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033 始まりのダンジョン(下)

「そんなに落ち込まないでっ。まだ、方法は残っているよっ。それを試そっ?」

「うっ……う、ん。……がんば、る」


 ディズが提案した方法とは――。


「ロイルの魔法は強力すぎるのよ」

「ごめっ……ん」

「謝らなくていいわ。弱すぎて戦えないなら問題だけど、強すぎて戦えないなら、やりようがあるわよっ」

「…………やりよう?」

「ええ、そもそもスライムは最弱モンスターよ。魔法なんて使うまでもないのよっ」

「……あっ…………。でっ、でも……おれ……武器」


 物理攻撃というのは、まったく頭になかった。

 それを気づかせてくれたのはありがたいんだが、俺は武器はからっきしだ。


 ――頭の中でイメージする。


 俺に向かって飛びかかってくるスライム。

 それに合わせて槍を振るう俺。

 そして、すっぽ抜けて飛んでいく槍。


 ――うん、ダメだ。


「武器なんて必要ないよ。殴っても、蹴飛ばしてもいいし、その体重で踏み潰してもオッケーよっ」

「たし、かに……」


 それなら、なんとかなる…………のか?


「まあ、ものは試し。やってみよっ?」

「う、ん」


 ディズに励まされながら、次の部屋に向かう――。


「じゃあ、頑張ってっ! というか、頑張んなくても倒せるから、気を楽にいこー!」

「う、ん」


 4体のスライムたちが待ち受けていた。

 俺たちに気づいたスライムたちが、ぴょんぴょん飛び跳ねながら向かってくる。


 ――大丈夫。子どもでも倒せる相手だ。


 自分に言い聞かせながら、待ち構える。

 【絶対不可侵オムニノ・ノモレスト・隔絶空間セパラティオ・ロゥクス】は使わない。


 1体目が飛びかかってくるのに合わせ拳を振るう――。


 スカッ。


 俺の拳は空を切った。

 立て続けに残りも飛び上がって体当たりしてくるが――。


 スカッ。

 スカッ。

 スカッ。

 スカッ。


 全部空振りだった……。


 おかしい……。

 相手の動きはしっかり見えている。

 それに合わせて殴りつけるイメージもバッチリだ。


 だけど、なぜか当たらない……。


 ダメだ。作戦変更だ。

 動いているとこを狙うから失敗するんだ。

 狙うは――体当りして鎧に弾かれたスライムが着地したところ。


 スライムは着地した後、一瞬動きが止まる。

 そこを狙えば――。


 俺はタイミングを見計らって、着地したスライム目がけて足を振り下ろす――。


 するっ。


 横に躱された。

 その後も何度か繰り返すが――。


 するっ。

 するっ。

 するっ。

 するっ。


 なぜだ……。

 スライムを踏み潰すだけの簡単なお仕事がどうしてできない……。

 子どもでもできるって言うのに……。

 きっと今の俺の姿を子どもたちが見たら、指差して爆笑されるだろう。


 くそっ!


