026 長い冬の時間
読みづらいとのご指摘が有りまして・・・とりあえず主人公アレン君のセリフを『』で、その他の人物のセリフを「」で表現するように変更してみました。
第26話 長い冬の時間
色々あったけど兄さんが王都に戻る日が来た・・・
しばらく会えないことが判ったのか、ミーアが「おぅにいちゃ、イヤイヤ」とか言って兄さんにしがみついて泣きながら離れず、思わず兄さんを縛り付けて村に残そうかとも考えたけど・・・
さすがと言うか・・・夏ぐらいにはお土産を持って又帰ってくるから、良い子にしてたらすぐだとか・・・笑顔と共にミーアを見事説得しちまった。
(正直俺は、この時ほど兄さんすげ~って思ったことはないね!)
兄さんが王都と村の往復に使う「獣車」って言うのを間近で見たけど・・・
すげーぜ!異世界!!とか叫びそうになった。
なんと言っても2mほどのメッチャでかい狼「シルバーウルフ」って種類らしいけど、子供の頃からたらし込んで使役する超高級騎獣って事だった。
この騎獣の凄いところは、スピードもそうだけど真価はそのスタミナ!・・・なんせ、馬車だと1週間はかかる町まででもわずか2日で到着するデタラメぶり・・・
聞いた話だと、冬に雪がある地方でしか真価は発揮しないらしいけど、兄さんが乗り込んだ大型のソリを5頭で引いてその性能なんだから感心しちゃったよ!
分厚い毛皮に包まれ例え吹雪の中でも行動可能で、方向を覚えてるのか道を記憶してるのか、一度通った道なら暗闇だろうが何だろうが平気で進む超お役立ち生物!
維持費が凄いらしいから今は無理でもいつかは俺も飼ってみたいな~などと、有る意味子供らしい夢まで芽生えちゃったぐらいだ・・・
まあ、そんなうらやましい生物が引くソリで兄さんは再び王都へ旅立っていった。
(兄さん、リストの件頑張ってね~頼んだよ~)
その後の俺と親父は、ゴバックさんケントの親子と一緒に組み立て式小型船の制作に没頭した。
(たまにミーアと遊んだり息抜きはしたけどね~)
一ヶ月があっという間に過ぎた・・・
いや~模型では結構良さそうなのに、実物は難しいよね~
今は厳寒期で、ほとんどが野獣も出ない時期なので当然狩りもなく、俺たちは毎日組み立て式小型船の制作をしてるがいまだに完成していない・・・
『やっぱり胴体側の強度が不足してるね・・・』
そういえば、今のところ全部木製で骨組み組んでるけど、竹ってこの辺にはないのかな?
『父さん・・・竹ってこのあたりにはないの?確か竿に使ってたと思うけど』
「竹?竿に使ってるのと同じのなら、村はずれの川向こうにいっぱい生えてるぞ」
『アレを骨組みに使ってみない?』
「ん~・・・って事は、縦方向に・・・こんな感じで使うのか?」
親父は構造図に軽く線を描き俺の考えを確認する。
『そう!そんな感じで、こんな感じに船体の側面に4本竹を使うか、必要なら何本か面の途中で補強して・・・』
『で・・・船底を丈夫な木で作って前後は隔壁って言うか覆い隠す感じで』
『ついでにアウトリガーも皮で覆って骨組みを竹と木で作れないかって考えてるんだけど・・・』
「ほぉう・・・良い感じがするな・・・」
「じゃあ、今日は疲れたから後は休憩して一服しながらこの案を煮詰めるか!疲れてる時に考えても良い答えは出ずらいからな・・・」
「本当ならここらで酒でも飲んで一端ガス抜きしてからが良いんだが・・・さすがにお前らにはまだ早いからな・・・」
親父とゴバックさんは、残念そうに俺とケントを見てくるが・・・
(10歳児に、あ!年を越したから11歳か、誕生日になってからだったか?・・・まあどっちにしろ子供に無茶言うなよ!)
俺は年齢で混乱してたけど、正解は加算は誕生日だが扱いは新年!つまり、俺の現状は10歳だが扱いは11歳って事だね!
この扱いは成人に関して、15歳になる時がバラバラだと面倒だから年明けで統一って事らしいが・・・結構乱暴かもね~今のところほとんど関係ないけど・・・
まあ、年齢の話はおいておいて・・・俺たちは4人で温泉に入り身体をすっきりさせた後、俺とケントは果汁のジュースで親父達は軽くワインを飲んでくつろぎながら話を続けたけど、現状で特に欠点もなかったので天気が良ければ明日にでも採取に行こうって流れになって・・・親父達は飲み会に移行した・・・
その日の夕食はゴバックさん達も加わってにぎやかだったけど、メインは最近村でブームの米食だ!
そう、最近村では米を食べるのが流行している。食べ方としてはパエリア?って言うかフライパンや浅鍋でスープを使って炊きあげるというか煮込むというか・・・各人お好みで!って感じだ・・・
当然始まりは我が家・・・最初は残った飯でバター醤油のチャーハンを作って喰ってたのだが、さすがに醤油の在庫がほとんど無くなったので、こんな感じだったよな~って試したら意外と美味しかったので家族に作り方を公開したら、いつの間にか村でブームになってた・・・
親父は今年の作付け面積が・・・とか割合が・・・とか色々言ってたけど、俺は知らない・・・だってまだ子供だも~ん!
まあ、それで出したパエリアもどき・・・大好評でしたね~
俺が喰っても美味いんだもん・・・うちの母さんてやっぱり料理スキルを持ってるか来る前の異世界で持ってたんじゃないか?
