエ公爵領の新たな領主となった旦那様の妻の、イザベルと申しますわ」


顔を上げた領民はイザベルの姿を見ると


「女神様だ...」


と立ち尽くした。


神竜は神として祀られる事もあったと言うから、あながち間違ってはいないな、とジョンは思った。


「3ヶ月。3ヶ月で、先代ニュミエ公爵の時代と変わらぬ生活が皆様の手に戻ると約束致しますわ」


―――宣言通り、ニュミエ公爵領の新たな領主となったジョンとイザベルは3ヶ月で荒れ果てた領地を嘗ての、活気溢れる大地へと再生させた。





―――後世の歴史家は、話が大袈裟に盛られていると語った。





しかし、王弟ジョンが愛しい妻イザベルと共に何時までも幸せに暮らしたと言う事は戯曲の題材となる程に紛れもない真実である、と伝わっている。

ふたりの結婚式に参列した貴族がドン引きした、と伝わっているのはどうやら後世の歴史家達の間で、


「イザベルは神竜の血が色濃く現れた為に生涯幼女の姿だった」


と言う説がある為に「幼女と結婚した30代の王弟」のイメージのせいみたいですよ。

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