火は受け継がれる
すみません。雪とか色々忙しいこといっぱいあって、毎日投稿頑張ろうって思った後すぐに達成できませんでした。
「そういえば、レベルの確認で忘れてたけどボスのドロップアイテム分けてなかったです」
アイテムボックスに碌に確認もせずぶち込んでしまったボスの報酬を取り出す。
アイテムボックスのデータから実物として出現させる。現れる物は形として定まることはなく青い炎のようにゆらゆらと揺れながら浮かび出した。
それはまるで魂のよう。その魂は見るものを魅了させ、もしくは安心させるかもしれない。どれもが正しく間違っているのだろうか、見る人によって映す姿が変わる鏡のようにさまざまな印象を人々に植え付ける。
ボクの手が自然と青い炎のような魂に向かって伸びていく。なんでだろう、ただ見てると触りたくなるあったかそう。ただ何かの音が聞こえるんだ。とくん、とくん、って響く心地良い振動が体の全身を貫く。
内側から湧き上がってくるような衝動はまるでゆりかごが揺れるようにゆっくりと穏やかに染み込んでいく。そして耐えきれずにまさに指先が炎のゆらめきに触れる瞬間、魂が四つに切り分けられた。
「これ壊した方が良さそう」
一さんが斧を交差するように魂を刻む。その瞬間自分の中の何かが千切れるような痛みと消失感がボクを襲う。それは一さん以外の他の人にも影響を与えたようで全員が膝を崩して地面に手をつけてなんとか支える。
少しの間、ボクを含めた3人が苦しそうに耐える時間だけが過ぎていく。それは繋がりかけた何かから引き戻されるような感覚なのか、もしくは魂を引き裂かれるような現象なのか。
どちらにしてもダンジョンという安全とは程遠い場所でパーティ内でほとんどの人が戦闘不能というのは致命的だ。しかも通路の通路の先のすぐそばにはゾンビや意味不明の肉の塊という敵がうじゃうじゃと蔓延っている危険な状況で。
こんな時ただ唯一、動けるはずの一さんが楽しそうにこの様子を見てにこにこ笑ってるし、ヨウさんの周りを離れようとしない。なんかあの人、万が一の時ボク達のこと置いてヨウさんだけ守りそうだな。
そもそもさっきのは壊してもよかったものなの?もしそうじゃ無かったとしたら、またボクの一さんを絶対に許さないリストが増えそうだ。これまで溜まった借りは何年掛かってもいつか返してやる。
こうして一さんへの復讐する理由が一つ増える可能性ができたところで症状がだんだんと引いていき、倒れていたボクたちはそれぞれゆっくりとした足取りで起き上がる。
「うう、痛いし辛かった。これVRの規律に引っかかるんじゃないの?痛覚の再現はよくないと思うんだけど」
まずボクがなんとか立ち上がって愚痴をこぼす。
「今の痛覚では無かったと思いますよ。圧迫感とか平衡感覚の異常や酩酊感かな。痛みじゃなくても内から触られてるような感じと体がバラけるような感覚は再現できるはず」
次にヨウさんも一さんの手を借りながら立ち上がり、ボクの疑問の解説をしてくれる。
「あー、もうなんでもいいけど不快なことには変わんねぇ」
最後に黒桃さんが膝を立てて起き上がり顔を歪めながらイラつくようにそう話す。
でもボクはこの世界だけでもリアルな方がいい。ボク個人としてはそう思ってるし、だからこそめんどくさい体と名前を晒してやってるんだ。でもこんな辛さを感じるほど何故か生きてる感じがする。
あはは、姉ちゃんが聞いたら心配するだろうなぁ。楓ねえは呆れられるか怒られそう。萩にいは怒りはしないけど苦笑いにはなりそう。他の皆んなはどうだろう、共感されるとかかな。でも他の人たちは結構我が強いし想像できないや。
「それで目の前にあるアイテムどうする?」
一さんがそういうと目の間に浮かぶさっきとは小さくなって浮かんでいる火の玉、その魂のようなものを見つめる。不自然なほど人を惹きつける魅力は失われていて、今は、安全なようにも感じる。
「これどうすんの。もう触ってもいいのかなぁ」
