046 魔力トレーニング(中)
やっぱり、安易な方法はダメだ。
地道にトレーニングするしかない……。
目標は【すべてを穿つ】で魔弾を望みの出力で飛ばすこと。
それができれば、どんなモンスターでも被害なく瞬殺できる。
重要なのは被害なくだ。
いくらモンスターを倒せても、周囲の環境を破壊したり、魔石や素材が残らなかったり、では意味がない。
門番時代に俺が撃ってきた【すべてを穿つ】は長距離弾だけだ。
街の北側は安全で、付近にモンスターは現れない。
対象としたのはサラクンの街から30キロメートル離れたウルドの森に出現するモンスターだ。
それだけ離れていれば、山なりの弾道で撃つことによって、地形にほとんど影響を与えず、モンスターだけを倒すことが可能だった。
短距離砲を撃ったのは、先日エストの森でフローラ嬢の馬車を襲おうとしたハイオークを倒したときが初めてだ。
あのときの距離は500メートル。
頑張って出力をしぼったが、それでも大きなクレーターを作り出してしまった。
500メートル離れていても、あの威力だ。
至近距離だとどうなることか……。
【すべてを穿つ】についてわかっているのは、いくつかの実験結果。
――魔弾はこぶし大の球状。
いろいろ試してみたが、魔弾の形状を変えることはできなかった。
どうやっても、この形になってしまうのだ。
――魔弾は距離によって威力が減衰し、やがて、消滅する。
どこまで行ったら消滅するのか、正確には把握していない。
俺の【世界を覆う見えざる手】の範囲内では消滅しなかった。
一度、月に向かって撃ったことがあるが、月には影響がなかった。
なので、月まで届かないことは把握している。
――威力は発射時に込めた魔力量に依存するが、速度には依存しない。
どれだけ威力を上げられるのかは、怖くて試したことがない。
逆に、俺が撃てる最弱の魔弾は30キロメートル先のゴブリンをちょうど倒し切るだけの威力だ。
それ以上弱くすることも試したけれどできなかった。
――発射後にできるのは軌道と速度をコントロールすること、そして、魔弾を分裂させること。
軌道や速度はある程度コントロールできる。
ただ、それも限界があり、クルクルと旋回するような複雑な軌道や、限りなく速度をゼロに近づけて、その場に滞空させることはできない。
不思議なことに、魔弾を分裂させても、かたちや大きさは変化しない。
同じ形状のものが複製されるのだ。
そして、その数は二百個くらいが限界だ。
分裂させると威力は分割されるので、これだけが発射後に威力を下げる唯一の方法だ。
――以上が魔弾に関して、俺がわかっていること。
まずは出力コントロールを試そう。
ただ、出力を下げるのは難しい。
魔力測定で分かった俺の魔力は9,999MP。
魔力が多いのはいいことなんだけど、その反面、細かい魔力量の調整はとてつもなく難しいのだ。
なので、いきなり出力を下げることはできない。
練習を繰り返して、コツをつかむしかない。
とはいえ、森や地面に向けて撃ったらヒドイことになるだろう。
まず、真上に向かって撃って、距離を稼ぐ。
俺はできる限り出力を抑えて魔弾を放つ――。
『――【すべてを穿つ】』
上空高く放たれた魔弾。
俺は集中してコントロールする。
魔弾はうろこ雲を突き抜けていく。
――これくらいでいいかな?
高く上がった魔弾をくるりと反転させ、真下に落とす。
俺のすぐ近くに着弾した魔弾によって、地面に穴が開く。
直径5メートルほどの大穴だ。
――う〜〜〜〜ん。
まだまだ、デカすぎて実用的ではない。
ここから、穴を小さくしていく練習だ。
威力を弱める方法は3つ。
距離を伸ばすか。
出力を下げるか。
分裂させるか。
短距離でも使える魔弾を習得したいのだ。
距離を伸ばしても、問題の解決にはならない。
分裂数を増やす実験は、これまでに散々やってきた。
今の上限は二百。これ以上増やすのはなかなか難しいだろう。
となると――出力を下げるのが一番いい方法だ。
どこまでできるかやってみよう。
それから俺は空に向かって何発もの魔弾を撃ち続けた。
次回――『魔力トレーニング(下)』




