第11話「誤って出た言葉」
〜翌日の放課後〜
〜校庭にて〜
「今日の音楽祭のライブも良かったね!」
「ええ!あの深みのある音はとても新人とは思えなかったわ!」
「分かるよ。その気持ち。まるで莉衣ちゃんみたいな深い音だった気がする!」
「そうだね…ってあれ?」
愛が視点を合わせた先には…何と玖美が一人でポツンと座っていた。
「あれは羽田さん…?」
「………………」
「…間違いないわね。あの見た目…」
「私、ちょっと羽田さんと話がしたい。」
愛の決意表明。それに反対する者は居なかった。
「…分かった。愛。頑張って来てね。」
「ええ!愛ならきっと大丈夫よ!」
それどころか、応援する声がした。愛はその応援に励まされ、玖美の所へと向かった──。
〜校庭のベンチ〜
「………っ。」
「…羽田さん!」
「…その声は品川さん?」
「あの、昨日あった事聞いてくれませんか!?」
「ま、まあ別に良いけど。」
玖美がそう言った後、愛はお礼を言った。そして、昨日あった事の殆どを話し始めた。内容は『Bright Shining Lightのライブが大成功した事』や『ライトニングシングの人に会った事』。そして──
『実は玖美はまだアイドルをやりたいという気持ちがあるという事をライトニングシングの港加々実に教えられた事』。
「ふーん…成程ね。」
「まず、ライブ成功おめでとう。聞いた人の感想が聞こえたけどどれも良いものだったよ。」
「だけど────加々実の話は間違っているかな」
「え?」
愛は衝撃を受けた。話した事は加々実が言っていた事である。となれば適当な事なんて言えない筈だった。
愛はますます意味が分からなくなり、考え出した。
「(どういう事なの?加々実さんは親友の嘘なんて付けない筈…)」
「(もしかして港さんと羽田さんは本当は親友なんかじゃなかった…?)」
愛は必死に考えるが答えが出てこない。そうこう考えていく内に玖美が口を開いた。
「──わたしにはアイドルを再開する資格は無いんだ。」
「────────」
愛は思いもよらぬ答えに口を閉じる。愛にとって、玖美は自信家というイメージだったのでそのギャップに驚いた。
「どういう事か説明してくれませんか?」
「分かった。」
「わたし、実はアイドルを始めた時、加々実と約束したんだ。」
それは「一緒にアイドルを続ける」事だった。あの時、加々実は玖美に言った。「アイドルを辞めないでね。」と。つまり今の玖美は約束を勝手に破ってしまったのである。
「まあ、加々実から聞いたと思うけどね。『私がアイドルをやっている間は玖美はアイドルを辞めないで』というものだったんだ。」
「でも……今のわたしはアイドルを辞めてしまった。」
「本人にも言わずに。勝手に逃げて…勝手に決めて…」
「そ、それは!…でも、港さんは羽田さんが辞めた事知っていましたけど別に嫌そうな顔もしてなかったですよ?」
愛がフォローを入れる。だが、そのフォローでは玖美の気持ちは変わらなかった。
「いや、加々実が優しいからそんな顔してくれたんだよ。」
「だがら、貴方や加々実が言っている事を受け入れる事は出来ない。」
「わたしの本当の姿は────めんどくさがり屋で性格も悪いから。」
愛は玖美が抱えていたものが思った以上に重かった事を知る。だからこそ、愛は玖美に想いを分かって欲しいと思った。
「──あの、羽田さん!」
「私の意見言ってもいいですか!」
「………うん。」
「正直、話を聞く前はそんなに辛いものがあるとは思いませんでした。」
「けれど、貴方は私よりも圧倒的に辛いものを抱えている。」
「…何が言いたいの?」
玖美は呆れたような顔をして言った。
「だからこそ私の想いを分かって欲しいんです!」
「それでわたしの想いが変わる訳ないじゃない。」
「………はぁ。」
愛はため息を着く。玖美はそれに少し驚いたが、それでも冷静なふりをした。
「──貴方のアイドルへの情熱はそんなものだったのですね。」
「は?」
突然のキツめの言葉に玖美は驚きを禁じ得なかった。玖美にとってアイドルは大事なものだったからだ。
「ダメだったらまた何度でもやり直せます。少なくとも今は。」
