積み重ねた魂
「あー、もう話していいかもな。どうせダンジョンについて話さないといけなかったし」
黒桃さんが背中に生えた翼を体の中に沈み込ませるようにしまう。
体よりも大きなはずの翼は折り畳まれてズブズブと肉が蠢めく音を立てながらなんの問題もなく入っていった。
「私もダンジョン攻略したから出てくる魔物とか把握してるよ。攻略したのは悪魔ちゃんの後だけど」
「そうだな。ワンコさんもあのダンジョンがボスを倒してからが本質なのは知ってるよな」
「それはボクも聞きました。最初にダンジョンをクリアした人に力を与えて新しいボスにするっていう」
「そこまで知ってるなら話しが早い。だがあのダンジョンの恩恵はボス並の力だけじゃない。それよりも魅力的だったのは経験値だ」
「経験値?」
そういえばさっき黒桃さんがレベルが高いのには理由があるって言ってたよね。
「貰える経験値が倍増するんだ。だからダンジョンを徘徊して雑魚敵を蹴散らすだけでレベルがどんどん上がっていく。しかもボスになってるから楽に倒せてほぼ作業だった。数時間後にワンコさんが来て殺されたけどそれがなかったらもっとレベルが高くなってたかもな」
「あはは、ごめんなさい。でも強かったし結構楽しかったよ」
「いや別にいい、むしろ感謝してるぐらいなんだ。それにもデメリットがあってな、経験値が増える代わりに魔物を倒すたびカルマ値が下がっていくんだ」
「それってなんの忠告とか説明もなかったんですか?」
「何もないよ、全てがもう手遅れだった。シスターさんにあった時にはカルマ値が最低までとはいかなかったけど片足は突っ込んでるぐらいだったな。まぁそこからはワンコさんと似たようなもんだ、贖罪の為にクエストをしたりシスターさんに仕えたりしてる」
やっぱりこのダンジョン作った人は性格が悪いな。ていうか姉ちゃんが作ってそうなんだけど違うよね。でも今までのことを踏まえてると可能性高そうだなぁ。
小学生の時に一回、朝になったら自動的ににゲームにログインするように設定されてなんか異世界転生ドッキリみたいなの食らったんだよね。
いやっ、朝目覚めたら知らない場所にいるって怖すぎるでしょ。しかも敵を倒せるアクションゲームとかじゃなくてホラーゲームだったし。
めっちゃびっくりしたし怖かったんだよね。あの時のことは絶対に許さないからいつか悪戯して仕返してやろう。
「でもそれじゃあボクと一緒ですね!ボクも一時的にですけどクエストのせいでカルマ値が最低になっちゃいましたから」
「そうなのか、レンも大変なんだな」
「ていうか一ちゃんもカルマ値はそんなだけどPKの罰で奪った金額分を弁償中だし、レンちゃんもカルマ値が最低ならこのパーティ罪人だらけですね」
「まともな奴は教会に所属してるヨウさんだけかもな」
「そんなことないですよ。屍人属でも入れてくれるシスターさんが寛容なだけですし、それにスキルの派生は広がるかなぁって思っただけですから」
「そうそう、しかもまともとは程遠いし…」
ぼそっと、ボクがそう言うと
「レン君?今、何か言いましたか?」
一瞬にしてヨウさんが背後に回り込んで肩にポンと手を置かれる。背筋が凍りついて耳元で囁かれる声には恐怖しか覚えない。いつものヨウさんと違う、まぁ怖いのは変わらないけど。
でも今ボク、ヨウさんのことずっと見てたはずだよね?