イケスの実験も今のところ大成功で、石作りだからリバーシュリンプはもちろん魚も泥臭さが抜けて凄く美味しいと大好評だ!
翌日、俺たちは竹の採取と魚・リバーシュリンプを狙って釣りに出かけた。
(まあ、美味しいと食が進むからね・・・うちのイケスには、もうほとんど魚も当然リバーシュリンプも居ない・・・)
橋もない川をこの時期渡るのは辛そうだと思ったけど、親父があっという間に雪で川に橋を架けたから、生活の知恵って大切だな~って思ったよ!
あっさり川を渡って竹林に到着したら竹を切り出して採取終了!川に戻って釣り大会だ!
ケントは当然収穫祭で買った継ぎ竿にタイガースパイダーの糸を使って俺は竹ののべ竿に同じくタイガースパイダーの糸で釣りを開始した・・・
天気は良かったが、さすがに厳寒期で魚に活性が低いのかあまり釣果が無く、念の力を込めていないから単なる防水の箱ってだけの「クーラーボックス」に10匹ほどの釣果を入れ、ソリに竹と一緒に纏めて乗せて4人で引いて家に帰った。
うちに着いて風呂で身体を温めた後、お茶を飲みながら今日の反省会をしたが、みんな竹については満足していたが釣果には納得できていないようだった。
まあ、イケスを毎日見てると判るけど・・・今の時期、魚はほとんど動かないがそれに輪を掛けてリバーシュリンプはまったく動かないんだよね・・・ひょっとして冬眠してるんじゃないか?ってぐらい動かないけど、網ですくうと結構動くので活性を下げ餌の少ない時期を乗り切る本能なんだろうな~
そんな話をしてると、俺は冬の釣りの定番「ワカサギ釣り」を思い出しポロっと言ってしまったが・・・これがまずかった・・・
どんな釣りか根掘り葉掘り聞かれ問われるまま答え、話がワカサギの天ぷらにまで及ぶともうすでに遠征を決定づけていたような物だった・・・
結局、明日準備をして南の湖に遠征してワカサギ釣りを試すことになっていた・・・
(成功したら、狩猟団の冬の獲物になるかもしれないそうだ・・・)
まあ、今年は豊猟でそれほど必要もないけど冬場の食料って言うのは貴重品らしいからね~
俺やケントはピンと来ないけど、開拓初期に苦労したらしい親父達はとにかく食料をため込み安心したいようだった。
翌日の準備は大変だった。
まずは釣り竿・・・たまたま船用に竹を取ってきてたから細い枝を使って竿を作れたけど、そうじゃなかったら確実に間に合ってなかっただろう・・・
次に仕掛け・・・ワカサギ釣りでは小型の針を数多く仕掛けに使ってるけど誰もそんな数の針を持ってなかったので、あわてて道具屋や他の村人に譲って貰い数をそろえ仕掛けを作った。
さらには、防寒対策・・・底の開いた都合の良いテントなんて存在してるわけもなく、悩んだ末に船用に採取してきた竹の一部を使って骨組みを作り、船に使う予定だったスライム皮を張り付けた獣の皮と同じく布に貼り付けた防水性の物を流用して、ん~遊牧民が使うようなテントもどきの構造図を書いて説明して納得して貰った。
問題は暖房だった・・・長時間氷上で釣りをするわけだし、拠点に戻れても広いから暖めるのには結構時間がかかる。
幸い湖近くにある拠点は、元々水場に来る獣を狩るために湖畔近くに建ってる宿泊用らしいけど、ここ二ヶ月は誰も行ってないらしいからどうなってるか判らないし、最悪テントで生活って事もあり得る。
結局、大きな空樽を上下二つに切って土を入れてから大きな鍋というかフライパンというか、底の浅い大鍋を入れその上で火をたくことにした。
『父さん・・・本気で明日行くの?もう少し準備に時間を掛けた方が・・・』
「ん~それもそうなんだが・・・とりあえず何とかなりそうだしな~」
「それに今を逃すと又吹雪が始まって、その後は春に向かってしまうからな~」
「一応ソリも小型の物だが幌が有るので最悪、テント代わりにも出来るし」
「俺は、最低限の安全は確保されてると判断してるが、お前はどうだ?」
『ん~最低限の安全て言うなら確保は出来てると思う』
『後は、用心のため下着を含めて多めの着替えと、毛布を1人最低4枚以上持って行くことにすれば防寒は大丈夫だと思う』
「ん~もう少し用心して一人最低6枚と防水布を2枚以上持って行くことにしよう!」
『そうだね・・・防水布はもっと余計に持って行っても良いかもしれない、そんなにかさばる物じゃないし・・・』
『後は、用心して薪を現地調達じゃなく全部自分で持って行くぐらいで良いんじゃないかな?』
「そうだな・・・薪はあると思うがこの時期だと湿気って、使えない可能性が高いから用心した方が良いな!」
『ん~あとは・・・あ!食料も多めに持って行こう!何があるか判らないからね!』
「そうだな、食料も多めが良いだろうな・・・」
「ん~あと準備するのは・・・」
親父とこんな感じで状況を想定しつつ準備を終わらせ、いよいよ明日は湖へ厳寒期の遠征だ!
多少なりとも読みやすくなったでしょうか?
初めてのお話しで色々試行錯誤中ですので、へこまない程度のご指摘は大歓迎!
他に良い表現法を考えつかない限り、当面はコレで行こうかと・・・




