【フレンダ・ディーコン少尉】
フレンダ・ディーコン少尉(26歳、女性)
装備・ナイトアーマービアンコ
・リバティー・アライアンス所属
白堊理研第8基地リトルベース極致化学開発研究部署勤務
・乗機
ロード・インパルス
・相棒KARMA・メイ
身長176cm、体重52kg。金髪ショートボブ碧眼、感情豊かによく食べよく眠りよく働く兵士。
特殊体質でヘキサグラムの汚染を殆ど受けない。(自覚なし)
極限環境への耐性が非常に高い。(自覚なし)
尋常ならざる回復力と体力がある。(自覚あり)
その特殊体質のせいで、任務明けに必ず全身検査を受けなければならずうんざりしている。
任務には真面目に取り組む。任務明けの温かいご飯が何よりの楽しみ。
KARMAである相棒のメイとは長年の付き合い。
出自は不明で、幼少期の記憶はなく気付いた時にはLAに所属し、上官としてヴァネッサ・ヘルシング少佐と相棒としてKARMAメイが隣に居た。
【フレンダ・ディーコン少尉】
《さて、廃棄結晶炉での戦闘が災いして第四世代ロータスプロトレクスはオーバーホールを受けることになり、私は再びこの第三世代ロード・インパルスに移ったわけですが》
「なによ、メイ。慣れた機体の方が私もやりやすいからいいじゃない?」
リバティー・アライアンス所属企業、白堊理研のとある基地の格納庫にて、フレンダ・ディーコン少尉とその相棒、KARMAメイは機体のメンテナンスを受けていた。
《いいわけがないでしょう!?第四世代ヒト型の戦闘力が味わえたというのに、また第三世代の獣に逆戻りですよ?二足から四足への逆行、ひどく不満があります》
「仕方ないよ、だってあの機体壊れちゃったんだし。オーバーホール受けてまた使い回すみたいだけど、忘我廻廊はちょっときついわ。私はパスだよ」
《何を言うのですかフレンダ。あのシステムこそ人機一体の究極系、戦闘能力を極限まで引き上げる素晴らしい技術なのですよ》
「戦闘能力だけじゃなくて私の命までギリギリな綱渡りまで引き上げられるのはごめんだよ。美味しいご飯が食べられないじゃない」
《むぅ……、フレンダに無理をさせているのは重々承知していますが、あの究極の戦闘力を再び我が手元に宿したいのです!後程少佐に掛け合いましょう!》
「だーめ、その申請は却下。ガバナーとして許可できません。その戦闘狂な性格、もう少し大人しくなってくれないかなぁ」
フレンダは相棒の機体を磨きながらため息をつく。相棒のメイとは随分と長い付き合いになるが、このAIは戦いの事になると我を忘れて挑みたがる。
前にアグニレイジに追いかけ回された時は死ぬかと思ったというのに、次はどう挑もうかと言われた時は流石に引っ叩きたくなった。
SANATに対抗すべくリバティー・アライアンスが開発したこの戦闘用AI、KARMAは各個体によって様々な性格がある。相棒となるガバナーに合わせてその個性や戦闘能力は各々進化し、研磨されていくと言うが、フレンダの相棒、メイは基本的に最初からあまり変わっていないような気がする。
《我々リバティー・アライアンス、LAも敵方のMSGVF、ヴァリアント・フォースも続々と新型機体を開発しており、この戦争は激化の一途を進んでいます。
先日ロールアウトされたヒト型のヴェローチェという機体も侮れません。私は強者との戦いを所望します》
「ヴェローチェは私達LAの機体でしょ。対抗意識を燃やすのは勝手だけど、味方同士でやり合うのは嫌だよ」
《敵方の新型機体も、ヘテロドックスの異色機体も全て私が倒してみせましょう!私とフレンダの力を甘くみてもらっては困りますよ!どこからでもかかって来なさい!》
装甲の掃除中だというのに、やたら戦いたがるこの猟犬を、フレンダは宥めながら汚れを洗い落としていく。
機体の整備も、乗り手であるガバナーの仕事なのだから疎かにするわけにはいかない。
ガバナーはただの戦闘要員ではないのだ。勿論、その相棒であるヘキサギアも。
「はい、メイ。機体の洗浄終わったよ、あとは内部プログラムの更新が来てるから後でインストールしておきなさい。私はお昼食べてくるから」
《了解しました。では後程精査してからインストールしておきます。戦闘系プログラムの更新だといいですね、素晴らしい進化を期待します》
ハッキングプログラムの更新なのは黙っておこう。と心の中で考えながらフレンダは食堂に向かった。
交易都市レプトリアでのキノコ騒ぎ、廃棄結晶炉での特殊個体の反乱、その他様々な任務を経て、フレンダは自分なりに、いかなる状況にも冷静に対応できるようになったのではないかと思うようになっていた。
自分なりの成長である。
