第10話「かつての彼女」
「──貴方達はアイドルを始める前の玖美を見た、もしくは聞いた事ある?」
「え?」
突然の質問に三人は戸惑う。
「その様子だと…知らないようだね。分かった。教えてあげるね。」
加々実は語り始める。
中学生の時の玖美の事を────。
〜数年前〜
〜中学校 廊下〜
「はぁ…」
此処はかつて玖美が行っていた学校、渋谷区道玄坂中学校・高等学校。そう、お察しの通り、柚月が言っていた学校だ。この時はまだ玖美が柚月と関わっていない時である。因みに玖美が通っていたのは渋谷区道玄坂中学校だけである。これも柚月と同じ。(柚月も高校は渋谷川学園である為)
「(今日、何も良いことなかった…だって友達と上手く話せなかったし…)」
その時の玖美は前述した通り、誰よりも近寄り難い雰囲気を醸し出していた。当然、グループでやる授業なんかでは誰も玖美と組む人は居ない…そんなレベルだった。
「ねえ、あの人、羽田さんじゃない?」
「うん…そうだよね…あの人、私達と同じ学年だったけ、会わないようにしないと。」
「…………」
この時(中一の時の玖美)はこのようにいただけでも離れられてしまった。しかも、これはまだ五月の時である。そんな早い時期からあの扱いを受けていたと言えば何となく玖美が嫌われていたか分かるだろう。
「えっと…此処の問題、誰かに聞こうかな?あ、其処の人…って」
「羽田さんか。それだったら他の人に聞こう。おーい、佐藤さん!」
「(まあ、こうなるよね。わたしなんて話すの下手だし。)」
そんな事を思っていると突然、明るい生徒が来た。
「おーい!羽田さんー!」
「え?」
「もう!私だよ!中一のムードメーカー、港加々実!一組!」
「(うわ…何この人…明る過ぎ…)」
その生徒と言うのがのちに親友となる港加々実である。
この時から加々実は人気者であった。が、性格が明る過ぎて一部の人からは『道玄坂中の奇人』とも呼ばれていた。
「(しかも、港加々実って言ってなかった?うっわ、奇人って言われてる人じゃん。)」
「何そんな顔しているの?私は誰とでも仲良く出来るよ!」
「いや、あのさ…わたしの性格知ってるよね?だから放って置いてくれない?奇人と話すのは嫌だから。」
「確かに私は奇人と呼ばれているよ。でも、かといって貴方を放っておく事は出来ないよ」
その言葉に玖美は驚いた。奇人がそんな良いこと言うのか、とかなんで放っておく事が出来ないのとか。
「…!で、でも本当は話したくないよね?貴方みたいな人だったらそうじゃない?」
それでも玖美は信じられずに強い言葉を加々実にぶつけてしまう。ぶつけられた彼女の顔が変わった。
「…そんなの違うよ!」
「…………はぁ。」
「羽田さんは色々な人に避けられてるんでしょ?そのたびに貴方はしょうがないかという顔をしている。」
「でも、本当は苦しいんじゃないの?自分に悪気は無いのに勝手に避けられて嫌われるのが。」
「そ、それは…」
玖美の顔が徐々に焦って行くのが見えた。その焦りは強がっているようにも、バレたと不安になっているようにも見える。
「だからさ、羽田さんが良ければなんだけど…私と友達にならない?」
「え?」
「(この人…随分とわたしの事を気にしている…この人となら友達にも…)」
「(いや、でも…今は大丈夫だろうけど…わたしと話している内に嫌われたら…)」
「黙っているということは『はい』ってことだよね!」
加々実は何の証拠も無く言った。当然、玖美は驚きを隠せなかった。
「いやいや!何も言ってないけど…?人の話も聞けないの?」
「ごめんこめん!でも、羽田さん何だか嬉しそう。」
「え?そんな方に見えているの?嘘。」
「ホントホント!でも貴方と友達になれて良かった!」
「…はぁ。うるさいよ……でも、ありがとう。」
〜現在〜
「そんな事が…」
「うん。だから私が友達になった時は嬉しそうだったの。」
「そしてある日、私はアイドルになった。」
