赤神さん、幸せ理論
「おはよー!!かがみ……ん?!」
「おはよー、はるか。」
「よっ、土浦。」
「にゃにゃにゃ!?なんでかなぎがここにいるのさ!?」
本来ならかなぎくんは私とはるかがいつも待ち合わせているこの場所を通らず学校に行っています。
なぜいるかって?
私の家に昨日お泊まりしたからです。
「そりゃぁ、お前。ひみつだよ、ひみつ。」
「ムカつくから嬉しそうに言うにゃ!!
ヘタレのくせに!」
「うるせーな!どーせヘタレだよ!」
「へへへ」
よかったです。
いつものはるかです。
いつものはるかとの時間です。
「かなぎ……あんたにもいろいろ迷惑かけたよね。ごめんね…。」
「…正直俺はなんもしてないな。
言うならかがみと西条に言ってくれ。」
「………うん…」
「気を落とさなくても大丈夫だよ、はるか。
かなぎくんは照れてるだけだから。」
「か…かがみ……」
「………ひひひ。
そっかそっか!ありがとうな!かなぎ!」
「あー…はいはい……」
私ははるかの一件で初めて自分の目を人のために使うことができたと思っています。
私はこの一件で私を少し好きになれました。
それがすごく嬉しいのです。
「で、かがみさん。
今日の朝なんでかなぎといたのかな?!」
「え…えっとね……」
放課後、はるかに女子会をしようということで西条さんと私は喫茶店に連れていかれました。
なるほど、こういうことですね。
私は二人にかなぎくんが昨日私の家に泊まったこととそのいきさつを話しました。
「にゃるー、そういうことねー。」
「つまりはあんたのせいじゃない、つちうら。あとでもう一回謝っときなさいよ。」
「あ、あのね、西条さん…。」
「だからその目がうざったいって言ってんのよ、あかがみ。
もういいって、私はもうかなぎのことは諦めたわよ。」
「え?!そうなの?」
「もともとちょっといいかなーって思ってただけだしね。
あんたたちにいちゃいちゃされると冷めるわよ、そりゃ。」
いちゃいちゃした覚えはありませんが…。
「ってかなおにゃんはかなぎのどこがよかったのさ?」
「顔よ。」
私は西条さんのこの堂々と物を言う態度が好きです。
「あー、まぁかなぎって顔は悪くないもんね。ヘタレだけど。」
「そーなのよ、顔はいいけどちゃんと話してみてわかったわ。どーしようもないヘタレね、あいつ。」
女子会って怖いのです。
「か、かなぎくんって顔いいほうなんだ…。」
恋愛経験、ましてや恋なんてしたことなかった私には顔の良し悪しなんてわかりません。
かなぎくんの顔が好きかって言われたら別に普通です。
「んにゃー、よくは知らないけど結構人気あるみたいだよー。
ありり、かがみん、ピンチじゃね?」
「え…え……」
「ってか前も聞いたけどあんたはどうなのよ?かなぎのこと好きなの?」
「…………うん…好きだよ…。」
「ふぶへぁっ!!」
はるかがいきなりコーヒーを吐き出しました。
砂糖を五個もいれるからですよ。
「まぢ?!まぢ?!
前までわかんないって言ってたじゃん!!」
「え…えっと…前まではよくわかんなかったんだけどね…今は好きかなって思うの…。」
「かがみん…」
「じゃぁ両想いじゃない。
それでお泊まりってことは…」
「なんもなかったってば!
なんも……なかったよ……」
あれ?なんか悔しいのです。
私がなんか期待してたみたいじゃないですか。
「…まぁ、あいつはダメなやつだよ。
どんまい、かがみん!」
「両想いなら簡単なことじゃない。
付き合っちゃいなさいよ、あんたら。」
「………私にとっては難しいことだよ…。」
「かがみん…」
以前にも述べたように私と付き合うということは相手にとって過酷なことなのです。
私の隣に常にいてほしいなんて頼めるわけがないのです。
お母さんがそうであったように耐えれるはずないのです。
「よし、かなぎに話してみようか!!」
「そうね、それがいいわ。」
「え?…え?なにを?」
「なにってかなぎにかがみんが好きってことを伝えに行くんだよ?」
「な、なななな……!」
「あかがみ、なんで私たちがこんなことするかわかるかしら?」
「……わかるようなわからないような……」
「面白いからよ!」
「やっぱりわからないよ!!」
「ひゃひゃひゃ!!
いやならあたしらをとめてみるんだよ、かがみん!!
なおにゃん!かなぎに電話だ!!
今から学校に呼び出せ!!」
「まかせなさい!」
「二人とも!もう少し考えて行動してよー!」
「あんたに言われたくないわよ!
つちうら、学校にいくわよ!」
「ほいにゃ!」
「あ!ちょっと待ってよ!!」
お会計くらいしてから行けですよ…。
お会計を済ませて外にでたときにはもう二人の姿はありませんでした。
「が…学校にいかなきゃ……!」
かなぎくんとこれ以上の関係を望んでいないって言ったら嘘になるかもしれません。
でも私は今のままで十分すぎるくらい幸せなのです。
かなぎくんと付き合うとかそういうのは妄想の中だけでいいんです。
お前はそこにいるだけで人を不幸にするんだよ!
みんなが大丈夫だって言ってくれてもお父さんの言葉が頭から離れないのです。
私の幸せのためにかなぎくんを不幸にするのは私には耐えられないのです。
「はぁ…はぁ」
「あ、かがみ。」
教室についたらかなぎくんがいました。
黒板の前にははるかと西条さんがいます。
もう夕方ってこともあり他の人はいないみたいです。
もう二人はかなぎくんに話しちゃったのかな……。
「かがみも呼ばれたのか?
