↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心剣士は少女の夢を夢見るのか  作者: リュカギン
第五章 グラウンド討伐戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/14

第14話 EP05-01 大地討伐戦

自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。

オリジナル小説のみです。

 空《そら》を見《み》あげる。

 秋晴《あきば》れの青空《あおぞら》だ。

 足元《あしもと》を見《み》おろす。

 薄《うす》い茶色《ちゃいろ》の、乾《かわ》いた土《つち》の荒《あ》れ地《ち》だ。


 草《くさ》の一本《いっぽん》も生《は》えてない。代《か》わりに、金属片《きんぞくへん》や、何《なに》か分《わ》からない破片《はへん》みたいなものが、土《つち》から生《は》えたみたいに形《かたち》を覗《のぞ》かせる。


 長《なが》く続《つづ》く戦争《せんそう》の、散《ち》っていった人《ひと》たちの無念《むねん》が、無数《むすう》に、無惨《むざん》に転《ころ》がる。魔王《まおう》の居城《きょじょう》の麓《ふもと》に広《ひろ》がる、広大《こうだい》な平地《へいち》の戦場《せんじょう》『魔城《まじょう》の前庭《ぜんてい》』。


 人間《にんげん》サイズの四《よ》つ角《つの》の魔物《まもの》『大地《グラウンド》』の討伐《とうばつ》に成功《せいこう》すれば、魔王《まおう》城《じょう》への決定《けってい》的《てき》な一歩《いっぽ》、歴史《れきし》的《てき》快挙《かいきょ》への第一歩《だいいっぽ》ともなるだろう。


 オレの名《な》は『新実《にいみ》 健二《けんじ》』。『内地《ないち》』では、中学校《ちゅうがっこう》に通《かよ》う中学《ちゅうがく》二年生《にねんせい》の、ごく普通《ふつう》の男子《だんし》だけど。『外地《がいち》』なら、『人《ひと》が武器《ぶき》に残《のこ》した強《つよ》い思《おも》い』で戦《たたか》う魔法《まほう》使《つか》い『心剣士《しんけんし》』だ。


   ◇


 オレは、重装《じゅうそう》全身金板鎧《フルプレートメイル》のユーナベルム騎士《きし》たちの真《ま》ん中《なか》に佇《たたず》む。

 装備《そうび》は、一張羅《いっちょうら》の中学校《ちゅうがっこう》の制服《せいふく》、白《しろ》のワイシャツに黒《くろ》のスラックスに黒《くろ》のスニーカー。手《て》に、『燕《つばめ》が強《つよ》い思《おも》いを長期間《ちょうきかん》籠《こ》め続《つづ》けたボロボロのボクシンググローブ』を嵌《は》める。


 目《め》の前《まえ》で、左右《さゆう》のグローブをバフバフと打《う》ち合《あ》わせた。


 グローブに籠《こ》められたのは、燕《つばめ》の『憧《あこが》れ』。

 キョウ先輩《せんぱい》の強《つよ》さに憧《あこが》れ、自分《じぶん》の将来《しょうらい》の理想像《りそうぞう》の、複数《ふくすう》ある形《かたち》のうちの一《ひと》つとした。オレンジ色《いろ》のボサボサ髪《がみ》を、ずっと目《め》で追《お》った。ギザ歯《は》の笑顔《えがお》を思《おも》い出《だ》しながら、トレーニングに励《はげ》んだ。


 革《かわ》が破《やぶ》れて中身《なかみ》が千切《ちぎ》れて、ボロボロもボロボロのボクシンググローブだけど。状態《じょうたい》は関係《かんけい》ない。『籠《こ》められた思《おも》い』こそが力《ちから》となる。


 作戦《さくせん》は、オレが知《し》る限《かぎ》りでは単純《たんじゅん》明快《めいかい》だ。


 人間側(こっち)の軍勢《ぐんぜい》は約八万《やくはちまん》。他《ほか》の魔物《まもの》を、人間《にんげん》サイズの四《よ》つ角《つの》の魔物《まもの》『大地《グラウンド》』から分断《ぶんだん》し、足止《あしど》めする。


 オレが、孤立《こりつ》した『大地《グラウンド》』を討伐《とうばつ》する。


 大軍《たいぐん》が通用《つうよう》しない『人間《にんげん》サイズの四《よ》つ角《つの》の魔物《まもの》』に対《たい》して、軍《ぐん》が出《だ》した答《こた》えは『少数《しょうすう》精鋭《せいえい》』だった。


 四《よ》つ角《つの》と少数《しょうすう》で戦《たたか》う精鋭《せいえい》には同情《どうじょう》する。普通《ふつう》に考《かんが》えて、『死《し》んでこい』と同義《どうぎ》である。

 ……オレだが? むしろ単独《たんどく》だが?


