地に堕ちた悪魔
「えっ!レベル高くないですか」
「俺のはちょっと理由があってな。でも別にそこまで強いわけじゃないぞ、初日から徹夜でずっとやってるプレイヤーの大体はレベル20後半だからな。まぁ、流石に30の壁を超えたのは今の所俺だけかもしれんが」
「このゲーム、レベルが5の倍数に上がる時だけ必要経験値跳ね上がるよね。ほんと関門みたいにさぁ」
「やっぱりそのタイミングでスキルが覚えれるのと関係ありそうですよね。プレイヤーそれぞれに合わせたスキルを選ぶならどうしてもたくさんの戦闘データが要りますから」
「それにしても上手くできなかったのかな?レベル4まで順調に上がったのにそこから全然上がらなくなった時はめっちゃ不安になったんだけど」
「それはもう洗礼だと思って諦めるしかないな。よし。とりあえずおしゃべりは後にしてそろそろダンジョンに向かって急ごうか」
4人で木々を避けながらスルスルと森の中を全速力で抜けていき、通りやすい道なんてガン無視してただ真っ直ぐに進み続けていた。これが本当に正しい道なのか心配になるけど、もっと不安なのは先頭で誘導してるのが一さんだということだ。
「ねえ!ほんとにこの道で合ってるの?ていうか案内役は黒桃さんのはずだよね」
「あー、門で待ってる時に思い出したんだけど俺は街から谷までの行き方知らなかった」
「えーなんで!」
「そもそも俺は悪魔属だからか谷でゲームが始まったんだ。その後は奥に進んでダンジョンを見つけたわけだけど、最終的にワンコさんに殺されて街に着いたからな」
「だから一ちゃんに案内してもらうしかないってわけですね」
「事情は分かったけどさー、こんな変な道通る必要ある?この中走るのだるいんだけど」
「ゲームでぐらい我慢しなよ。それになんだかんだ言ってレンちゃんもついてこれてるじゃん」
「気持ちの問題だよ。ゲームでもめんどくさいことは面倒くさいの。あっ!そうだ、ボク浮遊使ってめっちゃ軽くなるからさ誰かに鎖で引っ張ってもらおうかな。それだと凄いたのしそうだし」
「私は別に構いませんけど、多分木の枝にぶつかりまくるか強く引っ張り過ぎて地面に叩きつけられちゃうと思いますよ」
「それなら遠慮しとこうかなぁ」
「そうしとけ、どうやらもう走るのは必要ないみたいだからな」
色々と雑談を話していると木が途切れて森の終わりを告げた。無事に森を抜けることはできたが、また新たな問題が出てきた。目の前が崖で降りれそうにない、ていうかこの走ってた勢いのまま落ちそうになったし
「危なかった、落ちても浮遊があるからどうにでもなるけどやっぱちょっと怖いな」
「一ちゃん他に道はないの?流石に飛び降りのはよくなさそうなんだけど」
「そんなこと言われてもダンジョンに着いたのってここから落ちたからだし」
「まぁ、地面まで相当遠いし岩肌は尖っててここから落ちてなんで生きてたのか疑問が残るぐらいだがこの真下がダンジョンなのはどうやら確からしい俺が見たのと同じ入り口がある」
「しかも壁が反り返ってますから壁を頼りに降りるのも難しそうです」
「ふーん、じゃあボクの鎖鎌を木に巻きつけてロープ代わりにしたらいいんじゃない。ボクは浮遊があるからみんなが降りきった後に回収して飛び降りるよ」
鎖鎌を取り出して木の周りをぐるぐる回って巻きつけていく。
「よし。準備OKだよ。誰から降りる?」
「レンちゃん私にちょうだい」
「どうぞ」
一さんに向かって持っていた鎖鎌を回転させながらぶん投げて渡す。一さんは後ろから飛んでくる鎌を普通にキャッチする。
「完璧に頭を狙う軌道だったよね」
「どうせ当たらないし、実際にキャッチできたじゃん」
「まぁいいや」
一さんは鎖鎌をポイっと崖に落とした後、鎖が限界まで伸び切るのを確認する。
「流石に底まで届くわけじゃなさそうですね」
