⑫燃ゆる花
「もう無理だぁぁぁ! 全然見つからない」
カネーヴェの町を出て、草原地帯の先にある森の中。
薬草を必死に探したが、全く見つからない。
いや、見つからないというより、見分けがつかない。
どれも、ただの草にしか見えず、薬草がどんな形をしているかも知らないのだ……
初の依頼にして、初の失敗の可能性も……
いやいや! もう少し頑張ってみよう。
たとえ今日見つけられなくても、期限までに見つければいいだけ。
明日は本か何かで薬草について調べてから来るか……
「お兄様〜みてみて、このお花きれい♡」
ルナはのん気にお花を採取している。
彼女は動物やお花が好きで、本当に楽しそうに遊んでる。
「ホントだ。 よく見つけたね」
「えへへ。 ルナはお花見つけるの得意!」
できれば薬草も一緒に見つけて欲しいが、そう上手くはいかないよな。
「ああ、小鳥さんだ! ことりさん、お話ししよう♡」
「ちゅんちゅん」
呼ばれた一匹の小鳥が、ルナの肩に止まる。
動物に愛される、その能力は一体何なのだろう?
「え? 森の奥に薬草がいっぱいある? 小鳥さんが案内してくれるの?」
「ちゅんちゅん!」
だから何で鳥と会話できるんだよ。
って、森の奥は確か……今は危険な状態だから近づくなって言ってたような。
「ごーごー!」
イケイケ、どんどん、なノリで森の奥へと走っていくルナ。
お、追いかけないと……
◆◆◆
走ること数分……木々で埋め尽くされた日差しが当たらない場所へと来てしまった。
大分、森の奥へと入ったが、ルナと小鳥を見つけて側に近づく。
「はぁ、はぁ、はぁ、やっと追いついた。 森の奥は危険だから、入ったら駄目って言ったろ」
「お兄様、みてみて! 薬草」
ルナの目の前に広がる草、普通の草にしか視えないが、コレが薬草?
「ちゅんちゅん」
「これ全部やくそう! って小鳥さんが言ってる」
まじか!? それなら全部回収しよう。
魔物に出くわす前に回収して、早目にここを出よう。
ルナと共に急いで、薬草を採取した。
「こっちには毒消し草があるって……」
さらにルナは森の奥に入り、毒消し草まで採っていく。
ここまで来たら、やけくそだ。
取れる物、全部取ってやる。
俺も無我夢中で採取を行う。
「お兄様〜、これすごい!」
「どうした?」
ルナの元へと駆け寄り、同じ方向に目を向ける。
そこには、チューリップに似ているが、花の部分が燃えているようなシルエットの、どこか神秘的な花が数本咲いていた。
「なっ!? なんて綺麗な花なんだ」
「えへへ、お兄様よろこんで、くれた!」
こんな素晴らしい花があるなんて、やはり異世界は伊達じゃない。
ギルドに帰ったら、何の花なのか教えてもらおう。
全部採るのは勿体無いから一本だけ持って帰ることにした。
「ありがとう。 こんな綺麗なお花見せてくれて!」
「えへへ」
「じゃあ、そろそろ帰ろうか……」
「ちゅんちゅん!?」
帰路に着こうとした時、小鳥が慌てて逃げるように飛んでいく。
何事だと辺りを見渡たしていると、奥の方から数体のゴブリンがコチラに向かって走ってきた。
様子がおかしい?
まるで何かから逃げるように、俺達の事などお構いなしに走り去っていく、その姿は怯えているようだった。
ゴブリンが怯える程に強い魔物いったい?
「グオーーーーウ」
ゴブリンが来た方角から現れたのは緑色の大男。
頭には二本の角があり、筋骨隆々な見た目。
口には牙らしき物が生えている。
俺もここ数日は魔物について勉強していたから分かる。
間違いなくオーガだ。
オーガはBランクのハンターでなければ倒せない程強い魔物だが、ドレスアーマーを装備したルナなら勝ち目はあるな。
幸いな事にオーガは群れない魔物。
強敵ではあるが、一対一なら問題ない!
「お兄様! 下ってて。 いっぱい来る!」
そんな俺の期待を破る一声。
あっという間にオーガ十数体にとり囲まれてしまう。
逃げ道を塞がれ戦うしかない状況。
ルナはマジックポーチから取り出したドレスアーマーを装備して、戦闘に備える。
緊迫した空気の中、先にオーガが仕掛けてくる。
「「「グオーーーーウ」」」
「体術……ムーンウォーク!」
一斉に襲いかかるオーガを分身したルナが相手する。
俺を守るために受けに回るしかなく、攻め手に欠ける。
分身体には本体程の耐久力は無く、オーガの猛攻に耐えられず全てやられてしまう。
追い詰められた……
「だいじょうぶ! 必殺技がある」
必殺技? 奥義の事かな?
奥義を使うと一時的に技を使えなくなるデメリットがあるが、この状況を打破するには、それしかない気がする。
やらなければ殺られる。
だったら使うしか道はない。
「月の輝きを借りて、新の力を今、解放する! 『ウサギ』の奥義……【ラッキームーンソルト】」
いつ考えたのか分からないが、カッコ良さげなセリフを吐きながら奥義を放つ。
ルナの姿が薄暗い緑色の光を放つ三日月へと変わり、オーガを囲むように回る。
移動する三日月が残像のような分身を生み出して、複数の月が敵を切り刻む。
数秒でオーガ数十体、全てを倒してしまった。
奥義というだけあって強力な技だ。
「月に変わってお終いよ! はぁ〜はぁ〜」
ちょっと違う!
その偉大なセリフを間違えるなんてっ……いや、間違ってていいのか!
同じだと困るし。
別にルナはセー○ームーンじゃないし。
大好きだけど、権利が関わってくるから、今後は辞めて欲しい。
「ルナよく頑張った! いまヒーリングを……」
疲弊しきったルナに回復スキルを使おうとして中断する。
「グオーーーーウ」
まだいるのかよ!?
さっきの倍の数のオーガが迫ってきている。
一緒に逃げようとルナの腕を引っ張るが、動きが悪い。
奥義の反動のせいで、鈍い動きに加え技も発動できない。
絶体絶命のピンチ。
このままじゃ……殺られる。