それなのになんで後ろにいるんだよ。ほんと意味が分からない、もしかしてリアルで暗殺者でもやってるわけじゃないよね。
「いや、全然何も言ってないよ」
ボクは両手を挙げて降参のポーズをする。そして目線を一さんに向けて助けを求める。
(うー、一さん助けてぇ)
「はいはい。レンちゃんが怖がってるからそこまでにしといたら?ヨウちゃんは距離感とか諸々間違えるから慣れないことしない方がいいよ」
「そうですか?一ちゃんみたいにレン君と喧嘩っていうかじゃれて遊んでみたかったんですけど難しいですね」
そうなの?遊ぶ気っていうか殺す気しか感じなかったんだけど。
「はぁー、生きた心地がしなかった」
「レン君ごめなさい。お詫びとしてダンジョンで頑張りますから期待して下さいね」
そしてダンジョンの奥に進んでいく。下り坂を歩いていき深い場所に行くにつれて段々と暗くなってくる。そして広めの空間に出るとそこには大量の骨の山が所々に築かれている洞窟だった。
その山は暗い洞窟内でも一際目立つ程に大きく、そして大量にある。骨の山には武器や盾が混ざっており、あからさまに動き出しそうだ。でも流石にこの数が全部動き出したらめんどくさそうなんだけど
「あれってもしかして全部が敵?」
「そうだ。一層は大量のスケルトンが出てくる、見た目通りだしめっちゃ分かりやすいだろ。ここを抜ける方法は気づかれないように静かに抜けるかそれとも…」
「そりゃあ、やるなら正面突破でしょ!行くよレンちゃん」
一さんが武器を構えて飛び出す。既にヨウさんも予測して動き出しておりボクも置いてかれないように走り出す。
その音に反応して骨の山が崩れていくそして続々とスケルトンが組み上がり起き上がってこようとしている。
「おいおい、まだ話しの途中だったろうが置いてくなよ」
「すみません。一ちゃんなら絶対突っ込むだろうなって思ったから急がないと1人でどっか行っちゃうので」
「別に出口まで走り抜けるのは構わないけど、大丈夫なのかこんなに派手に移動して」
「それは分かりませんけど」
<腐触>
ヨウさんがスキルを発動して正面の1番近くの骨の山に左手をぶち込んだ。その一撃は前に見た時と同じように大きな風穴を開けて組み上がりそうなスケルトン達を粉々にしてさらに広範囲を塵に変えていく。
「やっぱ、そのスキルエグいよね」
「レン君は無駄口叩く前に他を警戒してくださいね。まだまだ敵はきますよ」
正面や右、様々な方向からスケルトンが軍隊となって襲ってくる。今のはたくさんある一部を倒したに過ぎない、残りはたくさんいて全部を倒せるような量じゃない。
「一さん出口の場所は!」
「このまま真っ直ぐ行ったら出口に着くよ」
「こいつら数だけで脆いから大したことないけど、たまに巡回してる中ボス的なのいるから気をつけて」
「分かった」
集団戦なら本日2度目のこいつの出番。白月の燈籠を取り出す。
「右側は任せてください」
鎖鎌を振り回してスケルトンを一掃する。魔力を通すまでもなく刃が当たれば断ち切れ、鎖の部分でも骨を砕くには十分だった。しかも壊しても再生しないからただのカモじゃん。
「でも盾持ち邪魔!」
スケルトンはランダムなのか様々な武器を持っている。剣や槍、弓などもいてたまに飛んでくる矢を避けるのも面倒いけど1番だるいのは盾だ。少し弾かれて逸れちゃうこともあるし、盾ごと斬るか砕いたりしても耐久値が減って勿体無い。
まぁ、魔力を使えばいいだけか。白月の燈籠に魔力を注ぎ込み流れるように交互に振る。鎖鎌は弧を描き青白い軌跡だけが場に残る。まさに入り乱れている半月のようだがそれは途中でガキンと金属音を響かせながら遮られた。
「ウソっ、弾かれた」
しかも武器に魔力を通した状態で防がれた。あれはタワーシールドか鎖鎌であの守りを崩すのは厳しそう。
「おい、周りにデカブツが5体現れたぞ気をつけろ!後ろの雑魚は俺に任せていい」
ありがたい。なら立ち止まって全力でコイツをぶっ倒せる。
<突風>
魔法を派手な鎧をつけたスケルトンの足元に向かって放つ。正面から撃っても効果は薄そうだし、足元が揺らぐだけで十分。
そして立ち止まるとは言ったけどボクはノンストップで行く。体を低く屈んで突進しその体勢から魔力を込めてタワーシールドを蹴り上げる。
魔力を消費した一撃はタワーシールドを吹き飛ばしスケルトンの体ごとかちあげた。そして月欠ノ葉を左手で取り出し右に一閃。浮いたスケルトンの両足を狩りとった。
<スラストダガーⅢ>
すぐさまスキルを発動して相手の眼前に近づく、そして切り返す一振りでスケルトンの首を断ち切り砕いた。顔は真っ二つに割れた後、残った体はボロボロ崩れて塵になった。
「胴体残らないなら両足切る必要なかったな」
<冷肺Ⅱ>
後ろを振り向くとヨウさんが同じように紋章のある鎧をつけた特殊なスケルトン2人を相手にしていた。ヨウさんは槍と剣を同時に捌き、弾いて敵を一箇所に集まるように誘導した後冷気を吐き出してスケルトンの足を凍りつかせた。
動きを止められるのは一瞬、だがヨウさんには一瞬の隙が致命傷になる。
<理撃Ⅲ>
ヨウさんは身を捻りながら飛び上がってスキルで強化した後ろ回し蹴りをスケルトンの顔面に叩き込んだ。そして流れるような勢いをそのままに裏拳をくりだし続くスケルトンの頭を砕いた。
「あーもう、左手ないから戦いづらいですね。再生するの遅いしスキル使うの早かったかも」
「そんなことないよ。ヨウちゃんが正面の山を蹴散らしたから一直線にこれたんだし」
一さんは喋りながら両腕を液体化させて振るい、弓持ちと斧持ちのスケルトンの頭を粉砕した。
「ていうかこのデカブツなんだったの悪魔ちゃん?」
「えーっと、さっきのが中ボスだった奴だな…」
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ただ私が嬉しくなってやる気が上がります(>_<)




