036 領主様が町にやって来る!
第36話 領主様が町にやって来る!
みんなをなだめてから、寄り合いでの話し合いで確認された事実は・・・
①例年の倍以上の規模で行商人や露店商が村にやってくる。
②ほぼ10年ぶりに村に領主が訪れる。
③両者とも大魚亭の利用を打診してきている。
俺たちは来年の夏までに・・・とか悠長に考えていたが、世間は甘くなかったらしい・・・
噂を聞きつけ、商人達はかなり前から商工会などを通じて利用の問い合わせが来ていたらしいが・・・ハッキリ言って村民や噂で集まる行商人だけでも手一杯だった親父達は、全部断って放置してたらしいのだ・・・しかし、ここに来て領主まで動かして確認しようと動いてる商人が居るらしい・・・
(あぁ~マジかよ!権力闘争とか利権とか勘弁してくれよな・・・)
「あ~判ってると思うが・・・領主の一行は断れない!一応少人数でと伝えてあるので20人は超えないはずだが・・・現実的には、領主・収穫調査官・護衛で10人ぐらいだろう・・・』
『でだ・・・領主が懇意にしてる商人が2~4人のたぶん護衛込みで10人~20人・・・行商人や露店商が現時点で30組・・・』
「無理だ・・・」
「多いな・・・」
「まあ、多いのは判ってる・・・領主と商人の話は断れないだろうが・・・行商人と露店商に関してはくじ引きか先着順で何組か受け入れれば問題ないだろう・・・」
ここでゴバックさんからも鋭い指摘が来る!
「村長・・・テントとか利用で良いから見に行きって言うヤツが居た場合どうするんだ?」
「ん~~~現実的に対処できないので、放置というか・・・勝手にやって貰うしかないな・・・」
「夏の時は、昔の宿泊拠点に泊まり込んで対応したわけだが・・・今回もそうなるのか?」
「ん~微妙だな・・・一応、村近郊の拠点に関しては近隣の狩猟団→村民→行商人等旅行者って順番で、利用の優先順位についての不文律があるが・・・正直、今後のことや噂を考えるとわしらがテントという選択もあり得る』
「滞在は何日ぐらいになるのかね?」
他の狩猟団メンバーも質問してきた・・・
「ん~そいつも領主の心持ちしだいだが・・・一応2~3日で終えてくれるように頼む予定だ・・・たぶん大丈夫だと思う・・・」
「まあ・・・村長は親類だし・・・大丈夫そうだな・・・」
ここまで話した時にすっと!手を挙げ発言を求めたメンバーが・・・
「提案なんだが・・・管理人夫婦で2部屋使ってるエリアの残りに2部屋空いてると思う、そこに村の宿の手伝いをしてる娘や、狩猟団の娘を8~10人ぐらい臨時で雇って今回の下働きをさせてはどうだろう?」
「どうせ部屋割りを考えると、管理人+下働きで4部屋・領主様で1部屋・収穫調査官で1部屋・護衛で2部屋・・・残りの8部屋を商人とか露店商にって事になると思うのだが・・・力仕事や、調理用の獲物を狩ってくるのはわしらの仕事だが・・・とりあえず冬に使ったテントが有れば、宿泊拠点を露店商などに押さえられても平気だろうし・・・」
結構考えられてる話に親父が考えながら答え始める。
「ん~宿の手伝いか・・・馴れてる人間が指導すれば・・・それが良いかもしれないな・・・」
発言者が増え始め騒々しさをレベルアップしていく寄り合い・・・
「行商人は、普段から村に来てくれてるザットリーが希望してるなら優先させた方が良くないか?」
「いや、つきあいは浅いが味噌や醤油を持ってきてくれてる商会の方が・・・」
「それを言うなら、まとめ役というかそれぞれの元締めを・・・」
それぞれ色々な意見が出てきてだんだんまとまりが無くなった頃・・・親父がさらなる提案を持ち出してきた。
「あ~行商人と露店商の利用枠だが・・・競い合わせて催しにしてみないか?・・・どうせなら村に利益があるように、食品部門や道具部門・遊興部門って具合に分けて、安くて良いモノを村に持ち込んで商売してくれてる商会を村の保養所に招待と言った形で利用して貰えば、さらにモノが安く買えたりして村の利益になる可能性があると思うのだが・・・」
「ん~良いアイデアだとは思うが・・・間に合うのか?村長・・・」
「これ以上複雑にするのは、今回は・・・」
「とりあえず目の前の問題を片づけてから、来年になら・・・」
狩猟団メンバーの否定的意見で考え直した様で親父も・・・
「ふむ~やっぱり少し先走り過ぎたか・・・」
狩猟団や商工会等、村の大人達が話し合いを続ける中俺はずっと黙って聞いていた・・・コレまでの経験上・・・調子に乗って話すと、必ずと言っていいほど俺にやっかい事が回ってくる・・・
チラチラと親父やゴバックさん、ケントが俺にも意見を言え!と言うような目線を送ってくるが・・・ココは無視させて貰うよ!
・・・
どうやら今夜は意見の調整が付かず、明日に持ち越しになったようだ・・・かなりまじめな話し合いだったからか・・・定番の酒もほとんど飲むことが無く、寄り合いが終わった後は珍しくしらふの親父と家に帰る事になったが・・・
「アレン・・・寄り合いの間ずっと黙っていたのはなぜだ?・・・俺やゴバックもそうだが・・・何人かがお前に発言を求める視線を送っていたのに気が付かなかったわけではあるまい!まったく・・・狩猟団でも注目され始めた若手のリーダーだというのに・・・」
(若手のリーダー?)
