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【連載版】幸子48歳、異世界転生したら出産中でした!?~後妻だったので産んだ子も連れ子もまとめて可愛がります  作者: よつ葉あき


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2.幸子、6回目の出産


─────……

───────……



周囲に人の気配がある。……内容は分からないが、誰かが話す声が聞こえる。


ズキンズキンと身体が痛む。特に腰──お腹を含む腰まわりがものすごく痛い。ぎっくり腰? いや、これは……出産レベルに痛いんですが!?


よく「出産の痛みは、ダンプカーに轢かれたくらい痛い」と聞くけど、まさにその通りだったようだ。いや、ダンプじゃなくて大型トラックだったけれども。


息もできないほどの痛みだったのに、急に和らいだ。


……え? もしかして、ここ、病院? 痛み止めが効いた?


そう思いながら、痛みに耐えるために固く閉じていた瞼をゆっくりと開いた。


「……え!?」


そこには思いがけない光景が広がっていた。


無機質な病院のベッドにいるかと思ったのに、目の前にあるのは豪華な……まるで高級旅館のような部屋。ベッドの周りには、病院によくあるシンプルなカーテンではなく、ひらひらとしたレースのカーテンが垂れ下がっている。アンティーク調の装飾までついていて、まるでお姫様ベッドだ。


さらに驚いたのは、目の前にいる医者らしき女性の髪色だった。鮮やかな水色。……え、なに、コスプレ? 一瞬そう思ったが、ぶっ飛んだ髪色なのに不自然ではない。人工的に作られたような違和感がなく、それどころか、顔立ちは彫りが深く、日本人とは違う雰囲気。目の色は……緑色。


そんな洋風な顔なのに、服装は和風。着物の上に割烹着のような白いエプロンを着けていた。


呆然としていると、水色の髪の女性が私に向かって微笑みかけた。


「ミレイ様、陣痛がひいたみたいですね。あともう少しです。赤ちゃんと一緒に頑張りましょう」


ミレイ? 陣痛? 赤ちゃん??


彼女の言葉が何一つ理解できず、混乱する。


その瞬間──頭に激痛が走った。


同時に、私のものではない記憶が一気に流れ込んできた。



──わたし……いえ、わたくしの名前は五条(ごじょう) 美麗(みれい)

この五条家夫人だ。

そしてミレイ(わたし)は、まさかの出産中!?


「車に轢かれるのって、本当にお産の痛みに似てるね」なんて思ってたら、実際に出産中だった……!?


「あっ……くる。痛いっ、痛い──!!」


再び襲ってきた陣痛に思考が吹き飛ぶ。


息が乱れ、痛みに耐えられず叫びそうになると、目の前の水色髪の女医さんが優しく言った。


「息をちゃんと吸ってください」


──ミレイは初産。だけど、幸子としては出産経験がある! もう20年近く前の話だけど、あのときの記憶を引っ張り出す!


たしか、出産のときは母親がちゃんと呼吸をしないと、赤ちゃんも苦しくなるって助産師さんが言ってたっけ……?


それはマズい! そう思い、意識的に息を吸い、大きく吐き出す。


「そう、上手です!」


褒められた。


(そりゃあ、5人も産んでますからねっ!)


そう言いたいけど、口には出さず心の中でドヤ顔をする。


そのとき、陣痛の波が一旦引いた。


(もう、いきみたい……)


そう思っていると、


「次の陣痛が来たら、いきんでみましょう」


──その言葉、待ってました!!


どうりで痛いと思ったら、お産はクライマックスだったらしい。よかった! いきみ逃しって本当に辛いのよね。ちゃっちゃと産んでやるから、次の陣痛よ、さあ来い!!


そう意気込んだのも束の間。


──じわじわと痛みがきたかと思うと、次の瞬間、腰にハンマーで殴られたような激痛が走った。


(さあ来い! とか、生意気なこと言ってすみませんでした──!!)


(ごめんなさいごめんなさい!! 生意気なこと言った私が悪かったです!! 陣痛さま、ちょっと痛みを緩めてください。もう少し優しくしてください!!)


意味不明な後悔をしていると、


「さあ、力を込めてください!」


指示を受け、脚を開き、かかとをベッドに押しつける。

──目を開き、口を閉じて、顎を引く。

そして、下半身に全力で力を込めた。


豪華なベッドには分娩台のようなグリップがない。仕方なく、シーツをぎゅっと掴む。


ハァハァ、ふぅー……。


陣痛の波が引くと、しっかり呼吸を整える。


「いいですよ! さっきまでは緊張で呼吸が乱れていましたが、今はとても上手にできています」


──そりゃあ、初産の18歳の女の子と、5人産んだ48歳のアラフィフを比べるのは酷でしょ。


そんなことを思いながら、何度かいきみを繰り返すと──



「おぎゃ──、おぎゃ────!!」



──元気な産声が響いた。




「おめでとうございます。元気なお嬢様ですよ」



や、やっと終わった……。



──溢れ出す~、愛おしさで~♪


何年か前に観た、某産科医療ドラマのエンディングが脳裏で流れた。


……今週も、感動的な回だったわー。



そう思ってたのに……その直後、胸の上にそっと赤ちゃんが置かれる。

どうやら、夢でもドラマでもなく、現実のことらしい。


でも次の瞬間、胸の上の可愛すぎるものに意識を持っていかれた。


(ふにゃふにゃだー! 新生児だ──! かっわいい──!!)


何かで、10ヶ月もある長すぎる妊娠期間。

「その長い妊娠期間がないと母性が湧かない」

って聞いたけど、全くそんなことなかった。


顔はガッツ●松に似ているけど、もう愛おしくてたまらない。私の母性は全開だ!!



(最後に新生児を抱いたのは……コウタのときだから、5年ぶり? コウタもガッツに似てたなぁ)


赤ちゃんを見ていたら、ふと、コウタのことを思い出し、私自身──花村 幸子の事を考えた。


そして、気づく。


──ここは日本じゃない。地球じゃない。


幸子(わたし)は、おそらくトラックに轢かれて死んでしまったのだ。


どうやら私は──異世界転生をしてしまったらしい。

いきなり死んでしまって心残りがないわけじゃない。孫までいる私だけど末っ子はまだ高校生。理想は曾孫にも会いたかった。出来れば末っ子が結婚して出産まで手伝ってあげたかった。最低でも社会人になるまでは、見守りたかった。

心残りは考えたらキリが無い。だけど──


(……でも、あのとき、ベビーカーの赤ちゃんを守れてよかった)


腕の中の小さな命を見つめる。

新生児特有の大きな瞳は、まるで海のようだ。太陽に煌めく深い青色をしていた。


マジでいきなりすぎる出産。ついさっき産んだばかり。なのに、もう可愛くてしょうがない。この子を喪うなんて……想像もしたくない。

そんな思いを、あのベビーカーの赤ちゃんのお母さんにさせなくて本当に良かった。

今抱いてる、この子を愛しく思うからこそ、そう思えた。


──転生しても、私は母親だった。



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