 超《ちょう》緊張《きんちょう》する! 『燕《つばめ》の思《おも》い』に引《ひ》っ張《ぱ》られるのか、超《ちょう》怖《こわ》い! 手足《てあし》が震《ふる》える!


   ◇


「健二《けんじ》! 今《いま》、いい? 挨拶《あいさつ》しておこうと思《おも》って!」

 整列《せいれつ》した騎士《きし》たちの間《あいだ》を縫《ぬ》って、美月《みつき》が声《こえ》をかけてきた。


 美月《みつき》は、オレのクラスメートの中二《ちゅうに》女子《じょし》で優等生《ゆうとうせい》で、外地《がいち》では軍人《ぐんじん》で頼《たよ》れる相棒《あいぼう》である。体《からだ》は軍人《ぐんじん》にしては華奢《きゃしゃ》で、肩《かた》までくらいの長《なが》さのピンク髪《がみ》で、年《とし》相応《そうおう》に可愛《かわい》くも、芯《しん》の強《つよ》そうな凛々(りり)しい顔立《かおだ》ちで、声《こえ》が澄《す》んで高《たか》い。黒《くろ》の長袖《ながそで》の軍服《ぐんぷく》に、黒《くろ》のミニスカートを穿《は》いて、黒《くろ》のブーツに至《いた》るまで、素肌《すはだ》の脚《あし》が細《ほそ》く伸《の》びる。


「美月《みつき》! よくオレの居場所《いばしょ》が分《わ》かったな?」

 驚《おどろ》くオレに、美月《みつき》が首《くび》を傾《かし》げた。どうして分《わ》からないと思《おも》ったのか?、って感《かん》じだ。

 さすが頼《たよ》れる相棒《あいぼう》だな。


「美月《みつき》も参戦《さんせん》するんだ?」

「ワタシは、シーカー要員《よういん》として司令部《しれいぶ》に配属《はいぞく》されたの。今回《こんかい》の作戦《さくせん》には、強力《きょうりょく》な超強力魔法品《アーティファクト》が複数《ふくすう》投入《とうにゅう》されるらしくて。超強力魔法品《アーティファクト》を主軸《しゅじく》に陣形《じんけい》を運用《うんよう》するのよ」

 難《むずか》しそうな、オレの知《し》らない、知《し》らなくて問題《もんだい》ない、知《し》っても意味《いみ》の無《な》い作戦《さくせん》内容《ないよう》だ。


「司令部《しれいぶ》に配属《はいぞく》って、大抜擢《だいばってき》じゃん」

「メインのシーカーを魔力《まりょく》切《ぎ》れさせないための、補助《ほじょ》役《やく》よ。任務《にんむ》も、超強力魔法品《アーティファクト》を探知《たんち》して、位置《いち》を報告《ほうこく》するだけだし」

 美月《みつき》は、超強力魔法品《アーティファクト》を認識《にんしき》できる魔法《まほう》『アーティファクトシーカー』が使《つか》える。探知《たんち》系《けい》最高峰《さいこうほう》の魔法《まほう》である。


 オレは、ちょっと考《かんが》える。

「美月《みつき》がいるなら、ゲシュペンスト騎士団《きしだん》も参戦《さんせん》してるよな? こっちの援護《えんご》とか、頼《たの》めないか?」

 美月《みつき》の養父《ようふ》は、ゲシュペンスト騎士団《きしだん》の騎士団長《きしだんちょう》である。最強《さいきょう》の騎士団《きしだん》の一《ひと》つにも数《かぞ》えられる。

