034 始まりのダンジョン:初回クリア報酬
ホブゴブリンたちが全滅すると、部屋の中央に現れたのは――。
「あっ、……宝箱!」
「ええ、これがこのダンジョンの初回クリア報酬よっ!」
ひと抱えほどの大きさの木箱だ。
初めて見るが、一目で宝箱とわかる意匠をしている。
「開けてみなよっ」
「う、ん」
ダンジョンのクリア報酬。
人生初の宝箱だ。
初心者向けダンジョンなので、あまり期待はできない。
それでも、胸が高まる。
ワクワクしながらフタを開けた。
「これ……は…………」
箱の中にあったのは小さな赤銅色の丸いメダル。
あまりに小さ過ぎて、見逃しちゃいそうだった。
「目的も済んだし、帰りましょ」
「えっ、……あ、うん」
ディズはさっさと部屋の奥の壁に向かう。
壁にはさっきまではなかった金属のプレートが現れていた。
20センチ四方のプレートだ。
鈍色に光っている。
「それ……な、に?」
「これはね、転移プレートよ。ボスモンスターを倒すと出現するの。これに触れば一瞬でダンジョンの外に出られるよっ」
「へえ……そっ、か」
ディズは本当にいろんなことを知っている。
ずいぶんと手慣れた様子だし、きっと今までに何度もダンジョンに挑んできたんだろう。
「じゃ、戻ろっ」
ディズがプレートに触れると、その姿が消え去った。
俺も続いて手を伸ばし――目の前が暗くなった。
――ほんの一瞬だった。
気がつけば、俺はダンジョン入り口前に戻っていた。
「おつかれ〜」
「おつ、かれ」
「びっくりした?」
「う、ん」
今日は人生初めての経験ばかりだ。
驚きっぱなしで、いまだに実感が沸かない。
思っていたように活躍できなかったのは残念だが、それでも、俺は今日、ダンジョンをクリアしたんだ。
胸に熱いものがこみ上げてくる。
俺とディズは歩いて街に戻る。
日はすでに傾いていた。
「ギルドに行こっ。このメダルの意味がわかるよっ」
「メダル……」
このメダルの意味をまだ教えてくれない。
早めに取っておきたいと、ディズは言っていたが……。
ギルド内はだいぶ落ち着きを取り戻していた。
カウンターに向かうとそこにいたのは受付嬢のモカさん。
「換金お願いねっ」
ディズはスライムとゴブリンの魔石をモカさんに手渡す。
「はい。合計で3,100ゴルになります」
二人で食事したら、なくなってしまう額だ。
時給に換算したら、一人500ゴル。
子どものお使い並みだ。
冒険者としての初収入だけど、これは全部ディズが稼いだものだ。
俺も早く稼げるようにならないとな。
「これもお願いっ」
ディズは続いてダンジョンクリア報酬のメダルと二人分の冒険者タグを渡す。
「始まりのダンジョンのクリア報酬メダルですね。これで、おふたりはEランクに昇格です」
モカさんから受け取った冒険者タグにはEの文字が刻まれていた。
ああ、そういうことだったのか。
ディズの言葉の意味をようやく理解した。
冒険者ランクについては、昨晩ディズから教えてもらった。
冒険者登録したとき、冒険者ランクはFからスタートする。
Fランクは見習いのようなもの。
Eランクになって、ようやく冒険者として認められるのだ。
Eランクに上がるには2つの方法がある。
ひとつは依頼を所定の数だけこなすこと。
そして、もうひとつが俺たちがやった方法だ。
「やったねっ。これでまともな依頼が受けられるよっ」
「う、ん」
Eランクになれば、受けれる依頼も増える。
Fランクの依頼は、街の中でのお使いや肉体仕事ばかり。
Eランクになってようやく街の外での依頼が受けられるのだ。
「晩ごはんにはちょっと早いけど、どうしよっか?」
「依頼……見たい」
「そうね。そうしよっ」
ギルドの壁の一面には大きな掲示板があり、依頼について書かれた紙切れがたくさん貼られている。
俺とディズはEランク向けの依頼表を見ていく。
薬草採取は……やったことがない。
俺にもできるのか不安だ。
モンスター討伐は……俺が倒したら、モンスターが消滅してしまうので、倒した証拠を示せないし、素材も残らない。
うーん…………。
いかに自分が役に立たないかを実感して落ち込んでいると――。
「これなんかいいんじゃない?」
ディズが一枚の依頼票を指し示した。
次回――『初依頼』