なんか土浦たちが話があるって言うから来たけど…」
よかった。
間に合ったみたいです。
「はいはーい!!
かがみんが来たことだし、暴露大会はじめるよー!!」
「……は?」
「ちょ…つちうら、いきなりなんなのよ…」
なにを言ってるんでしょう、この人は。
グルのはずの西条さんさえ戸惑ってます。
「まず、うちから言っちゃうね!!
うちが中学生のときの話だよ!」
「はるかの中学のはなし…?」
「うちね、中学の頃はずっと友達いなかった。
友達どころか話すやつすらいなかったよ。
話しかけても無視されるだけ。
うちは友達が欲しかったのに。
楽しくみんなと話したいだけなのに。
辛くて苦しくて学校に行かなくなったよ。
死のうと思ったこともあったよ。」
「はるか…」
意外です。
今のはるかからそんな過去は想像もできません。
私ははるかが私に初めて話しかけてくれたときのことを思い出しました。
あの感情は嘘じゃなかったんだね。
「高校に入ってそんなことなくなったけどね。
うちが変わったのか周りがいい人に恵まれたのかは知らないけど。
はい!終了!!辛気臭い話ごめにゃ!
つぎ!なおにゃんね!!」
「は?私もなの?」
「もちろんだよー!
なおにゃん!空気よんで、よんで!」
「……はぁ…まぁいいけど。
私、中学のころ友達を殺したわ。」
「……え……?」
「…な…なおにゃん……
冗談言ってないでさ……」
「………」
「…なお……にゃん……」
「その子ね、いじめられてたの。
毎日毎日陰湿ないじめをクラスのみんなから受けてたの。
私は許せなかった。
だからその子をいじめるやつを懲らしめたわ。
殴って怒鳴ってケンカして。
それでね、その子ね…ありがとうって笑ってくれるの…。
いじめを止めるたんびにありがとうって…
そのたんびにいじめがエスカレートしてるなんて知らずに浮かれちゃって…私……
………私が殺したの……あの子のこと…
私が追い詰めたのよ……」
「さい……じょうさん……」
あゆみちゃんが西条さんはよく地元に帰ってくるって言っていたのを思い出しました。
きっとその子に会いに行ってたんだと思います。
「なに泣いてんのよ、あかがみ。
軽蔑してくれてもいいのよ?」
「そんなこと……!
そんなこと…するわけないじゃん……。
西条さんだって辛いはずだもん…。」
「……はぁ。あんたはそういうやつよね…。
まぁ私の話は終わりよって、うわっ!?」
「ごめん…なお…
うち…うちそんなつもりじゃ…!」
「あんたまでなによ…めんどくさいわね。
どんなつもりだったのよ?」
「うちはただ…かがみんに…」
「……はぁ。
あかがみ、つちうらはともかく私はどんな形であれ友達を殺したわ。
私に幸せになる権利があると思う?」
「なんでそんなこと言うの!?
あるに決まってるじゃん!!
私は幸せになってほしいよ!!」
あゆみちゃんが言っていた言葉が私の脳裏で何度も浮かぶ。
私たちは幸せになるために生きてるんだよ。
「権利なんてよくわからないよ…。」
「ありがとう、あかがみ。
あんたがそういうやつでほんとうによかったよ。」
「西条さん……?」
「でも私たちも同じよ。
あんたはよく自分を責めるけど
私たちはあんたにもっと幸せになってほしい。
かなぎをさ、自分をさ、もっと信じなさいよ。
かなぎは頼りないとこあるけど大丈夫よ。バカだから。
あんたが幸せにしてやりなさい、あかがみ。」
「西条さん…………」
「か…かがみ?」
「……うん、そうだね。
ありがとう、西条さん、はるか。」
お父さん、私はあなたを不幸にしたかもしれない。
でも私だって生きてるんだよ。
幸せになりたいし、好きな人を幸せにしたいよ。
「かなぎくん……
わ…わわわ私と付き合ってください!」
「へー、それでかがみちゃんはそのまま恋人ができちゃったんだ。」
ゴールデンウイークに私と西条さんは一緒に地元に帰り、あゆみちゃんの家にいます。
「う、うん…。
西条さんとはるかのおかげかな。
はるかの言動はいまだにいまいちわからないけど。」
「考えても無駄よ。
ノリって本人が言ってたわ。」
「あはは…はるからしいけど…」
「うん、そうかそうか。
かがみちゃんが頑張ったならあゆみも頑張っちゃおうかな。」
「え?なにを?」
「なおちゃん!!ずっと好きでした!
付き合ってください!!」
「ええー?!」
「お断りよ。」
「ええー?!」
「……か…かがみちゃん!!
あゆみは挫けないよ!!あきらめないよ!」
「う、うん!!
頑張ってあゆみちゃん!!
私、応援するからね!」
「……なんなのよ、あんたら…」
「ちなみに西条さんまんざらじゃないみたいだよ?」
「え?!ほんと!?」
「ちょっとあかがみ!
あゆみになんて言ったのよ?!」
幸せってなんでしょう。
その形は人それぞれだと思います。
私の幸せは明白です。
はるかが、西条さんが、あゆみちゃんが、お母さんが
かなぎくんが教えてくれました。
私の幸せを願ってくれる人がいます。
私が幸せを願っている人がいます。
私はそれが幸せです。
私にとってこれ以上の形なんてありません。
今日も私は幸せなのでした。
かなぎくんはやっぱり最後までかなぎくんでしたね。
かげうすいなー。




