037 領主が町にやってきた!
第37話 領主が町にやってきた!
俺たちがやっと町にたどり着くと、南門のところでゴバックさんが待ちかまえていて・・・
『あの~何で俺は連行されてるんでしょうか?』
「連行?違うよ・・・コレは念のための道案内だよ!」
『ゴバックさん・・・何があったか知りませんが・・・腕が痛いです・・・逃げませんから少し力を・・・』
(本気で意味不明だぞ!門を入ったらゴバックさんに腕をひっつかまれて・・・有無を言わせず俺の自宅まで道案内って・・・何があったんだ?)
俺がゴバックさんに連行されて自宅に近づくと・・・
「おぉ~~~アレン~~~~!!会いたかったぞ~~~」
(ごふ!)←(俺が何者かに襲われ体当たりを喰らった音ね!)
「「サピオ!!」」
「サピオ様!」
(サピオ?どこかで聞いた記憶が・・・って、領主様の名前じゃなかったか?)
俺の目の前にはやけにハイテンションで、現在進行形で俺に抱きつきハグしてくる小柄な中年のオッサンが・・・
「あぁ~アレだ・・・サピオ・・・少し落ち着け・・・」
「サピオ様、お立場を・・・」
何だか遠い目をした親父と苦笑する母さん、おろおろとしている確か去年来た収穫調査官・・・
(なんだこのカオスは?)
俺の意識がフリーズしたまま再起動できずにいると・・・
「まあなんだ・・・コレが俺の従兄弟で現領主のサピオ・サウスウッドだ・・・危険なほどの害はないから諦めろ・・・」
『へぇ?今ナント?』
(現領主とか親父の従兄弟とか聞こえたけど・・・コレはないよね?)
「だ・か・ら~~コレがこの村の領主だ!」
「いい加減にサピオもアレンから離れろ!(ゴチン!)」
親父が目の前で領主の頭をぶっ叩いたぞ・・・良いのか?
俺の心配というか状況把握を飛び越え想像すらしていなかった現実が襲いかかってくる・・・
叩かれたことを親父に抗議中の現領主?は、うちの親父と漫才のようなやりとりを交わしつつうちの中に入っていく・・・
「アレン、お帰りなさい・・・いつまでも惚けていないでうちの中にはいるわよ!」
母さんが声を掛けてくれなかったら・・・たぶん俺は朝までそこで現実逃避を続けていただろう・・・
その夜のことはほとんど記憶に残っていなかったが・・・旅の疲れからか領主(もう「様」なぞ神に誓って付けんぞ!)が、早めに客筆に引っ込み寝たらしい頃に俺の精神が復帰し状況が理解でき始めた・・・
今回の処置(ゴバックさんによる連行)は、実は5年ほど前にお忍びできた領主(ミーアの誕生を祝いに来た)に今回のように圧倒された俺が、その時のことを記憶していて逃亡しないように念のため決行されたそうだ・・・
(つうか・・・そんな濃い記憶無いぞ・・・あ!きつすぎて記憶から抹消してるのか?)
で、まあ・・・アレは本当にうちの村の領主で、親父の従兄弟だって言うのは事実らしく・・・精神的な疲れを色濃く残した関係者に比べ、ウキウキと浮かれた感じで朝飯を食って「視察だ!視察だ!」と浮かれた感じで飛び出していった・・・
(親父・・・頑張ってくれ・・・俺はもうダメだ・・・)
俺は、ちょっと怯えた感じのミーアの頭を優しくなでながら「大丈夫!大丈夫!」と自分にも言い聞かせるように語りかけ・・・ミーアが落ち着いたところで昨日俺が連行されてからの確認をするためケントを捜しに家を出た。
『明日から収穫祭だし・・・自警団本部か露店の割り振りで広場にでも居るだろう』とアタリを付けまずは自警団本部に向かった。
『おはよ~~っす!ケントは来てますか?』
「ん?あぁ~アレンか、ケントなら広場で露店の割り振りをしてるはずだぞ・・・」
『ありがとうでした~俺も行きますね~』
「おう!もめないように公正にな!」
『はい!』
自警団本部で当番の人と挨拶を交わし、ケントの居場所を確認した俺は、広場で露店の割り振りをするべく準備してるケントの背後に忍び寄ると・・・
「がし!」←(俺がケントにチョークスリーパーを決めた音!)