「それはそうだろ。この谷めっちゃ深いからな、奥のダンジョンまで行くの大変だったのに今、ショートカットしようとしてるから他にもリスクがありそうだな」
「それは行ってみたら分かることでしょ。それに鎖を振り子にしたら壁まで届きそうだしそこから壁を蔦って降りてみる」
一さんは軽い足取りで崖の先まで行くと鎖を掴んで飛ぶ。一さんは鎖で滑るように降りていき少しの後に鎖鎌の先端まで到達した。
「おー、いつもだけど度胸が凄いよね。そりゃあゲームだけどそれでも恐怖とか感じないのかな」
「一ちゃんはゲーム内だと本当に楽しそうだから恐怖なんて感じる暇ないと思うよ」
一さんは体を前後に揺らすことで反動をつける。そして振り子の勢いを使って壁までジャンプした。そのまま壁を掴んで降りて行く。
「よいしょっと、とりあえず腕を伸縮させて壁に突き刺すハメにならずにすんだ」
「一ちゃんが先に降りたから次は私が行くね。1人にしてまた変なことになったら目も当てられないし」
「そうだね。一さんとの再戦は希望してないからしっかりと手綱を握っててよ」
「はいはい、レン君じゃあね」
ヨウさんも後ろ向きに倒れるように落ちて途中で鎖を掴みそのままの勢いで壁まで到達する。エンターテイナーなのは別に構わないけど武器の耐久値が減るからやめてほしいんだけどな。
「今ので鎖鎌がぶっ壊れたら修理費取るからね!」
「ごめんなさい。少しでも早く一ちゃんと合流したかったから」
「うーん最後に俺か、なるべく静かに降りるから武器が傷ついたらすまんな。ロープでも持ってこれば良かったんだが」
「いえいえ、別にそこまで気にしなくていいですよ。本気に思ってないですから」
黒桃さんが鎖を持ってゆっくり降りていく。そして反動で勢いをつけて振り子で壁までジャンプするのだけど、黒桃さんが体を揺らしている間後ろの方でミシミシと嫌な音が聞こえることに気づいた。
ボクが本当に気にするべきは武器の耐久値などではなくて木の強度だったのだ。木はバキッとへし折れて鎖は崖へと向かって飛んでいく。
「まずっ!」
反射的にボクの横を通り過ぎようとしている鎖鎌を掴んで綱引きのように全力で引っ張って黒桃さんを支えようとする。
「うわっなんだ!上で何か起きたのか!」
「すみません、巻きつけてた木が折れました。ボクが支えてる内に壁まで行ってください」
「了解だ。もう少しだけもってくれよ」
「あっ、無理です!」
ボクの抵抗も虚しく、鎖の勢いに負けて谷に引き摺り込まれる。そうだよねボクの体重少ないから支えるのは無理があったかも。
「せめて1秒ぐらいは保たせて欲しかったな!」
「ごめんなさーい!これでも努力したんです」
2人共揃って谷の底へと落ちていく、ボクは浮遊があるから大丈夫だけど黒桃さんはどうしたら。なんとか助けないと、でもどうしよう空中に投げ出されたから浮遊使っても身動きが取れない。せめて壁にさえ届いたら…
「ああもう!仕方ないか」
<畜生道・顕現>
どうにかして助ける方法がないか考えていると、突然、黒桃さんの背中から鳥の羽が生えてきた。それは実際の動物のように緩やかに動き、そしてどんな鳥も持っていないと断言できるほどの大きさ翼だった。
地面に落ちる直前、その翼で羽ばたき完全に落下の勢いを殺してそのまま翼を広げて浮遊しているボクと同じ速度でゆっくりと地面に着地する。
「わっ、悪魔ちゃんどうしたの!翼生えてるじゃん」
「壁を蔦って降りないで空を飛び降りて来たってことは何か不足の事件でもありましたか」
「はぁー、そうだな。こうなるよな」
「あはは、ごめんなさい」
思わぬ形で黒桃さんの手の内をバラすことに追い込んでしまったボクは笑うしかなかった。
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ただ私が嬉しくなってやる気が上がります(>_<)




