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公安探偵G  作者: カキヒト・シラズ


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2/2

第2話

 避難所の近くのイベントテントは練馬区役所の緊急仮説派出所だった。

 練馬区役所ビルは地震で倒壊し、複数の仮説派出所が区内に設置された。

 避難所は小学校の講堂だが、校庭の隅にイベントテントが急遽建てられた。

「これはどこに出したらいいですか」

 山根隆二が用紙を差し出しながら言った。

「こちらでいいですよ」

 受付の職員が用紙を奥のテーブルに持っていき、しばらくすると控え書を持ってきて山根に渡す。

「手続きは完了です」

「……」

 山根は折り畳み椅子に控え書を置き、スマホで写真を撮ると、ガモフ社にメールで送信する。

 所沢で郷と打ち合わせてから一週間が経っていた。 



 


 一週間前、喫茶『トムスキンス』で山根は郷の説明を長々と聞いていた。

 郷源太が語るところではガモフ社は公安コンサルト会社とのことだが、そもそも公安コンサルタントとはどんな仕事なのか。

 山根隆二は郷に質問してみた。

「公安コンサルタントというのは」

 郷が言った。

「通常、行政が担当する公安サービスを民間企業が対価を得て代行することです]

「その公安サービスってなんでしょう」

「公安サービスとは社会の治安維持に資するサービス全般のことです。

 弊社は警察の公安部がクライアントになることが多いですが、国や地方自治体から依頼を受けることもあります。また日本だけでなく、海外の政府からオファーを受けたこともあります。

 この他、山根さんのように民間からお問い合わせをいただくこともまれにあります。

 具体的な仕事内容は調査が多いですね。テロ組織などの実態を調査してレポートを作成します。テロ組織には暴力団をはじめ、右翼や左翼といった政治団体やカルト宗教団体もあります。

 また調査以外に、工作サービスも請け負うこともあります」

「工作サービスってなんですか?」

 すると郷は少し沈黙してから口を開く。

「そうですねえ。具体的なお話しはオファーが正式に成約してからにしていただけますか。少し申し上げにくいお話しもありますので」

「……」

「ところで米国のブラックウォーター社をご存じですか?」

「いいえ」

「かつて存在した民間軍事会社です。元軍人たちが集まってできた会社ですが、政府からオファーを受け、正規の米国軍の代行で戦争を行います。

 2007年9月、バグダッドでブラックウォーターの社員がイラク人17人を射殺する事件が発生しまして、悪名高い会社ですが、ブラックウォーター社は戦争サービス代行会社といったところでしょうか。

 本来、公務員たる軍人に代わって仕事を代行するのがブラックウォータ社です。

 これに対し、弊社、ガモフはスパイサービス代行会社です。

 本来は公務員たるスパイに代わって仕事を代行する民間企業です」

「……」

「ところでお電話のお話しですと、今回の首都直下型地震が人工地震かどうか調査してほしいとのことだったと思いますが、これでよろしいでしょうか」

「はい」

「結論から申し上げますと、私も諸事情から推理して人工地震にまちがいないと思ってます。あえて調査費用をいただくまでもないかと存じますが、どうしましょう。せっかく弊社にいらしたので、私からのご提案ですが、弊社の工作サービスをご利用されてはいかがでしょうか」

「と言いますと?」

「具体的なアクションは現時点では未定ですが、人工地震や線状降水帯を仕組んだ連中になんらかのリベンジを果たすという感じでしょうか。

 今回の案件は政府がなんかの形で犯人グループに関与しています。だから人工地震の行政訴訟を起こしても拉致があかないと思います。多分、司法もグルですので」

「では費用はどうなりますか」

「工作サービスですと1案件につき、Ⅰ千万円ほどいただいてますが、民間の方には高額かと思います。そこで提案ですが、地震被災者の助成金制度をご利用されることをおすすめします。

 区役所で所定の手続きを踏めば、士業などコンサルサービスの70パーセントを助成できるようです。

 手数料は数千円かかると思いますが、申請書が正式に受理されたら控え書をもらえますので、控え書の写真をメールで送ってください。

 メールの受信を確認しましたら、工作サービスをスタートします」

「ところで私の負担は1千万円の30パーセントだから300万円でしょうか。ちょっと高額です。私は今、被災者ですし、お支払いできません」

 すると郷はしばらく目をつぶり、吐息をつくと、

「では120万円でいかがですか。これ以上、お値引きはできません」

 今度は山根が沈黙する。気まずい時間が流れた後、

「わかりました。120万円で手を打ちましょう」

 すると郷は無言のまま握手するために右手を差し出す。山根は両手で郷の手を握り返す。

 山根はいつの間にか郷という初対面の男を全面的に信頼している自分に気づく。


(つづく)


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