再会する理不尽
NPCを誘導して他プレイヤーにぶつけて、それでも駄目だったら予め放置しておいたNPCタワーを総崩れさせて下敷きにする。
そんなことを5回ほど繰り返して広場にいたプレイヤーを次々に潰し回って全滅させた。
簡単そうに聞こえるけど浮遊の軌道とか計算しないとすぐ地面に落とされて袋叩きにされるから神経削るし、結構疲れるんだよ。
それに他のプレイヤーから反撃も魔法が飛んできたりもしたから躱すのも大変だったし。
「ふぅ、でもこれで野次馬はあらかた片付けれたでしょ。悪いけど見せ物になるのは好きじゃないんだよね」
家の屋根に着地してちょっと休憩する。でもこのぐらいの高さだったらすぐにタワーを作られて届いてしまう。そもそも壁をよじ登って来るから大した時間稼ぎにもならない。
ていうか時間経っても終わる気配ないし、耐久系のミッションじゃないな。だとしたらやっぱり街の外に逃げないといけないか。
「なんだあれ?」
目を疑う光景が起こっている。今も広場に繋がる道からNPCが大行列になって入って来ているのだがその内の一本の道でNPCが吹き飛されているのだ。
NPCが砕かれ空中に舞い上がってそのまま地面に叩きつけられるその姿はこのゲームが本当に無双ゲーになったのではないかと錯覚するほどの蹂躙があの場で起こっていることを示していた。
水が溜まった道路に猛スピードの車が突っ込み、水を正面や側面に跳ね飛ばしながらそれでも前に進んでいく、それと全く同じことが人で再現されている。そう言えばこの光景の異常さが伝わるかな。
そんな現象が凄い速さで近づいてくるのは恐怖しかない。しかもそれを起こせる化け物がセットでついて来るし、どうしよう…
「逃げるか」
即決で逃げる判断をした時、近くにいるNPCが止まった、吹き飛ばされるどころかボクを追いかけようともして来ない。しかしその一瞬の後、辺り一面のNPCが砕かれて上半身が吹き飛ぶ。
「レンちゃーん!贖罪クエスト中に来たよ」
両腕を鞭に変えて邪魔者を一掃した後、意気揚々と一さんが飛び出して来る。PKしたのに監獄とか入れられてないの!
「全然懲りてない!駄目だよこの人に執行猶予なんてつけちゃ!」
<針孔雀>
凝縮された体から放たれるのは針の圧倒的物量による致命の一撃。前回より範囲は狭いがその分、密度がエグすぎる。今回のは足を犠牲にしても避けれなそうだ。
だがもうすでに防御はしてある。倒れてきたNPCのタワーが一さんとボクの間に割って入り攻撃を受け止めてくれた。その一瞬を利用して何とか回避する。
攻撃はNPCを貫いた後そのまま家の屋根にも突き刺さっており、さっきまでボクがいた所がズタズタになっている。危なかったぁ、ちゃんと避けてよかったよ。
あのスキルを使う直前は体を縮める関係上、一瞬周りの状況が見えなくなる。一さんはその状態でも動いてるボクに攻撃を合わせてきたんだけど。それでも発動中はボクの行動に対処できなくなる。
だからボクは一さんがスキルを使う前に鎖鎌でNPCタワーを崩しておいた。後はタワーが勝手に防いでくれる場所に移動すればいいだけ。
そして一さんが空中にいる今が絶好のチャンス。
<突風>
一さんに向かって飛んでった魔法は当たるかと思いきやその下を通り過ぎて集まっていたNPCに直撃する。ボクを狙って近くにまで迫っていたタワーは一さん目掛けて崩れ落ちる。まぁそうなるように撃ったからね。
「ちゃんと実刑判決受けて帰って来てよね」
<腐蝕>
「流石にそういう訳にはいかないんです」
纏まって落ちてくるNPCの塊に拳一発で風穴を開けながら現れて通り過ぎていき家の屋根にスタッと着地する。そして驚くべきことに殴った部分の端からNPCの体がボロボロになり波紋が広がっていくようにその全てが塵になった。
「やあレン君この前はどうもありがとうござ…
「何で一さん助けちゃうんですか、ヨウさん!今、倒せたかもしれないのに!」
「えっー!」
「邪魔しないでよ、ヨウちゃん!あのぐらい自分で防げるよ!」
「一ちゃんまで!」