「あの苦痛はもう受けたくない」
「なんとなく大丈夫な感じがするんですけどなんででしょう?」
「とりあえず、触ってみようかな。さっき大丈夫だったし」
一さんが火の玉の下に手を滑らせて掬うように触れてみる。火の玉は一さんの手のひらに触れた瞬間、形作るように炎が凝縮されていき、一つの石ころとして一さんの手の中にポトっと落ちて収まった。
「何これ?」
一さんもただの石、もしくは黒い石炭のようなものが現れて首を傾げて困惑している。
「でも一応、危険じゃなさそうだよ」
「じゃあ俺たちも覚悟決めて手を突っ込むしかないかぁ」
それぞれがゆらめき時々火花を放つ火の玉目掛けて派手に手を突っ込む。
火の玉に手を突っ込んでも熱さを感じない、それはこれがゲームだからという理由ではなく元々がそういう物質であるかのように実在してるみたいに確かにはっきりと感じる。
それは触れているのに逆に冷気すら感じる。最初は重さを感じないそれはだんだんと重さを持ち、形を持ち、最後は完璧にアイテムとして姿を現す。
三つの火の玉がそれぞれ弾けるように火の粉を舞わせてそれぞれの手の中に収まった。
そして手の中に現れた物を見つめる。それはロザリオのようなアクセサリーだった。じっくりとそれを見つめ効果を確認するとテキストが現れる。
・形骸の紋章:もはや形なき残骸である。それは本来の役目を果たすことなく、意味を知る者もいない。だが魔法の道具としての効果は発揮できる。それだけが残された最後の存在意義だろう。これをアクセサリーとして装備した状態で効果を発動させると実態ある霧を出現させることができる。それは一定時間使用者の防御力を増やし、霧を移動させることで局所的な防御もできる。
「ふーん、こんな感じなのか。みんなはどうだったの?」
ボクは皆んなに自分の貰ったアクセサリーの効果を話すことにしてそれから全員がどんなアイテムだったか話し合うことにした。
・亡命の外装:今は名も亡き王の遺品だった。それは膨大な時を重ねることで劣化して魂を血を吸い、魂を吸うことで変質した。これは生きとし生けるものを吸収して、名前の通り命を亡き者にする呪いである。これを装備中はアンデットの恩恵を受けることができる。そして気配を消すことに補正がかかる。
「俺のはこんな感じだったな」
黒桃さんのは防具で王がつけていたマントに似ている。あそこまでボロボロではないがそれでも古い見た目をしている。
・魂の器:それは繋がりを現す糸。古き時代から続く証であり魂を繋げ合う儀式である。しかし本来の使い方はされずに穢れてしまった。穢れた器にできることは魂を強制的に繋げて集め契約を履行するだけ。他者の魂を自分に入れることができ自分の魂を他に入れることもできる。
「これはミサンガですね。結構可愛らしい感じがする」
そして最後に話しをしたのは一さんのよく分からなかった石のようなものだった。
・虚の石:それは石炭のように火をつけることができて、まるで永遠に灯されることができるように輝いている。この石に貴方の罪を入れることができる。だが過信してはいけない石は重ければ重いほど所有者に加護を与えるが割れた時にそれに応じた災いを引き起こす。
「一さんのだけ趣向が違うね、フレーバーテキストだけだし。でもめっちゃ不穏なことしか書いてない」
「そう?この石は私結構気に入ったけど」
「絶対落として割らないでよ。何が起こるか分かんないだから」
「大丈夫。問題ないわ」
一さんは持っている石を手遊びするように少し上に投げて掴むを繰り返し始めた。
「ちょっとちょっと!もっと丁寧に扱ってよー」
ボクの慌てるような声とその反応を見て笑う人達、その楽しそうな声だけが洞窟内によく響いた。
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ただ私が嬉しくなってやる気が上がります(>_<)