成長しなければ、今の時代の速い進み方に置いてけぼりにされてしまう。日々機械たちは進化し、戦力を拡大。目的のために突き進んでいる。
機械の進化するスピードに、我々人類が追い付けているのかどうかという話は、どう考えても人類に分が悪い。
だとすれば、人類は数千万年かけて培ってきた経験と実績で対処するしかないのだ。
「昨日のランチはご飯もの。ならば今日は被らないようにパンか麺類だ!何にしようかなー?トースト系か、ラーメン系もいいなぁ。こってり背脂ニンニクマシマシでー、替え玉ももらっちゃおうかなー?」
メイが戦闘になるとムキになるように、フレンダにとっては食事が何よりも楽しみなのだ。
「醤油、塩、味噌、豚骨、あっさりタンメンでもいいかも………って、は?」
【かんすい切れの為、本日のラーメンは終了しました】
食堂の券売機の前には、そのような札がかけられていた。膝から崩れ落ちるフレンダ。
「嘘でしょ。嘘だよね、嘘だろ、嘘に違いない、嘘だと言ってよ店長!!」
「すまねぇな、かんすいが無いと麺が作れねぇんだわ。補給が来ない限り、ラーメンはできねぇ。白米ならあるが、どうする?」
食堂の料理長は申し訳なさそうに聞いてくる。
「もう口の中と胃袋がラーメンを受け入れる体制になっていたのに!!こんな酷い仕打ちが存在していていいわけがない!!何とかならないんですかシェフ!?」
「何とかって言ってもなぁ、蕎麦粉もねぇしワンタンもできねぇし、うどんならまだなんとか」
「大盛でお願いします!!!」
一人、ラーメンを食べる自分を想像しながらうどんを啜るフレンダ。うん、これはこれで美味しい。
だが、今はラーメンが食べたい。ラーメンが食べたいのだ。
あのスープの脂に絡む極上の麺が。フレンダは味わいたかった。
「何でかんすいが切れてしまったんですか?白堊理研の基地ならば簡単に調達できそうです」
「無理矢理作ろうと思えばできないことはない。だが、料理中に濃度の高い水酸化ナトリウムで手を火傷してみろ。しばらく食堂は閉鎖だ」
「それだけは勘弁してください死んでしまいます」
「機体のオーバーホールで技術班の奴らが夜通し作業してるのは知ってるだろ?
夜食に何がいいかと聞いたら、全員揃ってラーメンラーメンってな。んで、結局作業が終わった頃になれば、かんすいも麺も無くなっちまったわけだ」
「何でだよぉぉ!!何でよりにもよってプロトレクスのオーバーホールが絡んでくるんだよぉぉ!!」
「まぁそういう訳だ。補給が来たらラーメン作ってやるからそれを楽しみにしとけ」
とりあえず暖かいうどんでお腹を満たし、格納庫に戻るフレンダ。
格納庫では案の定メイもうなだれていた。
《私が望んでいるのは戦闘用プログラムなのですよ。戦闘は戦闘でも物理的に殴り合う方の戦闘なんです。電子戦のプログラムではないのですよ…》
折角機体の腹側まで綺麗に洗ったというのに、うつ伏せでゴロゴロ言っているこの機獣をどうしてやろうかと思いながら、フレンダはメイの頭部ユニットを撫でてやる。
《フレンダも不満そうな顔をしていますね。食堂で何かあったのですか?》
「うん、食べたいものがなかった。しかもあのプロトレクスのせいで。すごく腹立たしいけど、どうしようもない状況ってあるよね…」
《なるほど、先ほどインストールしたプログラムを使って基地内部の補給物資事情を見ていたのですが、再来月まで補給は来ないそうです。予測では数日後に食堂が閉鎖され食事は全て配給制の軍用レーションになるとか》
再び膝から崩れ落ちるフレンダ。最悪の状況である。あのクソ不味い軍用レーションを一か月以上齧って耐えろというのか。食にうるさいフレンダの胃袋がキリキリと悲鳴を上げている。
「メイ、補給が来ない原因。すぐに調べて」
《数日前に現れたMSGVFの一個中隊がこの基地の補給路を断ったせいですね。橋を落とされました。安定したインフラがなければ兵站は保てません。危機的状況です》
「ちなみに、その一個中隊はまだ補給路に居座ってる?」
《はい、破壊した橋のたもとで野営しています。この基地を兵糧攻めにするつもりなのでしょう。尤も、この基地には軍用レーションが大量に保管されていますので、あまり意味はないのですが》
「上等だこの野郎!!兵糧攻めだかなんだか知らないけどいい度胸じゃない!!全員ぶっ飛ばしてやる!!」
《相変わらず食べ物の事となると人が変わりますねフレンダ。ですが、戦闘ができるならば好都合!!すでに出撃許可は得ています!!何時でも行けますよフレンダ!!さぁ、敵をぶっ飛ばしに行きましょう!!》
アーマーを纏ってメイに跨り、すぐさま格納庫から飛び出していく二人。
破壊した橋のたもとに屯していたMSGVFの一個中隊が残したログには、「鬼が出た」とだけ残されていた。