この時は加々実はソロアイドルだった。ソロ名は『キラキラ☆ドキドキbrilliancy!』。中学生の時の加々実らしい明るいネーミングセンスとなっていると言えるだろう。
「で、その事を玖美に言ったら『わたしもアイドルになりたい』って言ってくれたの。」
「それで羽田玖美さんもアイドルになったんですね。」
「うん。私はそれがすっごく嬉しかったんだ。まるで私に着いてきてくれているみたいでさ。」
喜ぶBright Shining Lightの三人。しかし、次に言った加々実の言葉が一瞬でそれを消し去った。
「でも──それはすぐに消え去った。」
「玖美が高一になってから…」
「…………」
Bright Shining Lightは知っていた。玖美がどうしてアイドルを辞めたかを。しかし、その理由を言えるメンバーは居なかった。言ってしまったら玖美の友達である加々実を傷付ける可能性と考えたからだ。
「…ごめん。Bright Shining Lightの皆さん。」
「こんな暗い話してしまって。」
「え…いや!あたしは大丈夫です!」
莉衣は笑いながら言う。愛と玖美は戸惑いながらも笑った。
「…ありがとう。そう言ってくれて。」
「……(本当は玖美が辞めた原因全て知ってるんだけど…Bright Shining Lightの皆さんは気遣ってくれたんだよね。)…」
「…あのっ、私からお願いがあるの。」
強い声で言う。Bright Shining Lightは顔つきが変わり、真剣である。
「…玖美をまた──」
「──アイドルにさせてあげてっ!」
「…っ!」
その言葉にBright Shining Lightは衝撃を受ける。何故なら、玖美はアイドルをやらないかと誘っても「やりたくない」と言って来たからだ。
「…ちょっと待ってくれませんか?」
「どうしたの?品川さん。」
「羽田さんがアイドルをまたやりたいって言うのは本当ですか?」
「もしそれが嘘だったら────貴方でも信用出来ません。」
愛は玖美を思うが故に言葉がキツくなる。それを見た柚月が止めようとした。
「ちょっと!愛!アイドルとして先輩の方にそんな言い方は良くない!」
「でも…!!」
二人の意見の言い合いを止めるように加々実が言った。
「──アイドルをやりたいという想い。それは玖美本人が思っている事だよ。」
「…!ごめんなさい。港さん。」
「すみません。港さん。勝手に二人で意見を言い合って…」
二人は加々実が真実を言ったお陰で言い争いを止めた。
「良いよ。だから──」
「いつか玖美をまたアイドルにしてあげて。」
「…はい!」
Bright Shining Lightの三人は気合いを込めて返事をした。それを見て安心した加々実は舞台の下に降りて行った。
「…まさか玖美にもそんな想いがあったなんてね…」
「本当にね。て言うか愛〜?」
「な、何?柚月?」
「いくら玖美さんが憧れだからってその友達でしかもアイドルとしての先輩にその言い方は無かったんじゃない?」
柚月の顔が険しくなる。それにはいつもの優しい顔は薄れていた。
「ご、ごめん。次からは気を付けるよ。」
「まあまあ、二人とも。落ち着いて。」
「取り敢えず、玖美が望む形でまたアイドルをやって貰えるように──」
「──頑張りましょう!」
莉衣が景気づけに言う。二人はさっきのムードから一転、やる気のある返事をした。
「うん!」
こうして玖美が望む形でアイドルをまたやらせる為にはどうするかを考え始めたのだった──!
こんにちは。小山シホです。さて、今回は本格的に玖美の中学時代が描かれましたね!いつかは柚月や愛、莉衣の中学時代も描くつもりなのでお楽しみに!にしてもBright Shining☀︎Light編ももう十話になったんですねぇ…何だか早かったですね。
という事で次回はBright Shining☀︎Lightの解説②を挟もうかなと思います!それではまた次回で!