「ゲシュペンスト騎士団《きしだん》の担当《たんとう》は、司令部《しれいぶ》の護衛《ごえい》だから。シーカーの魔力《まりょく》節約《せつやく》のために前線《ぜんせん》近《ちか》くに布陣《ふじん》するし、他《ほか》に援軍《えんぐん》を出《だ》す余裕《よゆう》は無《な》いわ」

「そうかぁ~」

 オレは、ちょっと残念《ざんねん》に思《おも》った。援護《えんご》してもらえたら頼《たの》もしかったのに。


「一人《ひとり》で大変《たいへん》だろうけど、頑張《がんば》ってね」

「ありがと。美月《みつき》も気《き》をつけて」

 何《なん》となく互《たが》いに手《て》を振《ふ》った。再《ふたた》び騎士《きし》たちの間《あいだ》を縫《ぬ》って、美月《みつき》が駆《か》けていった。ミニスカートがヒラヒラと揺《ゆ》れて


 ……美月《みつき》の太腿《ふともも》をガン見《み》してると思《おも》われると心外《しんがい》なので、オレは前《まえ》を向《む》いて、目《め》の前《まえ》に左右《さゆう》のボクシンググローブをバフバフと打《う》ち合《あ》わせた。


   ◇


 緊張《きんちょう》が、和《やわ》らいだ気《き》がする。恐怖《きょうふ》が、薄《うす》らいだ気《き》がする。

 心《こころ》の中《なか》で、美月《みつき》に感謝《かんしゃ》した。いや、それは、否《いな》、断《だん》じて、心外《しんがい》だ。


 オレの心《こころ》が、『燕《つばめ》の思《おも》い』に引《ひ》っ張《ぱ》られる。

 オレの心《こころ》に、燕《つばめ》の心《こころ》が流《なが》れ込《こ》む。『キョウ先輩《せんぱい》みたいに強《つよ》くなりたい!』と心《こころ》に叫《さけ》ぶ。心《こころ》が叫《さけ》ぶ。


「戦闘《せんとう》準備《じゅんび》!」

 若《わか》い騎士《きし》の高《たか》めの声《こえ》が聞《き》こえた。


『ゥゥゥゥウボォァーーーーーッッッ!!!』

 魔物《まもの》どもの咆《ほ》え声《ごえ》が轟《とどろ》いた。獲物《えもの》が来《き》たと、人間《にんげん》を殺《ころ》せると、醜悪《しゅうあく》な歓喜《かんき》が、戦場《せんじょう》の全体《ぜんたい》に一斉《いっせい》に膨《ふく》れあがった。


 始《はじ》まった! 歴史《れきし》にも残《のこ》るだろう作戦《さくせん》の開始《かいし》だ!


 魔法《まほう》『心剣士《しんけんし》』を使《つか》うと、『武器《ぶき》に籠《こ》められた思《おも》いや記憶《きおく》』と『オレの現実《げんじつ》』が混《ま》じる。『思《おも》いや記憶《きおく》』が強《つよ》すぎると、ゴチャゴチャに、どっちがどっちか分《わ》からなくなる。


 オレは、口《くち》の端《はし》を吊《つ》りあげて、笑《え》みを浮《う》かべた。

 己《おのれ》の力《ちから》の試《ため》しの場《ば》。相手《あいて》に取《と》って不足《ふそく》なし。一《いち》 対《たい》 一《いち》。

 ワクワクしていた。興奮《こうふん》していた。血《ち》が滾《たぎ》っていた。

 以前《いぜん》に見《み》たキョウの記憶《きおく》に中《あ》てられたのか。キョウに憧《あこが》れる燕《つばめ》の思《おも》いに引《ひ》っ張《ぱ》られたのか。


 オレは、命懸《いのちが》けの戦場《せんじょう》で、まるで超戦闘狂(キョウ)少女みたいに笑《わら》っていた。狂気《きょうき》染《じ》みた歓喜《かんき》に、笑《わら》っていた。



心剣士《しんけんし》は少女《しょうじょ》の夢《ゆめ》を夢《ゆめ》見《み》るのか

第14話 EP05-01 大地《グラウンド》討伐《とうばつ》戦《せん》/END

読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。