『父さん!』
「ん?何だ?何か言うことでも思い出したのか?」
『言う事って言うかね・・・僕は11歳で、領主様の接待なんてどうやるかまったく知らないことは覚えてる?基本も基準も知らないのに、まともな意見なんて出せると本気で考えてるの?』
(まあ・・・本当は何となく判るんだけど・・・ココはコレで押さなきゃ!)
「なんだ・・・そんなことか・・・領主の接待なんて考えないで良いぞ!あいつには貸しがあるからな・・・だいたい、アレンだって少しは知ってるだろ?うちの村の裏事情を・・・」
『まあ、それは・・・少しは聞いたけど・・・』
『現状での僕の考えを話すと・・・みんなの意見を纏めれば何とかなりそうでしょ?って事と、商人と行商人を優先した方が良いんじゃないかな?って事ぐらいだよ・・・』
「ふむ・・・対応はみんなの意見を纏めるのは判るが・・・商人と行商人優先はなぜだ?」
『そりゃ~村までで終わりじゃなく大魚亭まで、商人や行商人が物資の輸送をやってくれたら楽になるからだよ!』
「なるごど・・・そう言うことか・・・」
『まあ、運んでくるだけの片道だとちょっと厳しいから・・・領主様から開発費用の一部でも出して貰って、来年は移住者とかを受け入れて分村レベルまで開拓しちゃった方が良いかもね~』
『あと・・・出来れば、移住者に炭焼きとか陶芸の技術者が欲しいところだし・・・ホテルとか旅館の経営が判る人材がいればさらに良いかも・・・』
「炭に陶芸?か・・・それと経営が判る人な・・・」
メモを取りながら俺の話を聞く親父・・・そうだな~後は・・・
『うん・・・後は、偉い人が今後も使う可能性があるなら、貴賓室というかそれなりの建物か部屋を用意しておいた方が良いかも・・・宿屋さんにでも色々聞いてみれば?どうせお手伝いの人を何人か借りる交渉があるんでしょ?』
「そうだな・・・聞いてみるか・・・」
こうして何とか責任回避に成功したように見えたが・・・翌日の寄り合いで親父のヤツが俺の意見を調整に使い、またしても発案者は俺だと言い放ったので雑用係で楽をしようと考えた俺の思惑は見事に砕け散った。
(いい加減この内政ゲーム終わらせたいな・・・狩猟系のゲームの方がまだ精神的に楽だし・・・つうか・・・俺の悠々自適異世界ライフはどこへ行った?)
でもな~現状だと驚くほど進んでる部分があるかと思えば、「何でだよ!」って逆に驚くぐらい遅れてることも多いんだよな~特に、日本で飽食の時代に育ったらしい記憶がある俺にとって、単調な食事って言うのは拷問に等しいよな・・・
まあ、俺の記憶にある小説の設定じゃキチンと飯が食える状況を幸運と思うしかないんだが・・・そうなると逆に村長の息子とか微妙に有る社会的影響力って言うのが恨めしく思えるな・・・コレが大貴族とか王子とか言うならかなりのことが出来そうだけど・・・辺境の村の村長の息子だからな・・・次期村長候補って言っても、苦労しながら多少生活環境や食事事情を変えるのがやっとだからな・・・
イカンイカン・・・状況がイヤで現実逃避していたらしい・・・
俺は頭を軽く振ると目の前の現実に向き合う覚悟を決め、準備作業を手伝っているのだが・・・その俺の目の前には、兄貴の親衛隊メンバー中4人が不機嫌そうな顔で並んでいる・・・
彼女たちは、収穫祭の5日前だというのに領主接待のため宿のお手伝い2名と、別の彼女たちよりもう少し年かさの狩猟団メンバーの娘さん2名の計8人で、事前準備のため大魚亭に向かってる真っ最中だ・・・
んでもって俺はと言うと・・・彼女たちを護衛して大魚亭に向かい、現地で有る程度の指示を出した後とんぼ返りで村と湖畔の間の害獣駆除をしつつ、村に戻って領主様に挨拶が待ってるそうだ・・・
まあ、親に厳命されて向かうらしいし不機嫌な彼女たちだが・・・最近めきめきと身体が大きくなり小柄な大人ぐらいにまで成長し、狩猟団の正式団員で次期村長と言う立場になった俺には何も言ってこないどころか、出発前に会った時・・・多少びくつきながら今までの態度を謝罪してさらに「道中の護衛を宜しくお願いします」なんて言われちゃって、声こそ上げなかったがビックリさせられたその後は妙に尻の辺りがむずかゆく・・・ケントと苦笑した・・・
三つ子の魂百までじゃないが、今まで彼女たちのジャイアニズムの犠牲者だったわけで・・・非常に気まずい!
『ふう・・・何とか間に合いそうだな・・・』
「だから言ったろ!心配しすぎだって・・・」
俺は、事前準備用の人員を大魚亭に護衛した後、街道での害獣駆除をしつつ村を目指していたが、途中の宿泊拠点を出て少し行ったところで、5頭のウィンドウルフの追跡を受け目障りだったのでおびき寄せて狩ろうとしたところに、運悪くなのか・・・彼らの獲物予定だったのか、レッドディアが背後から飛び出してきて現場が混乱してしまい、2頭逃がしてしまったのだ・・・
おかげで追跡と駆除で時間がかかり、昼過ぎには村に到着してる予定がすでに夕刻を過ぎている。
『そろそろ領主様も到着なさっているはずだ・・・急ごう!』
「まあ・・・あまり変わらんとは思うが・・・急いだ方が良いのは事実だな・・・」
「最悪、明日の朝までに戻るって事になってるんだから大丈夫だろ?」
『全員騎乗!』
最後の休憩を取った俺たちは、急いで村を目指して馬を走らせる・・・