 苛立ち紛れでスライムを蹴りつけようとし――。


 スカッ。

 ドシンッ。


 ――俺は盛大にコケた。


「どんまい、どんまいっ。人には得手不得手があるからね。気にすることないよっ。私も魔法はからっきしだし」

「うっ……う、ん」


 ディズは慰めてくれるが……。

 まさか、ここまで壊滅的だとは思っていなかった……。

 物理戦闘はきっぱり諦めよう……。


「さてと……」


 ディズが空気を入れ替えるみたいに提案してくる。


「この後、どうしよっか? せっかくだから、最後まで攻略しておこっか?」

「でっ、でも…………」


 始まりのダンジョンは全3階層。

 俺とディズなら楽勝だし、2時間もあれば踏破可能だと『攻略ガイド』に書いてあった。

 問題なのは――俺が魔法を使えば収入が減るし、かと言って、ディズに任せきりなのも気が引ける、ということだ。


「お金のことは気にしなくていいよっ。大した額じゃないしっ」

「そう……だ……ね」


 たしかに、ここで稼げるのは子どものお小遣い程度だ。


「それにどのみち、ここの初回クリア報酬は早めにとっておきたいんだっ」

「じゃ……じゃあ……」

「よしっ、いこっか」

「うっ……う、ん」


 俺たちはダンジョンの奥を目指すことになった――。


 ――30分ほど進んで行く。


 道中は順調だった。

 出現するのはスライムのみ。

 最大でも同時に10体だ。


 またたく間にディズの見えない拳で叩き潰され、たまに俺に向かって飛びかかってくるヤツも勝手に消滅した。


 なんだろう……。


 俺が想像していたのとぜんぜん違う。

 たしかに無双してるのだが、コレジャナイ感がハンパない。

 これでは、冒険じゃなくて、ただの作業だ。


 最初は興奮していたが、風景もスライムも代わり映えしない。

 動ける分、門番時代よりはマシだが、退屈なことには変わりない。


「まあまあ、焦らないで。ここじゃ、ロイルには物足りないかもねっ。そのうち強敵が出るダンジョンにいけるよっ!」

「う、ん」


 道中は戦闘よりも会話がメインになっていた。


 たとえば――。


「ね、え……、初回クリア……報酬……って……?」

「あまり期待しないでねっ。大したものじゃないからっ」

「そ、う……なの?」

「ええ。でも、今の私たちには必要なものよ」

「う、ん」

「だから、お楽しみにねっ」


 そんなこんなでトラブルもなく、第2階層へと下りる階段にたどり着いた。

 20段の階段を下りると、そこは第2階層。

 第1階層と代わり映えのしない風景だが、出現するモンスターが変わる。

 この階層に出現するのは――ゴブリンだ。


 スライム同様、コイツも雑魚モンスターの代表格だが、スライムほど甘くはない。

 「スライム楽勝!」と油断した新人が調子に乗って、ゴブリンに囲まれ痛い目をみることがある。

 ゴブリンはスライムと違って足が早く、逃げても追いかけてくるのだ。

 逃げきれずに――というケースも年に何件かある。


 そんな話を移動中にディズから教わった。


「まあ、私とロイルにしてみれば、スライムもゴブリンも同じようなものだけどねっ」


 ディズの言うとおりだった。


 その後、何度かゴブリンと遭遇したが、ディズのワンパンに沈み、俺に体当りしては消えていった。

 第1階層と同じく、戦闘をしているという意識はまったくない。


 ただの障害物くらいの気持ちで蹴散らしながら、第2階層を1時間ほど進んでいき――第3階層への階段を見つけた。


「いよいよ、最終層ねっ」

「う、ん」


 ここまであまりにも呆気なかったので、微妙な気持ちだ。


「といっても、第3階層はボス部屋だけよ」

「そ、う……なの?」

「ええ、ゴブリンが4体に、ホブゴブリンが1体」

「ほぶ……ごぶりん?」


 これまで登場したのはスライムとゴブリンだけ。

 ホブゴブリンは初めて登場する。

 きっとコイツがボス役だ。


「まあ、ゴブリンに毛が生えたようなものよっ。いきましょっ」


 階段を下り、扉を開くと、部屋があった。

 ディズが言った通り、5体のモンスターが待ち構えたいた。

 ゴブリンに混じり、ひと回り身体がデカいのが1体。

 コイツがホブゴブリンだろう。


 襲いかかって来るモンスターたちに対し、俺は一歩前に出てディズの前に立つ。

 先頭を走るホブゴブリンが俺に当たって消滅したときには、ディズの高速パンチでゴブリン4体は死体になっていた。

 次回――『始まりのダンジョン:初回クリア報酬』

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― 新着の感想 ―
[一言] 仮にもボスモンスターがロイル君に触れただけで消滅ってwww 今回も面白かったです✨
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