『おはよう親友!昨日は世話になったな!!おかげで精神的に死にかけたよ!コレはささやかなお礼だから、甘んじて受け取ってくれ!返品は不可だからな!』
「うぐ・・えほぉ・・・ぐるじい・・・」
「まっでぐれ・・・あれば・・・」
『何だよ!何か言いたいのか?』
少し力を緩め尋問をすると・・・
「ごほ・・・げぉ・・・あ、アレン・・・昨日の場合は不可抗力だ・・・」
「立場が逆だったらお前俺を助ける自信があるか?そ、それに・・・あんな人だとは俺も知らなかったんだ・・・」
『ほう・・・どこから情報を仕入れた?』
「さ、さっき俺と親父の前に突然現れて・・・親父の名前を叫びながら親父を押さえ込んでいた・・・」
『え!ゴバックさんも・・・』
驚きのあまり手を放しケントの話に聞き入ると・・・自警団本部にいた時に収穫調査官に同行してた領主が現れ、旧知のゴバックさんを発見し昨日の俺のようにゴバックさんを扱ったらしい・・・
「親父でも無理なのに俺に何かできると思うか?」
『ん~~~判った、今回の件はコレで終わりにしよう・・・考えるだけでも精神的ダメージが・・・』
「判ってくれて俺も嬉しいよ・・・アレはもう俺も思い出したくないし・・・」
関係者全員に精神的ダメージを与える領主・・・これから下手をすると10日ぐらいはつきあわなければいけないのか・・・
俺とケントは、とりあえず記憶に封印を施し自分に与えられた仕事に専念することで過去と未来を見ないことに決めた!
『まあ、こんなもんか・・・』
「だな・・・後は、今日の昼過ぎに第二陣が来るからそれが到着してからだな・・・」
『しかし・・・やっぱり今年は多いな・・・』
「いつもの数ぐらいの行商人と露店はもう来てるからな・・・この分だと、倍の200は軽く超えてひょっとしたら250~300は来るんじゃないか?」
『まあ、領主も来ちゃってるし・・・とりあえず昼飯にしよう!後のことは第二陣が来てから考えようぜ!』
「そうだな・・・」
昼食に家に戻ったが、親父と領主達一行は自警団本部で昼食を取るらしく不在だったので助かった・・・
心配していた行商人と露店商や旅芸人も、午後に到着した第二陣はいつもの年と同じぐらいで、めざとい連中が規模の大きな領主達一陣に同行してきたので第一陣が倍の規模になっただけだったようだ・・・
俺たちは多少のもめ事はあったモノの・・・どうにか割り振りを終えて自警団本部へおそるおそる向かい、親父も領主も居ないことが判ると速攻で報告を済ませ広場に戻って設営の進む露店を眺めだした。
露店を眺めていると・・・
『あ!フォードさん・・・』去年仲良くなったフォードさんが見えたので露店に向かうと・・・
(大きな三輪車が10台も置いてある・・・)
『こんにちは、フォードさん・・・』
「おぉ!アレン君!!久しぶり!」
「試作品のチャリはどうだった?君の助言のおかげで三輪タイプにしてブレーキと荷台を付けたら好調に売れてね~おかげでうちの親父達も大喜びだよ!」
『はぁ・・・それはおめでとうございます!試作品は見ましたが最近バタバタと忙しくて試乗がまだなんですよ・・・』
「そうか・・・まあ、乗ってみて気になるところが有ればドンドン教えてくれ!」
『はい・・・とりあえず試したら感想をお伝えしますね~』
「そうそう・・・君のお兄さんのウイリアム君、彼も良いセンスをしてるね~うちにあったガラクタから新しい商品をもう3つも完成させたよ!」
「もしその気があるなら、将来はうちの工房に来て欲しいと親父達が言ってるぐらいだから優秀なんだね~」
『そうなんですか!本人が聞いたら喜ぶと思いますよ~僕の方からも新年に帰ってきたら言いますが、是非誘ってやって下さい!』
「ああ、当然そうさせて貰うよ!」
『ところで・・・そちらの方は?』
俺が露店の奥でチャリを組み立てている20歳ぐらいの人物につて聞くと・・・
「あ!コレは紹介が遅れてしまったね!弟のフィルだ、仲良くしてやって欲しい」
『弟さんだったんですか・・・初めましてこの村に住んでるアレン・ウッドです』
「ん・・・宜しく・・・」
「ちょっと人見知りというか・・・ぶっきらぼうだけど根は良いヤツだから仲良くしてやって欲しい」
『はい、判りました!それじゃあんまり長居してもおじゃまでしょうから・・・露店の準備頑張って下さいね!』
「ん・・・じゃあね~落ち着いたら又来てくれよ?」
『判ってますよ!その間に出来れば試乗もしておきますから・・・』
「頼んだよ~」
俺は露店から離れケントの元に戻り又露店を眺め始めた・・・
何だか色々伏線ぽいのが出てきてるけど・・・どう回収しようか・・・
さらには暴走を始め長期化したお話しにどう決着を付けるかもお悩み中><