「それなのにどうしてすぐに諦めようとするんですか!」
「……今のわたしがやってもまた今回みたいになる。」
「わたしがやっても無駄だよ。」
「アイドルってのはただの光。そんな光すら伝えられなくて、届けられなかったわたしには無理だよ…」
「──そんな事言わないで下さい!!」
「え!?」
愛は空に向かって叫んだ。
「何でそんなネガティブになるんですか!アイドルっていうものは光なんでしょう!もし、貴方の言っていた事が本当ならどうしてかつてアイドルをやって成功していたんですか!!」
「そ、それは事務所のお陰で…」
「違うでしょう。確かに事務所の力はそこそこあります。ですが、果たして今の有名もしくは人気のアイドルは事務所だけの力で上がって来て、努力なんてして来なかったのでしょうか。」
「答えはいいえ。そもそも努力しない人は事務所の人らに捨てられます。下手したら事務所の意思で事務所脱退も有り得るでしょう。」
「…………」
「…それにさっきの貴方の発言は他のアイドルにも失礼です。アイドルは『ただの光』?その光が人々に希望を与えているんです。」
「…さっき私は貴方に想いを聞いてもらいたいと言いました。」
「その想いは『私達とアイドルをやらないか』と言うものでした。…しかし……」
「──そんなにやる気や根性がなくなった人はBright Shining Lightには入れてあげません。」
「何故ならそのユニットには貴方の友達、世田谷莉衣がいますからね。」
「そんな貴方みたいな周りが見えていない人なんかアイドルに相応しくないと思います。」
「…自分に自信が無い人は。」
「『約束を破った』?じゃあもう一度、アイドルを再開して約束を果たせばいいじゃないですか!」
「またあの時のように!!!」
愛は心からの叫びを玖美に伝える。だが、その言葉に刺激されてしまったのか玖美の様子がおかしくなった。
「…………ご、ごめんなさい──!!」
「あ…す、すみません!私の言葉がきついばかりに…」
愛はその言の葉を発した後、玖美は何処にもいなかった。
「…………」
「私がアイドルを語る資格なんて無かった……」
「いや、周りが見えてるかどうかすら…」
〜学校の帰り道〜
〜店前〜
「……………っ!」
玖美は学校を出て、何処かの店前に着いた途端、雨が降って来た。
「どうして?品川さんは…あんなに言ってくれたのに…わたしは何で逃げたの?」
「わたしはあの時、自信なんて無かった。それなのに…!自信を付けろって言ってくれたのに…!!」
「どうして……どうして…わたしは涙が流れるの…!?あの人が言った事は正しくてなんの間違いも無くて…言い方も丁寧だったのに……っ」
感情のまま玖美は叫んだ。誰もいない所で。そして涙が収まりかけた時、ある考えに行き着いた。
「…もしかして……あの時のトラウマのせいで…」
〜数年前〜
それはユカがスランプになり、何日かたった日の事だった。
「(な、何で、わたしは声が出ないの!?)」
「(ダンスも出来ない…皆頑張ってるのに…わたしだけ動けない…)」
〜現在〜
「…あの時みたいになるのが怖いんだ。わたしは。」
「………家に帰ろう。わたしには此処にいる必要は無いし。」
「(品川さんには申し訳無いな。)」
〜数時間後〜
〜品川家 愛の部屋〜
「………………」
一方、玖美が逃げ出してから数時間経った時、愛は自分の部屋にいた。だが、いつものように明るい感じでは無く何処か落ち込んでいた。
「はぁ…まさか憧れの人にあんな言い方するなんて…」
「私なんて初心者アイドルなのにな…」
「(明日、謝りに行こうかな。でも…会ってどうすれば?)」
「(絶対、相手は気まずいだろうし…)」
「…何か解決法は無いのかな……」
皆さんこんにちは。小山シホです。さて、今回は久しぶりの愛と玖美の二人の対面ですね。今回ばかりはちょっとギスギス展開になってしまいましたが、まあ仕方がないでしょう!次回は愛の過去を書いていこうと思います。
次回予告
翌日の休みの日、愛は一人で部屋に籠る。愛が思い出すのは何の取り柄も無かった過去の自分で──?




