番外編1:ルイーゼ・メリーベル②
魔法学院に入学してから早くも1ヶ月が過ぎて…… 私は凹んでいた。
相変わらず私が魔法を使おうとすると爆発してしまい、カーティスは興味深そうに状況確認と解析をして、エドガーは大笑い、ディミシスとブライアンは普通に心配してくれて、アランは怪我をした時は治療を、キースは心配そうにオロオロしていた。
全員共通の授業以外はそれぞれ誰かが補助についてくれていた。
それは有難くもあり、申し訳ない事だったので、早く独り立ちしなけば!と思うのだけど、そんな自分の気持ちとは裏腹に魔法は中々使えるようにならなかった。特に魔法薬のクラスではアランに迷惑をかけすぎていて、普段和やかでいつもニコニコしているアランも流石に怒っていると分かる事もあった。
……段々と一番興味のあった魔法薬のクラスが憂鬱になった時だった。
その日は珍しくアランが不在だったけど、私は一人でもちゃんとできる所までやろう!と気合を入れて臨んでいた。
途中まではたぶん、上手く行っていたと思う、たぶん……。そして、魔力を注ぎながら攪拌している時に魔力を操作しきれなくて、とうとう爆発した。
ボンッ!と言う音と共にビーカーが割れ、中身の液体がびしゃっと飛び散る音が続いた。
跳ねた薬液の熱さに悲鳴を上げつつ、状況確認すると、それは悲惨なものだった……火は安全装置が作動して消えていたけど、実験台の上から下まで複数の薬品が混ざり、煮ていた薬草の破片も飛び散って惨憺たる有り様とはまさにこういう事を言うんだろうな、と他人事のように思ってしまった。
途方に暮れていると近くのテーブルに居た女性が心配をして声をかけてくれた。
たしか、リリアナ・ローズウッド様。貴族の方らしいけど、真面目で、でも誰とでも気安くお話ししてくださると評判の優等生で長い淡い金髪はいつも邪魔にならないように緩く編んで流している。新緑のような緑の瞳を、キラキラさせて魔法薬をいつも作っているのを見ていて好きなんだろうなってクラスメイトでしかない私でも分かる。
そんなリリアナ様が心配そうに、ちょっと困ったそうに私を助けてくれる。飛び散った薬品を浄化させるために展開させる魔法陣も細やかで凄く綺麗で見惚れてしまう程だった。リリアナ様のようになりたい、と心から思った。
私を責める訳でもなく、苦手なものは仕方ないから、頑張ろうと慰めて下さって、ホロリとしてしまいそうだった。一緒に片付けをしてる時にやっとアランが来て、そこからはアランと片して再度魔法薬を作り直した。
私はこっそりと、またリリアナ様とお話したいなって思っていたんだけど、私の希望は叶わなかった…… アランのせいで。
その日から、アランはリリアナ様の側に居るようになった。もちろん魔法薬クラスなどではちゃんと私の補助役をしてくれているけど、それ以外の時間アランはそれまで不特定多数の女生徒と一緒に居たのが、リリアナ様ベッタリになった。
リリアナ様は最初困っている感じでアランを邪険にしてたりしたんだけど、アランにだけ容赦のないリリアナ様の様子を見たディミシスやブライアンにあの2人の邪魔をするのは無粋だよと止められてしまった。確かに、あんなに楽しそうなアランを見たのは初めてだった。
2人の邪魔はしないけど、私もリリアナ様と仲良くなりたいと思って行動した結果、私はやらかして、決定的にアランに警戒されるようになってしまった。
リリアナ様の魔法薬をダメにしてしまった事で、魔法薬クラスの先生にはそれは強く叱られ、学院長先生にも流石にもうちょっと考えて行動しなさいと思い説教をされて、流石に凹んでしまった。中庭でしょんぼりしていると、カーティスとエドガーが通りがかって話を聞いてくれたけど、エドガーに「少し前まで熱していたビーカーを素手で触ろうとするのはドジにもほどが……」とドン引きされて泣きたくなった。
ずっと黙り込んでいたカーティスは何かを思いついたのか、おもむろにノートを取り出すと行数を開けながら何かの手順を書き出していた。よく見ると魔法薬作成の基本手順だった。
「大体手順書ってこの位の内容だよね?」
「うん、あっていると思う」
「オレが思うに、ルイーゼは『当たり前だから端折っている』部分についての理解度が低いと言うか、そこでの注意点が抜けてしまうから子供のようなミスやドジをしてしまうと思うんだ」
「お前、それ軽くディスってねーか?」
「うーん、そんなつもりはないけど、今大事なのってルイーゼがどうやったらミスしないか、だよね?
なら、ルイーゼが全部確認しながら進行できるように進行を管理する事だと思うんだ」
「たしかに……」
「たとえば、ここで薬草を細かく刻むとあるけれど、どのくらいの細かさでどのくらいの時間をかけていいのか。早くしないといけないものもあるからね。
なんならこの前の前準備で必要な素材の個数とか重さ、量をちゃんと書いて、ちゃんとチェックをできるとうにする。これなら事前準備は時間かかるけど、後は見ながら進行できるから、心配はないし書くことで手順を覚えやすくなるでしょう?」
「すごい!カーティス、すごい!!」
「ここから先はルイーゼがどう頑張れるかだけど、頑張る方向性が分かれば君は努力はする子でしょ?頑張って!」
「はい!ありがとうございます!!」
このアドバイスをきっかけに魔法薬クラスでの失敗は魔法を使うタイミング以外は無くなった。アランにも、「雑さが無くなって丁寧になった」と褒められて、もう魔法薬を諦めなければいけないかと思い始めていた私の自信は少し取り戻せた。
でも、アランはリリアナ様を独占して、全然お話しさせてくれなかった。ちょっと話始めると、リリアナ様を物理的に連れ去ってしまうんだ!
もう!ケチ!!
一度、話したくらいじゃ減らないでしょ!って言ったら「リリアナと過ごす時間が減る」と堂々と言われて負けた……何あの独占欲の塊。
リリアナ様は大丈夫なのかな?と思うけど、仕方ないなぁって感じで困った笑顔を浮かべていたのでブライアンたちに相談した。
「ルイーゼ、それは典型的な『人の恋路を邪魔する奴』になっちゃうから、僕は放っておくのがいいと思うよ?」
「私もそう思うぞ?リリアナ嬢はアレで、アランが暴走する時はちゃんとダメだと拒否しているしな」
「そうなの?」
「まあ、でも、アランがあんなに誰かに執着するとはボク思いませんでした」
「キースもそう思う?」
「ええ、アランはああ見えて人付き合いは希薄ですから」
「「え、そうだったの!?」」
「プッ、クク……」
「ブライアン、貴方まで気付いてなかったんですか?」
「いや、だって、なあ?」
「そうだな、アランは一見常に女性を侍らしていたからな。あいつの笑顔は貴族も真っ青な外向き用でしかないな」
「「………………」」
「ルイーゼさんはともかく、貴方も高位貴族でしょうに」
「そう言うなキース、ブライアンの素直さは貴重だ。私は好ましいと思うぞ?
だが、興味深いのは淑女のように完璧な仮面を被っていた男が、一人の令嬢に本当に心惹かれているように見える事だな」
キースとディミシス曰く、間違いなくリリアナ様もアランに好意はあるだろうから、後は2人の問題だからと口も手も出さないようにと何度も釘を刺された……。 私、そんなに不躾じゃないわ……。
もう!
読んでいただきありがとうございます。
やっと、ディミシスとの恋愛に次で入れそう・・・!




