第14話 EP05-01 大地討伐戦
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
空を見あげる。
秋晴れの青空だ。
足元を見おろす。
薄い茶色の、乾いた土の荒れ地だ。
草の一本も生えてない。代わりに、金属片や、何か分からない破片みたいなものが、土から生えたみたいに形を覗かせる。
長く続く戦争の、散っていった人たちの無念が、無数に、無惨に転がる。魔王の居城の麓に広がる、広大な平地の戦場『魔城の前庭』。
人間サイズの四つ角の魔物『大地』の討伐に成功すれば、魔王城への決定的な一歩、歴史的快挙への第一歩ともなるだろう。
オレの名は『新実 健二』。『内地』では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子だけど。『外地』なら、『人が武器に残した強い思い』で戦う魔法使い『心剣士』だ。
◇
オレは、重装全身金板鎧のユーナベルム騎士たちの真ん中に佇む。
装備は、一張羅の中学校の制服、白のワイシャツに黒のスラックスに黒のスニーカー。手に、『燕が強い思いを長期間籠め続けたボロボロのボクシンググローブ』を嵌める。
目の前で、左右のグローブをバフバフと打ち合わせた。
グローブに籠められたのは、燕の『憧れ』。
キョウ先輩の強さに憧れ、自分の将来の理想像の、複数ある形のうちの一つとした。オレンジ色のボサボサ髪を、ずっと目で追った。ギザ歯の笑顔を思い出しながら、トレーニングに励んだ。
革が破れて中身が千切れて、ボロボロもボロボロのボクシンググローブだけど。状態は関係ない。『籠められた思い』こそが力となる。
作戦は、オレが知る限りでは単純明快だ。
人間側の軍勢は約八万。他の魔物を、人間サイズの四つ角の魔物『大地』から分断し、足止めする。
オレが、孤立した『大地』を討伐する。
大軍が通用しない『人間サイズの四つ角の魔物』に対して、軍が出した答えは『少数精鋭』だった。
四つ角と少数で戦う精鋭には同情する。普通に考えて、『死んでこい』と同義である。
……オレだが? むしろ単独だが?
超緊張する! 『燕の思い』に引っ張られるのか、超怖い! 手足が震える!
◇
「健二! 今、いい? 挨拶しておこうと思って!」
整列した騎士たちの間を縫って、美月が声をかけてきた。
美月は、オレのクラスメートの中二女子で優等生で、外地では軍人で頼れる相棒である。体は軍人にしては華奢で、肩までくらいの長さのピンク髪で、年相応に可愛くも、芯の強そうな凛々しい顔立ちで、声が澄んで高い。黒の長袖の軍服に、黒のミニスカートを穿いて、黒のブーツに至るまで、素肌の脚が細く伸びる。
「美月! よくオレの居場所が分かったな?」
驚くオレに、美月が首を傾げた。どうして分からないと思ったのか?、って感じだ。
さすが頼れる相棒だな。
「美月も参戦するんだ?」
「ワタシは、シーカー要員として司令部に配属されたの。今回の作戦には、強力な超強力魔法品が複数投入されるらしくて。超強力魔法品を主軸に陣形を運用するのよ」
難しそうな、オレの知らない、知らなくて問題ない、知っても意味の無い作戦内容だ。
「司令部に配属って、大抜擢じゃん」
「メインのシーカーを魔力切れさせないための、補助役よ。任務も、超強力魔法品を探知して、位置を報告するだけだし」
美月は、超強力魔法品を認識できる魔法『アーティファクトシーカー』が使える。探知系最高峰の魔法である。
オレは、ちょっと考える。
「美月がいるなら、ゲシュペンスト騎士団も参戦してるよな? こっちの援護とか、頼めないか?」
美月の養父は、ゲシュペンスト騎士団の騎士団長である。最強の騎士団の一つにも数えられる。
「ゲシュペンスト騎士団の担当は、司令部の護衛だから。シーカーの魔力節約のために前線近くに布陣するし、他に援軍を出す余裕は無いわ」
「そうかぁ~」
オレは、ちょっと残念に思った。援護してもらえたら頼もしかったのに。
「一人で大変だろうけど、頑張ってね」
「ありがと。美月も気をつけて」
何となく互いに手を振った。再び騎士たちの間を縫って、美月が駆けていった。ミニスカートがヒラヒラと揺れて
……美月の太腿をガン見してると思われると心外なので、オレは前を向いて、目の前に左右のボクシンググローブをバフバフと打ち合わせた。
◇
緊張が、和らいだ気がする。恐怖が、薄らいだ気がする。
心の中で、美月に感謝した。いや、それは、否、断じて、心外だ。
オレの心が、『燕の思い』に引っ張られる。
オレの心に、燕の心が流れ込む。『キョウ先輩みたいに強くなりたい!』と心に叫ぶ。心が叫ぶ。
「戦闘準備!」
若い騎士の高めの声が聞こえた。
『ゥゥゥゥウボォァーーーーーッッッ!!!』
魔物どもの咆え声が轟いた。獲物が来たと、人間を殺せると、醜悪な歓喜が、戦場の全体に一斉に膨れあがった。
始まった! 歴史にも残るだろう作戦の開始だ!
魔法『心剣士』を使うと、『武器に籠められた思いや記憶』と『オレの現実』が混じる。『思いや記憶』が強すぎると、ゴチャゴチャに、どっちがどっちか分からなくなる。
オレは、口の端を吊りあげて、笑みを浮かべた。
己の力の試しの場。相手に取って不足なし。一 対 一。
ワクワクしていた。興奮していた。血が滾っていた。
以前に見たキョウの記憶に中てられたのか。キョウに憧れる燕の思いに引っ張られたのか。
オレは、命懸けの戦場で、まるで超戦闘狂少女みたいに笑っていた。狂気染みた歓喜に、笑っていた。
心剣士は少女の夢を夢見るのか
第14話 EP05-01 大地討伐戦/END
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