「うっ。あのっ、なんかごめんなさいー!」
ヨウさんが膝をついてうなだれる。わー、何でこの人いつもこんなにメンタル弱いの。
そんな中、ボクだけを狙うはずのNPCが今、それどころじゃないヨウさんに群がって襲い掛かろうとしていた。
「ヨウちゃんこんなことぐらいで落ち込まないで、本当に怒ってるんじゃないよ」
先に気づいた一さんが周りのNPCを蹴散らしつつフォローした。
<突風>
ボクはヨウさんに迫ってくる積み上がったタワーを魔法で破壊して一さんの後に続く
「そうですよ。ノリで言っただけですから心配しないでください」
「本当ですか、良かった」
ヨウさんが立ち直って元気になったので3人で家の屋根を蔦って逃げ回る。
「ていうかボクだけじゃなくて2人も襲われるんだね」
「途中まではされなかったけど道塞がってて邪魔なのを退かした後は普通に攻撃された」
「私は止めたんですよ」
一さんが攻撃したら敵対したんだろうな。まあこれで分かったのはNPCはボク以外には基本中立ってことか。だいたい想像通りだし、それよりも気になるのは、
「何でヨウさんは顔にお札貼り付けてるんです?身バレ防止ですか?」
「えっ、急だね。これはただのファッションです。私が選んだのは屍人属なのでそれっぽい格好した方が気分が上がるからです」
「じゃあ、その右腕だけ萌え袖みたいにパタパタしてるのもそれが理由なんですね」
「これは違くてさっき腐触のスキルを使っちゃったので代償で右手がなくなったんです」
あー、あのタワーをくり抜いた後さらに連鎖するようにNPCを塵に変えてった時のやつか。あれタワーだけじゃなくて下に居たやつにも広がってたから相当範囲広いよね。
「でもデメリットがでかくないですか?」
「このぐらいなら、放っておいたらいつか治りますよ。それに私の種属は自動的に再生する代わりに部位破壊がされやすいですから敵にやられるよりかはマシなんです」
へー、面白そうな種属だな。特性とスキルをうまく合わせれたら楽しいよね。浮遊とかはもっと使えると思うんだけど
「走りながら喋ってたら舌噛むよ。それにそんな暇なさそうだし」
「一さんにだけは言われたくないんだけど」
「そうだよ。レン君を助けに来たのに戦おうとするから変なことになったのに」
「どう見ても助けようとしてる人がやった行動じゃないよね。そもそも何で助けに来たの?」
「アレはただ遊んでただけ、本気ならまずタワー消してた。それに頼まれたからここに来たの」
あそこで地面にいるNPCをわざわざ露払いして姿を見せる必要ないしその攻撃でタワー壊さなかったの一さんらしくないとは思ってたけど。
「頼まれたってクエストでも来たの?」
「ミッション、知ってるはずよ」
「あはは、バレてた。ていうかそっちにも来てたんだ」
「元々私が持ってたアイテムだからだって、通知も来たし」
「その時私もパーティに居ましたから付き合うことにしたんです」
やっぱりヨウさん居てくれると一さんが大人しくなってくれてありがたいな。それでも全然まともじゃないんだけど会話ができるなら十分だよ。
「でもボクの所には具体的な説明がなかったけどそっちは何でそこまで知ってるの」
「それは、着いたら分かる」
「そういえば、どこに向かって…」
「お待ちしておりました」
「えっ、シスターさん!」
2人の後を走り続けて着いた先はボクがお世話になった教会だった。シスターさんはNPCのはずなのに特におかしい様子はなくていつも通り変わらない。おかしくないのは普通の筈なんだけどね。
「この人がレン君を助けて欲しいって私たちに依頼してくれた方で情報もくれたんです」
「そうなんですか?」
「そうですけど、それよりも貴方達は随分と沢山のお客さんを連れて来ましたね」
「げっ」
後ろを振り向くと逃げ切れたと思っていたNPCが大量に向かって来る光景だった。
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ただ私が嬉しくなってやる気が上がります(>_<)




